目覚めたら、婚約破棄をされた公爵令嬢になっていた

ねむ太朗

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66 壺の岩洞窟

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 ローサとフレデリクは朝食を済ませ、馬車に乗った。

「……ジョンウィルは朝食を食べられたかしら?」

「消化の良い物をお願いしたから、食べられたと思うよ」

「そうですか……ありがとうございます」

 ジョンウィルが気になって、そわそわしているローサ。

 弟を心配しているローサを見て、嘘だと気づかれたら嫌われるんじゃないかと不安になるフレデリク。

「あれ?」

「どうかしたか?」

「護衛の方達は……」

「後ろの馬車と馬で付いて来ているよ。行きもそうだっただろう?」

「え、ええ。そうでしたね」

 急にフレデリクと二人が気まずくなったローサ。

「ローサさん。そろそろ目的地に着くよ」

「は、はい」

 ローサ達が馬車から降りると目の前には洞窟があった。

「ここは壺の岩洞窟だ」

「壺の岩洞窟?」

「ほら、あそこに壺の形をした大きな岩があるだろう? だから壺の岩洞窟って言われているんだ」

「ああ! あれですね。なるほど」

 ローサが壺の形をした岩に見とれていると、アイン・エバンズが箱を持って二人に近づいて来た。

「ローサさん、洞窟の中は足元が危ないからこの靴に履き替えて」

 フレデリクはローサにヒールが無い靴を渡した。

「はい。分かりました。ありがとうございます。……あれ? サイズがぴったり」

「ああ、昨日リタさんに聞いたんだ。サイズが分からなかったから、いくつか買っておいたんだけど、ローサさんのサイズがあって良かったよ」

「フレデリク殿下……ありがとうございます」

 二人は壺の岩洞窟の中に入って行く。
 洞窟の中は薄暗く、手に持ったランプを持って進んで行く。
 中にはロープが張ってあるので、順路通りに歩くだけだ。

「足元に気をつけて」

「はい。ここは観光地なんですか?」

「そうだよ。普段はもう少し人がいるんだけど、今日は特別……かな」

「貸し切りと言う事ですか?」

「うん。まあ……」

「そうですよね。王子様が来るんですもの安全対策は大事ですよね」

「……そうだね」

 フレデリクはなんとも言えない顔でローサを見た。

「ローサさん、足元が危ないから良かったら手を繋がないか?」

「ありがとうございます」

 ローサとフレデリクは手を繋いで歩いて行く。

「この洞窟の名物は壺の形をした岩とマドンナリリーなんだ」

「マドンナリリーって確かユリの花ですよね?」

「そうだよ。マドンナリリーは花だから、洞窟の中に咲く訳がないんだけど……もし、壺の岩洞窟の中で見つける事が出来ると願い事を叶えてくれるそうだよ。そう言う言い伝えがあるんだ」

「へぇー! なんだが素敵ですね。フレデリク殿下、見つけましょうね」

 ローサはにっこり笑った。

「ああ。ローサさんは見つけられたら何をお願いするの?」

「私は……そうですね……殺された時の記憶を消して欲しいですかね」

「……そうか。また辛い記憶を思い出させてしまった。すまない」

「いえ、フレデリク殿下のせいではありませんよ」

 フレデリクはローサの手を強く握った。
 ローサもフレデリクの手を握り返す。

「フレデリク殿下は何をお願いするんですか?」

「そうだな……」

「特にないのですか?」

「いや、無くはないのだが……」

「あっ! 分かりました」

「えっ!」

 フレデリクは顔を赤くしたが、洞窟の中が薄暗くてローサは気づかない。

「犯人を教えて欲しい! ですね」

「犯人……ああ、そうだ。せめて犯人に繋がる手掛かりが欲しいな」

「そうですね。絶対に犯人を見つけて、ローサちゃんの敵を討ちましょう!」

「そうだな」

 ローサはフレデリクがローサフェミリアを今でも好きなんだろうなと、思った。

「フレデリク殿下は追いかけないんですか?」

「えっ?」

「レイがこっちの世界に来られたのだから、あーくんにお願いをすればフレデリク殿下もきっと……ローサちゃんに会えますよ」

「いや、いいんだ。ローサは……ローサさんと名前が混ざるな……ローサフェミリアは、私の事を兄と慕っていたんだ。それに今では向こうの世界に複数の恋人がいるのだろう? 私はローサフェミリアと愉快な恋人達の輪に加わるつもりはない」

「ぷっ。愉快な恋人達って……ふふ。悠二くんは入っていないけど、佐々木さんは入っているわよね。ふふふ」

 ローサが一人で笑っている隣でフレデリクは、どうしてローサさんが好きだからローサフェミリアの事を追いかけないって、言わなかったんだ……と項垂れていた。
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