エルーシアの物語

ねむ太朗

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  それから私は、ルシアン様に会うまでの二ヶ月間を不安なまま過ごす。

  二ヶ月後にルシアン様は会いに来てくれた。いつも通りのルシアン様だった。

  私が不安に過ごした二ヶ月を、ルシアン様は楽しく過ごしたようだ。
  私の中でルシアン様に対して不満が出て来た。
  けれど私は笑顔の仮面を被り、話を聞いていた。
  また、急に帰られたらと思うと自分の中の不満をルシアン様に伝える事が怖かった。

  私が不満を抱えながら過ごしている中、屋敷の正面でお姉様を見かけた。
  お姉様は、裕福そうな庶民の格好をした、顔立ちが整った男性と話をしていた。

  私はルシアン様に対するうさばらしもあり、意地悪く声を掛けた。
  お姉様から彼がクラウス様と聞かされた時は、ショックのあまりそのまま屋敷に戻った。

  今まで散々ばかにしてきたクラウス様があんなに格好いいなんて……

  私の中でお姉様に完全に敗北をした瞬間だった。
  私の中のお姉様に対しての上下関係が無くなる。

  今の自分は、ルシアン様といると気を使う。お姉様は、クラウス様といて幸せそう。
  私は、お姉様と自分の違いについて考えたが答えが出なかった。

  この頃になると、ルシアン様は私に会いに来る日が減ってきた。

  庭園でお姉様に会った時に、私はお姉様に幸せか?  と問いかけた。
  お姉様は迷うことなく、幸せだ。と、答えた。
  そして、クラウス様を愛しているとも言った。

  私の中で答えが出た瞬間だった。

  私は、ルシアン様を好きだけれど愛してはいない。
  私はこのままルシアン様と結婚をして幸せになれるのだろうか?
  しかし私の心の迷いに関係なく、結婚の話は進められるだろう。これは、プラメル家とグリデーラ家との政略結婚だから。

  それにこの時は、家の中に私の居場所はなかった。

  よそよそしいお母様。
  自分の事だけで手一杯のお兄様。
  仕事で忙しいお父様。
  私に対して怒っているだろうお姉様。

  この時の私は、ルシアン様を愛してはいないが好きだった。それに、好きな人と結婚を出来る私は、やはり幸せなのかもしれない……
  この家から連れ出してくれるのなら、今すぐにでも結婚をしたいと思った。

  しかし、ルシアン様はさらに私と距離を置くようになって行く。
  プリンセスを辞めた私にルシアン様の興味が薄れていった。

  私の心の不安は大きくなって行く。
  もし、ルシアン様に婚約破棄をされたら、私もお姉様のように笑われるのだろう。

  私はお姉様と同じ立場になってはじめて、自分の犯した罪に気がついた。
  けれど私は、お姉様に直接謝りに行く事が怖かった。今さら過ぎて頭を抱えた。

  私は貴族令嬢達に会わなくなり、部屋に引きこもる事が増えていった。

  それから私は、運命の日を迎えた。

  ルシアン様に婚約を解消したいと言われたのだ。
  その時に私の心は、壊れかけてしまった。

  お兄様が慰めに来てくれた。久しぶりにお兄様の優しさを感じた。
  お母様も様子を見に来てくれた。

  この時の私は、ルシアン様と結婚をする事に不安があったが、婚約破棄をされれば、貴族令嬢達にばかにされる事を理解していた。

  このままルシアン様と結婚する事に不安があるが、婚約が無くなるのは困る。
  それにこの時はまだ、ルシアン様の事を好きだった。

  私は、心の中で何度もお姉様に謝った。
  お姉様……ごめんなさい。
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