悪魔は知らぬ間に身近に居た

ねむ太朗

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  あれから一月が経った。
  領主様が寄付と人を数人寄越してくれた。
  町の人達の協力もあり、孤児院の建物が出来上がった。

  小さな子ども達は、新しい建物に喜ぶ姿が見られた。
  リナリアと私はあれから塞ぎ込んでいる。

  ローズマリーは私にとって大切な友人の一人だ。
  何故あの場に留まらなかったのだろう……

「フィーナ……そんな顔をしていたら、ローズマリーが悲しむわ」

「リナリアだって、悲しい顔をしているわ」

  リナリアは黙ってしまった。
  私は一人になりたかったので木に登った。

  ローズマリーは私が木に登ると、危ないからって止めてくれていたな……

「フィーナ、今いいかい?」

  気づいたら隣にベアルが居た。
  驚いて落下しなかった私をほめたいと思った。

「ベアル、何か用?」

「僕と取引をしないかい?」

「取引って……?」

「ローズマリーを生き返らせてあげるよ」

  そう言うとベアルはにっこりと微笑んだ。

「冗談はやめて!  ローズマリーは亡くなったのよ!」

「僕は本気だ。ずっと、この時を待っていた。どうやったら、フィーナが僕を必要としてくれるのか考えていたんだよ。そんな時に火事が起こった。これは使えると思ったよ。だから、少しだけ演出をしたんだ」

「どういう……事?」

「廊下にあった棚は女の子二人で退かせない程重たかったかな?」

「えっ……普段だったら、リナリアと力を合わせれば退かせそうだけど、あの時は冷静じゃなかったから……」

  ベアルはずっと笑顔のまま私の話を聞いていた。

「そう。あの時はね……いつもよりも重くして倒したんだ」

「はっ?  どういう事?」

「ああ、改めまして。僕は悪魔です」

「ふざけないでちょうだい!」

「ふざけていないんだけど……まあ、いっか。それで、どうしてもローズマリーには死んでもらいたかったんだ。だから、僕が力を使って、いつもより重たくした棚を倒した。それから、ローズマリーを助けに戻られると困るから、建物は半壊させてもらったよ」

「ベアルがローズマリーを殺したの?  ローズマリーは友だちでしょ?  なんて事を言うの……」

「そうさ、僕がやったんだ。けれど火を付けたのは僕じゃない。それから、ローズマリーは友だちだ。でも、もうすぐ生き返えるから、何も問題ないよ」

「ベアル……何を言っているの?」

「さぁフィーナ……僕と取引をしよう!  僕は君の願いを一つだけ叶えてあげる。だから、君の心をちょうだい」

  ベアルはさわやかな笑顔でそう言った。

「心って……?」

「心と言っても僕が欲しいのは心臓ではない。僕が欲しいのは人間の感情だ。僕に心を食べられると人間は喜怒哀楽が無くなる」

「ベアル……まさか……隣町の事件はあなたの仕業なの?」

「事件なんて大げさだなー。取引が成立したから、僕は彼女達の心を食べただけだよ」

「ベアル……どうして……そんな酷い事をするの?」

「酷い?  人間だって家畜を食べるじゃないか。僕の食料は人間の心だ。命を奪う人間の食事の方がよっぽど酷い事をしていると思うけど」

  急に真顔になったベアルは少し怖かった。
  ベアルは本当に悪魔かもしれないと思った。
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