エルーシアの物語

ねむ太朗

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番外編

家出娘との旅 ディリック視点

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  家出娘の名前はエルーシアと言うらしい。
  少々おつむが弱いが、最低限の知識はあるようだ。

  彼女との旅は中々楽しかった。ベルノーと二人でも楽しかったが、彼女が居ると会話が弾んだ。

  そしてよくわからん擬音語も使っていた。
  俺が彼女に興味を示すまでに、あまり時間は掛からなかった。

  彼女は幼い雰囲気だが、ふとした時に急に大人びた顔を見せる。
  色々と闇を抱えているのかもしれないと思った。

  彼女を意識したのは、腕に抱きつかれた時だ。
  あの時の俺の心臓はやけにうるさかった。
  状況的にまずいと思った俺は、慌てて部屋を出た。
  頭を冷やす為に夜道を散策した。

  次の日は顔を会わせるのが気まずかった。
  彼女は結婚をしたくないから、家を飛び出したと言っていた。
  俺がいつか気持ちを伝えれば、拒絶されてこの旅が終わる事は予想出来ていた。

  俺は俺の事を男と全く認識していない彼女と、一緒に居る事に落ち込み……距離を置く事もあった。
  寂しそうな彼女の顔を見ていると少し申し訳なく思った。

  不思議探しは順調に謎が明らかになっていき……エルーシアのお姉様に会う事になった。

  エルーシアが自ら命を絶とうとしたと、聞かされた時には悲しくなった。生きていてくれた事を、神に感謝した。

  俺はやっと自分の気持ちを伝える事が出来た。
  ルシアン様の事を忘れていたと言われた時には、嬉しかった。

  そしてエルーシアは、俺の事を嫌いではないと言っていた。
  今の俺にはその言葉だけて十分だった。
  少しずつ俺の事を意識してくれれば良いと思った。

  全ての謎が明らかになり、精霊エミリア様に会った。
  リリアーナ様は中々だった。
  エルーシアが言っていた、お姉様は怒らせない方が良い。と、何をやらかすか分からないの意味を理解する事が出来た。

  そして俺は……エルーシアの気持ちを聞く事が出来た。
  観客が居たが、俺は気にならないくらいに幸せだった。

  それからは慌ただしかった。
  家に帰り父に報告をした。
  連絡係の父には、報告をして良い事を、ライングドール王国の国王から許可をもらっていた。 
  俺はエルーシアと婚約したい事を父に伝えた。
  驚いていたが、すぐにプラメル家に手紙を書いてくれた。

  兄に不思議探しの結果を聞かれた時には、正直困った。
  仕方がないので、契約上話す事が出来ない。と伝えたら、兄は納得をしてくれた。

  俺とエルーシアとの婚約が整った。

  それから俺は陛下から、領地と爵位をいただいた。
  表向きは新たな同盟を結ぶ為の橋渡しをした。という事になっている。
  あながち間違ってはいないだろう……

  この出来事に俺は少し悩んだ。立派な庶民になれない事が分かれば……エルーシアに逃げられるかもしれない。

  俺は悩んだ挙げ句……さらっと伝える事にした。
  さらっと伝えた事が良かったのか、エルーシアはあまり気にしていないようだった。
  いや、結婚をしたくないから、立派な庶民を目指していたのだから、婚約をした今は立派な庶民に興味が無くなったのだろうか……

  そして俺達は結婚をした。
  ベンチで寝ていた彼女に出会わなければ、今の俺は居なかっただろう。

  エルーシア……ありがとう。
  そして、愛している。
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