目覚めたら、婚約破棄をされた公爵令嬢になっていた

ねむ太朗

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１０７　パーピス村での話し合い

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　フレデリクとレイは使者や護衛を連れてパーピス村にやって来た。

「かーちゃんただいまー」

「えっ？　レイノス？　急に帰って来るから驚いたわ」

「いや……それがさ……友人のフレデリクとあのさ……」

「フレデリク？　殿下のお名前と同じね」

「いや。フレデリクは王子で俺の友人でさ……」

「えっ？」

　レイの母マリアナは驚いた顔をした。

「まあ、フレデリクの事は今はどうでもよくて、とりあえずかーちゃんに会いたい人がいるからちょっと来てくれる？」

「ええ。……分かったわ」

　マリアナは不安そうな顔をしてレイについて行った。
　レイはマリアナを連れて村に唯一ある宿に入って行った。

　宿は小さく応接室が無い為、部屋で話し合いをする。
　レイ達が宿の部屋に入ると、使者が声を上げた。

「マリーアネルド王女殿下！　ご無沙汰しております」

「あなたは……確か、ロースランス伯爵家の……」

「ラッファルドでございます」

「ええ」

　マリアナは困った顔をした。

「マリーアネルド王女殿下……どうか国に戻って頂けないでしょうか？」

「それは出来ないわ。父に会いたくないの」

「先代の陛下は亡くなりました。現在はマリーアネルド王女殿下の兄君が陛下でございます」

「えっ……母は？」

「生きておられます」

「そう。母には会いたいけれど……畑があるから難しいわね」

　使者ラッファルドは、フェナンテス王国の現状を話した。
　マリアナは困った顔をしてカインに相談すると言った。
　畑仕事を終えて到着したカイン。

　それから話し合う事数時間。

「レイはどうしたいの？」

「俺は……」

「レイノスが俳優を続けたいならフェナンテス王国に行かなくていいのよ」

　俳優としての仕事に限界を感じていたレイ。
　若いうちはいいけれど、歳をとったら農業を継ごうと思っていた。しかし、華奢な自分の体で大丈夫だろうか？　と言う不安もあった。

　レイの体の持ち主は病気で亡くなっている。その病気は悪魔の力で治ったが、もともとこの体は丈夫な方ではないようだ。

「かーちゃん、父ちゃん。俺フェナンテス王国に行くよ」

「分かったわ」

　こうして、レイはフェナンテス王国に行くことになった。
　マリアナとカインは畑を引き継いでくれる人を見つけてからフェナンテス王国に旅立つ事となる。

　レイはしばらく間、護衛も兼ねて、エナンセア王国の王宮に滞在してから旅立つ事になった。
　その間に仕事の引き継ぎなどをする。レイノス様引退には、ファンの悲鳴が上がった。
　そして、今日がその旅立つ日。

「レイ！　元気でね」

「ああ。すぐに会いに来るから」

「ふふ。レイは勉強で忙しいでしょう？　私がフレデリク殿下と会いにいくわよ」

「待ってるよ。ローサ……フレデリクに飽きたらいつでも俺の所に嫁においで」

「ダメ！　絶対に行かないわ！」

　猛反対をするローサに驚いた顔をしたレイ。
　フレデリクはローサの隣で嬉しそうな顔をした。

「そんなに嫌がられるとさすがに落ち込むんだけど」

「絶対にダメよ！　レイは銀髪の女性と結婚をして、銀髪のかわいい男の子を生んでもらってね。そして、私に抱っこさせてちょうだい。はぁ……成長したら銀髪の美少年よ」

　ニヤニヤしているローサの顔を見たレイは、ローサに息子を会わせる時には気をつけようと思った。
　理由を聞いて少しだけ落ち込んだフレデリクは、ローサの腰に腕を回した。

「あー、うん。いつかな。フレデリクも元気でな。お前のところは、王位継承権争いとか物騒な事が無さそうでいいな」

「レイも元気で。そうだな。私と兄上は仲が良いからな。兄上は王位を欲しいようだが、私は興味がないし。それに、兄上に私は殺せない…………だ……ろう」

「フレデリク殿下？」

　ローサはフレデリクを見上げた。
　フレデリクは何かを考えているのか遠くを見ている。

「おい。フレデリク？　どうかしたのか」

「…………あっ。いや、なんでもないんだ。少し寝不足で疲れているだけだ」

「働き過ぎじゃね？」

「レイもすぐにそうなるさ」

「あー。俺失敗したかも」

「レイったら……ふふ。頑張ってね」

「ああ。じゃあそろそろ行くわ」

　レイは馬車に乗り、フェナンテス王国に向かった。
　今度はぼーっとしているフレデリクをローサは見上げた。

「フレデリク殿下？　顔色が悪いです。中に入りましょう」

「ああ。ローサさん。護衛を増やそう。それから、しばらく毒味係も付ける」

「えっ？」

　ローサは急に話が変わって驚いた顔をした。

「ローサさん。ごめん。調子が悪くて……しばらく一人にさせて欲しい」

　フレデリクはそう言うと、ローサを部屋まで送り自室に戻った。
　ローサはフレデリクの後ろ姿を心配そうに見ていた。

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