エルーシアの物語

ねむ太朗

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  歴史の本がたくさん置いてある本棚の所まで来た。

  どれから見ようかしら……?
  とりあえず、最初から?

  私はこの国の歴史が書いてありそうな本を手にした。

  えっと……、初代国王アルバート陛下がこの国を作ったと、アルバート陛下はたくさんの人々に慕われていたから王になれました。
  これは授業で習ったわ。確かアルバート陛下は、戦で無くなった人を全員埋葬した事で、人々に慕われたのだったのよね。
  きっと、国をまとめる為に象徴となり、中心となって動いてくれる人物が欲しかったのね。
  けれど、それでよく国がまとまったわね。戦で活躍をした人とかが、王になった方がまとまりそうよね。昔の人が考える事はさっぱり分からないわ。

  私はその先も歴史の本を読み進めていったが、全然面白くなかったので本を棚に戻した。

  ポト……

  私が本をしまった場所の近くから別の本が落ちてきた。

「えっ!  私、不思議な力を使えるようになったかもしれません!」

  興奮をした私の声に二人が集まって来た。

「どうかしたのか」

「今、この本をここしまったんです。そうしたら、少し離れたここから本が落ちてきました」

「勘違いではないのか?」

「本当にに落ちてきたんですって!  見ていて下さい」

  私はしまったばかりの歴史書を取り出して、しまい直した。

「あれ?  落ちてこない……」

「ほらな」

「さっきは落ちてきたんですって」

「ああ、分かった、分かった」

  ディリック様の分からず屋!
  私がふて腐れていると、ディリック様が話掛けて来た。

「所で、何の本が落ちてきたんだ」

「そういえば、なんでしょう」

  私は本を拾った。
  タイトルは……

「ライングドール王国の成り立ち~アルバート陛下と精霊姫」

「何これ……気持ちが悪いですね」

「何故だ?」

「だって私……午前中は宗教の本で精霊様を調べていたのですよ。そして午後は歴史書の最初から読んでいたから、アルバート陛下の所も読みました」

「ふむ……。とりあえず読んで見るか」

「けれどこれ……物語みたいですよ。不思議探しと関係無いかもしれないですよ」

「そうだな。けれど、もしかしたら関係あったのかもしれないな。この国の宗教とも」

「分かりました、この厚さならすぐに読めそうなので読んでみましょう」

  ディリック様、ベルノーさん、私の順番で本を読んだ。

「ふむ……。なんだか、モヤモヤするのだが……」

「私もです」

「そうですね」

「ディリック様……この国の王家の方々には、直接聞いてはいけないのですよね」

「そうだな」

「リーベル公爵家の方々には?」

「やめておいた方が良いだろう……」

  三人共黙ってしまった。

「そういえば……初代王妃様は何て名前だったかしら……あっ!」

「どんな名だ?」

「エミリア様です。だって、先程復習し直したばかりだもの……」

「リーベル公爵家が管理をしている森は、麗しの森なのかもしれないな。けれど、そんな名前の森は地図に載っていなかったぞ」

「名前を変えているとかですかね?」

「隠す為にか?」

「たぶん……」

  ディリック様が思いついたような顔をした。

「よし、リーベル公爵領に行くぞ」

「えー!  絶対嫌です。お姉様に見つかってしまいます」

「変装をすれば良い」

「変装……?」

「今から町に行くぞ!」

  ディリック様に連れられて、私は町に来た。
  ディリック様は、渋いうす紫色の長めの布を手に取った。

「えっ、これですか……」

「俺とベルノーの近くに居るのだから、紫か黒の方が目立たないだろう」

「うっ……確かにそうですね。ありがとうございます」

  夕食後に宿屋の部屋で頭に巻いてみた。口元までしっかり隠し、目しか出ていないようにした。
  隣の部屋をノックする。

「あの……どうでしょうか」

「とてもお似合いですよ」

  ベルノーさんはさわやかに言った。

「ディリック様はどう思います?」

「に、似合っているぞ」

  本当に?  まあ、ディリック様がそう言うのなら、そうなのね。

「分かりました。では、明日からこれで外に出ますね」

  私は挨拶をして自室に戻った。
 
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