悪魔は知らぬ間に身近に居た

ねむ太朗

文字の大きさ
1 / 7

1

しおりを挟む
  ここはグリーンウッド孤児院。十五歳までの身寄りがない子ども達が過ごす場所。

  私はフィーナ。現在十五歳だ。来年になったら、職を見つけここを出て行かなければならない。

「あっ!  フィーナ、やっと見つけた。洗濯物を干すのを手伝って」

「今行くわ」

  私に声を掛けてきたのはローズマリー。私と同じ年だ。
  グリーンウッド孤児院には、私と同じ十五歳の人が四人居る。

  一人目はローズマリー。
  二人目はリナリア。
  三人目はベアル。
  四人目はゲジェ。

  私を含め全員で五人。その中の三人が女の子だ。
  この五人はみんな仲が良い。

  私はローズマリーと一緒に洗濯物を干した。

「ねぇ、ゲジェの事をどう思う?」

  急に話掛けてきたローズマリーの言っている意味が分からなかった。

「ローズマリー……どういう事?」

「うーん。ゲジェってさ、いつもフィーナを見ている気がするのよね」

「そうかな?  気のせいよ」

  ローズマリーは納得をしていない顔をしていたが、会話を続けてくる事は無かった。

  洗濯物を干した後は、朝食を食べ、洗い物をする。
  洗い物はゲジェとだった。
  さっきのローズマリーの言葉が気になった私は、無言で食器洗いをした。

「あのさ」

「何」

「いや、何でもない……」

  ゲジェは何かを言いかけたようだが、やめてしまった。
  食器洗いの後は、そのままゲジェと昼食を作った。
  途中から一つ年下の男の子と女の子が手伝ってくれた。

  午後は自由時間だ。
  今日もローズマリーとリナリアと私は過ごした。
  三人で野原で寝そべって日向ぼっこをした。

「ねぇ、フィーナ。さっきゲジェと二人きりだったでしょ。どうだったの?」

  ローズマリーは楽しそうに聞いてきた。
  ローズマリーの金髪が風で揺れて輝いていた。

「だから、ゲジェとは何もないって」

「ねえ、何の話?」

  ローズマリーがリナリアに説明をしている。

「そうね。確かにゲジェはフィーナの事を見ているかもしれないわね」

  リナリアまでやめて欲しい……

「そんな事よりも、二人はどうなのよ」

  全く興味が無いと言ったリナリアに対し、ローズマリーはベアルが好きと答えた。

「えっ!  ベアルなの?」

「そんなに驚く事無いじゃない」

  いやいや、ローズマリーがベアルを好きなんて全く気づかなかった。

「全く分からなかったもの。驚くわよ」

「そうかしら?  ベアルの事を好きな女の子は多いわよ」

「どうして、知っているの?」

「見ていれば分かるわよ」

  すごいなー。ローズマリーは、恋愛の事になると詳しいわね。

「ベアルのどこがいいの?」

「格好良い所よ」

「まあ、確かにベリアルは人間離れをした格好良さだけど……」

  ベアルは黒髪黒目で落ち着いた雰囲気だ。
  どことなく大人びている。そこがいいのかもしれない。

「ねえ、そんな事より隣町の話……知っている?」

  ずっと黙っていたリナリアは、恋愛の話に興味が無いようだ。
  私もそろそろ恋愛の話が飽きてきた頃なので、リナリアの話を聞く事にした。

「リナリア、隣町で何かあったの?」  
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

婚約者の幼馴染?それが何か?

仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた 「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」 目の前にいる私の事はガン無視である 「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」 リカルドにそう言われたマリサは 「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」 ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・ 「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」 「そんな!リカルド酷い!」 マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している  この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」 「まってくれタバサ!誤解なんだ」 リカルドを置いて、タバサは席を立った

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

処理中です...