落ちこぼれ魔法使い見習いのアイリーン

ねむ太朗

文字の大きさ
48 / 69

48. 手紙

しおりを挟む
「これで今日の授業は終わりだ」

 数日ぶりの授業を終えて席を立つとプラント先生に呼ばれた。

「はい。何ですか」

「これを」

 私はプラント先生から手紙を受け取った。
 手紙には王家の印がされていた。

「あの、えっと」

「褒美の件で登城せよと」

「褒美!?」

「黒龍を手懐けて被害を最小限に抑えたからな。あとカロリーナからの伝言で時間がある時に遊びに来てくれと」

「はい。分かりました。先生はカロリーナさんと仲が良いですね」

 プラント先生はこめかみをポリポリと掻いて困った顔をした。

「まあ。婚約者だからな」

「あーなるほど。婚約者ですか。…………えっ! 婚約者?」

「俺は手紙を渡して伝言も伝えたからな。はい、今日の仕事はおしまいだ。帰るぞ」

 プラント先生は早口で言うと教室を出て行った。
 照れくさいのだろうか、恥ずかしいのだろうか。私がくすくすと笑っているとシルフィーさんがやって来た。

「アイリーン。今聞こえていたのだけれども、手紙を開けてほしいわ」

「はい。では今開けますね」

 手紙の内容は五日後に登城するように書かれていた。

「これは大変! 今すぐにドレスを買いに行きましょう」

 急に慌て出したシルフィーさん。

「いやいや。私お金あまり持っていないので制服でいいです。正装なんで」

「だめよだめ。私の友人なのに制服で登城なんて。王家の方が許しても私は許しませんわよ」

 私はシルフィーさんの取り巻きではなく友人だったようだ。なんだか嬉しい。

「なんでにやにやしているのよ。話を聞いているの?」

「はい。では、お金がないので制服で」

「だーかーらー、絶対にドレスよ。ではこうしましょう。私のドレスを貸して差し上げてよ」

「汚しらと思うとお外を歩けません」

「お古だからいいのよ。ほら今から私の家に行くわよ」

 そう言うとシルフィーさんは私の手を引いて歩き出した。

「あっ、ジーン。ユースチスくん。また明日ねー」

 私が声を掛けると二人は手を振ってくれた。

 今日はカロリーナさんの家に行こうと思っていたんだけど、明日でいっか。

 私はカールセン家の快適な馬車に揺られてシルフィーさんの家に向かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

拝啓、婚約者さま

松本雀
恋愛
――静かな藤棚の令嬢ウィステリア。 婚約破棄を告げられた令嬢は、静かに「そう」と答えるだけだった。その冷静な一言が、後に彼の心を深く抉ることになるとも知らずに。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

ジェリー・ベケットは愛を信じられない

砂臥 環
恋愛
ベケット子爵家の娘ジェリーは、父が再婚してから離れに追いやられた。 母をとても愛し大切にしていた父の裏切りを知り、ジェリーは愛を信じられなくなっていた。 それを察し、まだ子供ながらに『君を守る』と誓い、『信じてほしい』と様々な努力してくれた婚約者モーガンも、学園に入ると段々とジェリーを避けらるようになっていく。 しかも、義妹マドリンが入学すると彼女と仲良くするようになってしまった。 だが、一番辛い時に支え、努力してくれる彼を信じようと決めたジェリーは、なにも言えず、なにも聞けずにいた。 学園でジェリーは優秀だったが『氷の姫君』というふたつ名を付けられる程、他人と一線を引いており、誰にも悩みは吐露できなかった。 そんな時、仕事上のパートナーを探す男子生徒、ウォーレンと親しくなる。 ※世界観はゆるゆる ※ざまぁはちょっぴり ※他サイトにも掲載

幼馴染を溺愛する旦那様の前からは、もう消えてあげることにします

睡蓮
恋愛
「旦那様、もう幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

モブは転生ヒロインを許さない

成行任世
恋愛
死亡ルートを辿った攻略対象者の妹(モブ)が転生ヒロインを断罪します。 .

処理中です...