エルーシアの物語

ねむ太朗

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  次の日の朝になり、私達は朝食を食べてから馬を走らせた。

「久しぶりに気持ちいいですね」

「そうだな」

  途中の町で昼食を食べてからまた進んで行く。夜は町の宿屋に泊まった。

  それから二日が経ち、だいぶリーベル公爵領の近くに来た。
  今は夕食を食べて宿屋の部屋にいた。

  とうとうここまで戻って来てしまったわね。
  明日からは、外に出る時にはかなり気をつけましょう。
  うっかり、お姉様に会ったら家に連れ戻されてしまうわ。
  だってまだ私、立派な庶民になれていないもの。

  次の日の朝になった、朝食を食べてから馬を走らせる。
  リーベル公爵領に入る事が出来た。

  リーベル領に入るとすぐに牧場が見えた。
  牧場の横を走り続けると、小さな町が見えてきた。
  小さな町も抜け、しばらく馬を走らせると、さっきより少し大きめの町に到着した。
  ここで昼食を食べた。

  それから、図書館に向かう。
  図書館では三人で地図を見た。

「うむ、リーベル公爵領の森は三つあるな」

「そうですね、どこから行きますか?」

「そうだな……、一番東寄りの所から向かうか」

  私達は図書館を出て森に向かった。
  森の中を馬で進んで行くのは、涼しくて気持ちが良かった。

「あの」

「なんだ」

「森の中なら人が居ないので、布を外してもいいですよね」

「ああ。大丈夫だ」

  ディリック様は一旦馬を止めてくれた。

  はー、涼しい。

  それから、馬を走らせたがこの森の中に池は見つからなかった。
  私達は夕食を食べてから宿屋に戻った。

  ノックが聞こえて来た。
  ディリック様だった。

「どうかしましたか?」

「先程ベルノーと話し合ったのだが、次は南寄りの森に行く事になった」

「げっ、南……」

「ああ。森を抜けるとすぐに、プラメル領に行ける位置にある」

「分かりました」

  ディリック様は考える仕草をしてから聞いて来た。

「まだ帰りたくないのか」

「帰りたくないですよ」

「どうしてだ?」

「前にもお話しをしましたが、結婚がしたくないんです」

「何故だ。今のエルーシアは、ルシアン様を引きずっているようには見えない」

「えっ!  確かに。ルシアン様の事をすっかり忘れていました」

「ほらな」

  そう言うとディリック様は、顔をくしゃっとさせて笑っていた。
  私の心臓がどきりとしたが、気づかなかった事にした。

「ですが、まだ家に帰りたくありません」

「どうしてだ」

「貴族の家の方と結婚をしたくないからです」

「もし、俺が伯爵家の人間でなかったら……」

「えっ?」

「いや、何でもない。そろそろ部屋に戻る。おやすみエルーシア」

  ディリック様の顔は優しかった。

「おやすみなさい。ディリック様」

  扉が閉まった音が聞こえて来た。

  ディリック様は何を言おうとしていたのかしら?
  結婚なんてしたくない。男の人を信用したくない。
  信じて裏切られるなんて怖いもの。だったら、ずっと一人でいい。
  そうだわ。私は一人で生きて行く為に立派な庶民になるのだったわ。
  不思議探しが終わったら、真面目に就職先を探しましょうか。
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