エルーシアの物語

ねむ太朗

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  今部屋の中には、私、お姉様、ディリック様、ベルノーさんだけしか居ない。

「お姉様……、私に何か隠していない?」

「何も隠していないわよ」

  お姉様は首をかしげていた。

「あの時、短剣が首に刺さる前に、私の腕を掴んでくれたのはお姉様?」

「そ、そうよ」

「違うわ!  お姉様は間に合わなかった。つるが助けてくれたのよ」

  お姉様は動揺しているようだ。

「どうして、つるが私を助けてくれたの?」

「そんなこと、知らないわ」

  お姉様は私と目を、合わせようとしなくなった。

「麗しの森はどこ?  精霊様の話は本当?  お姉様は何を知っているの?  私を助けてくれたのは誰?」

「エルーシア……いったい何を言っているの?」

「お姉様……この国は不思議なのよ。ディリック様に色々と教えてもらったわ」

  私は不思議探しについて、簡単に話した。

「ディリック様は、フォンダーン王国を守りたいの。ライングドール王国みたいに、戦争が無い国にしたいの。そう思っているのはディリック様だけではないわ。フォンダーン王国の人達もきっとそう思っているわ」

「エルーシア……図書館で本がポトッと落ちてきたのね」

  えっ?  お姉様……今の私の話を聞いて、気になるのはそこですか。
  この国は不思議ね。とか、気持ち悪いわね。とかでなくて、本の落下ですか。

「そうよ。本が落ちてきたのよ」

「エルーシア、分かったわ。少し時間をちょうだい。ディリック様……少しお時間を頂いてもよろしいでしょうか」

「ええ、時間はいくらでも大丈夫です」

  そう言うと、お姉様は急いで退出をした。
  私はディリック様達に、屋敷の中を簡単に案内し、ついでに昼食もご馳走をしてから宿屋に送った。

  あれから、十日程経った。
  その間はディリック様とベルノーさんに、プラメル領を案内したりした。
  三人で話し合い、お姉様は何か知っていそうだ。と結論を出した。

  今私はディリック様達に会いに、宿屋に来ている。

「エルーシア……国から手紙が来た。五日後にライングドール王国の国王に会う事になった。フォンダーン王国から、陛下と第一王女殿下も来るらしい」

「えっ……」

「だから、五日後にここを出る事になった。父上から、服も届いている」

「わかりました」

  私は急に寂しくなってしまった。

  次の日は家で大人しく過ごしていた。
  何もやる気が起きずに、自室でだらだらと過ごす。

  ノックがあった。
  お姉様だった。

「どうしたの?」

「うーん、今日はやけに静かだと思って」

  私は人払いをした。

「この間の続きなのだけど、ディリック様は陛下に呼ばれたの。お姉様なんでしょ?」

「うーん。私の手には負えないから、クラウスに相談したのよ」

「やはり、クラウス様なのね」

「私の口からは今は言えないわ。だから、あと四日待ってちょうだい。エルーシアには、私から伝える事になったから」

「分かったわ」

  お姉様は、少し考える仕草をしてから話し掛けて来た。

「エルーシアに元気が無い原因は、ディリック様かしら?  それとも、ベルノーさん?」

  お姉様はふわりと笑っていた。

「えっと……その」

「寂しいの?」

「うん……」

「好きなの?」

「べ、別にディリック様の事を好きじゃないもの!」

「なるほど!  ディリック様の方だったのね」

  お姉様はいたずらが、成功したような顔で笑っていた。

  あー、私ってやはり、おつむが弱いかもしれないわ……
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