かわいがっているネズミが王子様だと知ったとたんに可愛くなくなりました

ねむ太朗

文字の大きさ
15 / 42

15 ロイアン視点

しおりを挟む
  俺はアネモネが見えなくなったのを、確認してからデュランに話し掛けた。

「おい、何が魅力的な雌のネズミなら、愛は芽生えるかもしれませんね……だ。俺は人間だぞ!」

「申し訳ありません。ですが、あの時はああ答えるしか無かったと思いますが」

  デュランは全く申し訳なく思っていなさそうな顔をして、謝ってきた。

「ああ、クソっ!」

「ロイアン殿下、アネモネ嬢と全く進展していなさそうに見えるのは気のせいでしょうか」

「そんな訳無いだろう。アネモネとロンと呼び合うようになったし、敬語を使わないで話すようになったんだぞ」

  デュランはため息をついた。

「それだけですか。四六時中一緒にいてそれだけですか」

「俺にとっては大きな一歩なんだよ」

「はぁー、そうですね。アネモネ嬢とは何回も踊った事があるのに、全く意識されていませんでしたね。それから考えれば大きな一歩かもしれませんね」

  そうだ、あの頃に比べれば……。

「それから殿下、一つ謝らなければならない事があります」

「何だ」

「兄上とアネモネ嬢が知り合ってしまいました。申し訳ありません」

  今度は頭を下げたデュラン。

「いや、いい。アネモネから聞いている。アリス嬢が危なかったと」

「はい。今の所はアネモネ嬢に興味は無さそうです。ですが、兄はとっかえひっかえなので……」

「分かった。引き続き、アネモネが出そうな夜会に参加をして、変な男を近づけないようにしてくれ」

「承知しました。私が参加出来ない夜会は、別の者を行かせているのでご安心下さい」

「分かった。助かる」

  俺の言葉を聞くとデュランは頷いた。

「父上はどうしている」

「まだ、もとの姿に戻らないのか!  と、日に日にイライラが増している様子ですが、エリーアンヌ様がなだめて落ち着いています」

「母上が……そうか」

「所で、殿下はいつまでのんびりされるのですか?」

  俺は首を傾げた。

「のんびり……とは?」

「これだけアネモネ嬢と一緒に居て、全く意識してもらえていないようにお見受けしますが」

「いいんだよ。ゆっくりで。ゆっくり関係を築いて行くんだ」

「横から別の男に掻っ攫われても知りませんよ」

「ふん。オーウェン様には勝てると思っている」

  俺は自信を持って答えた。
  アネモネは、オーウェン様を嫌ってはいないようだが、好いてもいないのは見ていて分かる。

「何もアネモネ嬢を狙っているのは、オーウェン様だけでは無いと思いますが……」

「何?  アネモネの近くにオーウェン様以外に男が居るのか?」

「ええ、まあ」

  誰だ。アネモネに近づく、けしからん男は!

「まさか、セシル様とか言う冗談では無いだろうな」

「いえ、別の人物です」

  そうだろうな。セシル様はアネモネの兄なのだからな。

「誰だ!  教えろ!」

「私です」

「はっ?」

  デュランは真面目な顔をして答えた。
  俺はデュランの言っている事を理解するまでに、時間が掛かった。

「な、なにを……どういう事だ」

「そのままの意味ですが。あまりロイアン殿下がのんびりされていますと、横から私がもらいますよ。何しろ殿下のお陰でアネモネ嬢との接点が増えましたので」

「おい……アネモネは俺のだ」

「まだ、ロイアン殿下とお付き合いされていないでしょう。少なくとも、オーウェン様よりかは、私に対して心を開いてくれていると思いますね」

「アネモネはやらん」

「では、頑張って下さいね。あんまりのんびりしていると、私が横からもらますので、お忘れなきよう」

  今までライバルは、好感度の低いオーウェン様だけだと思っていた俺は、急に焦り始めたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

【完結】妻の日記を読んでしまった結果

たちばな立花
恋愛
政略結婚で美しい妻を貰って一年。二人の距離は縮まらない。 そんなとき、アレクトは妻の日記を読んでしまう。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
恋愛
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

処理中です...