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15 ロイアン視点
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俺はアネモネが見えなくなったのを、確認してからデュランに話し掛けた。
「おい、何が魅力的な雌のネズミなら、愛は芽生えるかもしれませんね……だ。俺は人間だぞ!」
「申し訳ありません。ですが、あの時はああ答えるしか無かったと思いますが」
デュランは全く申し訳なく思っていなさそうな顔をして、謝ってきた。
「ああ、クソっ!」
「ロイアン殿下、アネモネ嬢と全く進展していなさそうに見えるのは気のせいでしょうか」
「そんな訳無いだろう。アネモネとロンと呼び合うようになったし、敬語を使わないで話すようになったんだぞ」
デュランはため息をついた。
「それだけですか。四六時中一緒にいてそれだけですか」
「俺にとっては大きな一歩なんだよ」
「はぁー、そうですね。アネモネ嬢とは何回も踊った事があるのに、全く意識されていませんでしたね。それから考えれば大きな一歩かもしれませんね」
そうだ、あの頃に比べれば……。
「それから殿下、一つ謝らなければならない事があります」
「何だ」
「兄上とアネモネ嬢が知り合ってしまいました。申し訳ありません」
今度は頭を下げたデュラン。
「いや、いい。アネモネから聞いている。アリス嬢が危なかったと」
「はい。今の所はアネモネ嬢に興味は無さそうです。ですが、兄はとっかえひっかえなので……」
「分かった。引き続き、アネモネが出そうな夜会に参加をして、変な男を近づけないようにしてくれ」
「承知しました。私が参加出来ない夜会は、別の者を行かせているのでご安心下さい」
「分かった。助かる」
俺の言葉を聞くとデュランは頷いた。
「父上はどうしている」
「まだ、もとの姿に戻らないのか! と、日に日にイライラが増している様子ですが、エリーアンヌ様がなだめて落ち着いています」
「母上が……そうか」
「所で、殿下はいつまでのんびりされるのですか?」
俺は首を傾げた。
「のんびり……とは?」
「これだけアネモネ嬢と一緒に居て、全く意識してもらえていないようにお見受けしますが」
「いいんだよ。ゆっくりで。ゆっくり関係を築いて行くんだ」
「横から別の男に掻っ攫われても知りませんよ」
「ふん。オーウェン様には勝てると思っている」
俺は自信を持って答えた。
アネモネは、オーウェン様を嫌ってはいないようだが、好いてもいないのは見ていて分かる。
「何もアネモネ嬢を狙っているのは、オーウェン様だけでは無いと思いますが……」
「何? アネモネの近くにオーウェン様以外に男が居るのか?」
「ええ、まあ」
誰だ。アネモネに近づく、けしからん男は!
「まさか、セシル様とか言う冗談では無いだろうな」
「いえ、別の人物です」
そうだろうな。セシル様はアネモネの兄なのだからな。
「誰だ! 教えろ!」
「私です」
「はっ?」
デュランは真面目な顔をして答えた。
俺はデュランの言っている事を理解するまでに、時間が掛かった。
「な、なにを……どういう事だ」
「そのままの意味ですが。あまりロイアン殿下がのんびりされていますと、横から私がもらいますよ。何しろ殿下のお陰でアネモネ嬢との接点が増えましたので」
「おい……アネモネは俺のだ」
「まだ、ロイアン殿下とお付き合いされていないでしょう。少なくとも、オーウェン様よりかは、私に対して心を開いてくれていると思いますね」
「アネモネはやらん」
「では、頑張って下さいね。あんまりのんびりしていると、私が横からもらますので、お忘れなきよう」
今までライバルは、好感度の低いオーウェン様だけだと思っていた俺は、急に焦り始めたのだった。
「おい、何が魅力的な雌のネズミなら、愛は芽生えるかもしれませんね……だ。俺は人間だぞ!」
「申し訳ありません。ですが、あの時はああ答えるしか無かったと思いますが」
デュランは全く申し訳なく思っていなさそうな顔をして、謝ってきた。
「ああ、クソっ!」
「ロイアン殿下、アネモネ嬢と全く進展していなさそうに見えるのは気のせいでしょうか」
「そんな訳無いだろう。アネモネとロンと呼び合うようになったし、敬語を使わないで話すようになったんだぞ」
デュランはため息をついた。
「それだけですか。四六時中一緒にいてそれだけですか」
「俺にとっては大きな一歩なんだよ」
「はぁー、そうですね。アネモネ嬢とは何回も踊った事があるのに、全く意識されていませんでしたね。それから考えれば大きな一歩かもしれませんね」
そうだ、あの頃に比べれば……。
「それから殿下、一つ謝らなければならない事があります」
「何だ」
「兄上とアネモネ嬢が知り合ってしまいました。申し訳ありません」
今度は頭を下げたデュラン。
「いや、いい。アネモネから聞いている。アリス嬢が危なかったと」
「はい。今の所はアネモネ嬢に興味は無さそうです。ですが、兄はとっかえひっかえなので……」
「分かった。引き続き、アネモネが出そうな夜会に参加をして、変な男を近づけないようにしてくれ」
「承知しました。私が参加出来ない夜会は、別の者を行かせているのでご安心下さい」
「分かった。助かる」
俺の言葉を聞くとデュランは頷いた。
「父上はどうしている」
「まだ、もとの姿に戻らないのか! と、日に日にイライラが増している様子ですが、エリーアンヌ様がなだめて落ち着いています」
「母上が……そうか」
「所で、殿下はいつまでのんびりされるのですか?」
俺は首を傾げた。
「のんびり……とは?」
「これだけアネモネ嬢と一緒に居て、全く意識してもらえていないようにお見受けしますが」
「いいんだよ。ゆっくりで。ゆっくり関係を築いて行くんだ」
「横から別の男に掻っ攫われても知りませんよ」
「ふん。オーウェン様には勝てると思っている」
俺は自信を持って答えた。
アネモネは、オーウェン様を嫌ってはいないようだが、好いてもいないのは見ていて分かる。
「何もアネモネ嬢を狙っているのは、オーウェン様だけでは無いと思いますが……」
「何? アネモネの近くにオーウェン様以外に男が居るのか?」
「ええ、まあ」
誰だ。アネモネに近づく、けしからん男は!
「まさか、セシル様とか言う冗談では無いだろうな」
「いえ、別の人物です」
そうだろうな。セシル様はアネモネの兄なのだからな。
「誰だ! 教えろ!」
「私です」
「はっ?」
デュランは真面目な顔をして答えた。
俺はデュランの言っている事を理解するまでに、時間が掛かった。
「な、なにを……どういう事だ」
「そのままの意味ですが。あまりロイアン殿下がのんびりされていますと、横から私がもらいますよ。何しろ殿下のお陰でアネモネ嬢との接点が増えましたので」
「おい……アネモネは俺のだ」
「まだ、ロイアン殿下とお付き合いされていないでしょう。少なくとも、オーウェン様よりかは、私に対して心を開いてくれていると思いますね」
「アネモネはやらん」
「では、頑張って下さいね。あんまりのんびりしていると、私が横からもらますので、お忘れなきよう」
今までライバルは、好感度の低いオーウェン様だけだと思っていた俺は、急に焦り始めたのだった。
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