悪魔は知らぬ間に身近に居た

ねむ太朗

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「さあ、フィーナ。僕と取引をしよう。ローズマリーを生き返らせたんだろう?」

  ベアルは笑顔に戻っていた。

「待って。ローズマリーが生き返ったら、私には感情が無くなるんでしょう?」

「そうだよ。けれど命はなくならないよ。だから、大丈夫」

  私には何が大丈夫なのか、さっぱり分からなかった。

「ずっと僕は待っていたんだ。フィーナから甘い香りがしていたからね。僕好みの匂いだ。だから、ずっと食べるのを楽しみに待っていたんだよ。悩むのは構わないが、あまり焦らさないで欲しいな」

  私は初めてベアルが気持ち悪いと思った。

「お願い……少しだけ、私に考える時間をちょうだい」

「いいよ。答えが出たら、この木の上でまた話そう」

「分かったわ」

  私の返事を聞くとベアルは降りていった。

  私はローズマリーを助けたい。
  けれど悪魔との取引は怖かった。
  感情が無くなった人間はどうなるのだろうか……?

  その日の夜に私はリナリアに話しかけた。

「リナリア……まだ、起きている?」

「ええ。どうかしたの?」

「リナリアは私がおかしくなってしまっても、友だちでいてくれる?」

「おかしく……?  どんな、フィーナでも私達は友だちよ」

「リナリア……ありがとう」

「変なフィーナね」

  リナリアは微笑んでくれた。

  次の日の昼、私はまた木の上に登った。

「やあ!  こんなに早くに答えが出るとは思わなかったよ」

  気づくと私の隣にはベアルが居た。

「本当に……ローズマリーを生き返らせてくれるの?」

「もちろんだよ」

「感情が無くなった人間はどうなるの?」

「さあ?  僕は興味が無いから分からないよ」

「そう……」

  私は少し怖かったが取引をする事にした。

「さあ、そろそろいいかな?  取引をしよう」

「どうやるの?」

「フィーナの髪の毛を一本貰うよ」

  私は自分の髪の毛を一本抜いてベアルに差し出した。

「髪の毛を持ったまま、声に出して願いを言うんだ」

「ローズマリーを生き返らせて」

  ベアルはにっこり笑うと、私の髪の毛を手にして燃やした。
  オレンジ色の炎がベアルの手のひらで美しく輝いた。

「ふふ。下を見てご覧」

「ローズマリー!」

  木の下でローズマリーが横たわっていた。
  ローズマリーの所に行こうとした私をベアルが引き止めた。

「フィーナが僕の願いを叶える番だよ」

  そう言うとベアルは私の胸の所に手のひらをかざした。
  その直後……身体がふわふわとした気がした。
  自分の意識が遠のいた気がした。

「ああ、やはり……フィーナな心は美味しいな。何年も待ってて良かったよ」

  ベアルが何かを言っていたが、ふわふわとしていた私には何も感じられ無かった。
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