目覚めたら、婚約破棄をされた公爵令嬢になっていた

ねむ太朗

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112 ローサが好きな花

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 フレデリクが王太子になった事で、ローサの勉強も忙しくなった。

「ローサさん大丈夫? 元気ないけど」

「いえ。大丈夫です」

 勉強のし過ぎで頭痛がしているとは言えないローサ。

 フレデリクは隣に座っていたローサの顔を覗き込んだ。

「顔色もあまり良くないよ。今日は休んだ方がいいな」

「ありがとうございます」

 自室に戻ったローサは、レイに手紙を書いた。

 勉強がはかどらないの。頭のいい人は私に時間を譲るべきだと思うわ。

 ローサのくだらない手紙は、一月程かけてレイのもとまで届けられた。

 次の日朝。
 フレデリクはローサの部屋を訪れた。

「まあ! フレデリク殿下おはようございます」

「ローサさんおはよう。体調は大丈夫?」

「ええ。良くなりました」

「良かった。それでさ、良かったら受け取ってほしい」

 フレデリクはローサに花束を渡した。

「素敵ですね。それにいい匂い。ありがとうございます」

「喜んでもらえて良かった。ローサさんが好きな花が分からなかったから、色々な花を使ったんだ」

「えっ? フレデリク殿下は私が好きな花を知らないんですか?」

 ローサは驚いた顔をした。

「ああ。良ければ教えてくれないか? 次はその花で花束を作るよ」

「やめてください! そんな残酷な……」

「えっ? 残酷?」

 険しい顔をしたローサに、戸惑った顔のフレデリク。

「フレデリク殿下……私が好きな花を本当にご存知ないのですか?」

「ん? ああ」

「あんなに通ったのに……そうね。しばらく忙しくて会いに行けていなかったものね」

「まさか……ローサさんが好きな花って動物食い花か?」

「動物食い花なんて他人行儀な。ドウバナちゃんですよ」

「ああ。そうだったね。今思い出したよ」

 フレデリクは遠い目をした。

「まあ良かった。ドウバナちゃんで花束を作るのはやめてくださいね」

「大丈夫。頼まれてもやらないから」

 フレデリクは、あんな重たそうな花を絶対持ちたくないと思った。

 それから、ニ月程経った頃。
 ローサはフレデリクに呼ばれて、王宮の庭の方にやって来た。

「これは……」

 驚いた顔をして、目の前の建物を見ているローサ。

「温室だよ。ローサさんの為に作ってもらったんだ」

 驚いて言葉が出ないローサ。

「ローサさん。おいで」

 フレデリクはローサの手を引いて中に入って行く。

「えっ! ドウバナちゃん? とアンソニーさん」

「ローサフェミリアお嬢様。お久しぶりでございます」

「お久しぶりです。フレデリク殿下……これはいったい……」

「最近のローサさんは頑張っているから、だからプレゼント。ここなら、忙しいローサさんでもすぐに会いに行けるでしょう? アンソニーさんは引き抜いたんだ」

「フレデリク殿下。ありがとうございます」

 ローサは満面の笑みでフレデリクを見た。

「ああ。ローサさんが喜んでくれて嬉しいよ」

 両手を広げてローサを抱きしめようとしたフレデリクだったが……。
 ローサはフレデリクをすっとかわして、ドウバナちゃんの所に行った。

「ドウバナちゃん! 久しぶりね! わーい、会えて嬉しい。アンソニーさんもこっちで働いて下さってありがとうございます」

「いえ。給料が良かったので」

 アンソニーは嬉しそうに答えた。
 ローサは一人寂しそうにしているフレデリクに気づく事はなく、ドウバナちゃんとキャッキャウフフしていた。

 温室を後にした二人。
 庭園の道を歩いている時に、ローサはフレデリクに声を掛けた。

「フレデリク殿下、少し屈んで下さい」

 不思議そうな顔をしながらも、姿勢を低くしたフレデリク。
 フレデリクが屈んだのを確認すると、ローサはフレデリクの頬にキスをした。

「えっ」

「フレデリク殿下ありがとうございました。すごく嬉しかったです」

 ローサはにっこりと笑った。
 幸せそうな顔をしたフレデリクは、ローサを抱きしめてキスをした。

 ローサが部屋に戻るとレイから手紙の返事が返って来ていた。

 俺にも時間を譲るべきだ。ローサも俺に時間を譲ってくれ。

 ローサのくだらない手紙に、くだらない返事を書いたレイ。

 いやよ。

 ローサは一言だけ返事を書いた。
 この手紙は、一月程かけてレイの所まで届けられる事となった。
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