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「俺の母上を知っているか?」
「エリーアンヌ様です」
「そう。母上の結婚をする前の名前……旧姓は、エリーアンヌ・マードック。マードック侯爵家の人間だった」
「はい」
「俺には母方の伯父上がいるが、伯父夫婦には子どもがいないから俺が引き継ぐ事になっている」
「あっ、成る程。では、なんでまだ王家にいるのですか?」
「父上が駄々をこねたんだ」
「へ?」
「まだ、手元に俺を置きたいと言った。父上と伯父上の話し合いで十八歳になったら、養子縁組をする予定だったんだが……」
「予定だったんだが……?」
「誕生日の前日にネズミになってしまったんだ。あはは」
だから、笑えないって。
ネズミになったの全然笑えないから。
「そう……だったのですね」
「ああ、だから、マードック領には結構行っていたし、ほとんどの人間が知っていると思っていたのだが」
「すみません」
何しろ私の夢はお気楽、楽々実家生活でしたので、男の人に興味がありませんでした。
「いや、いい。それよりも、話を戻していいか」
「ええ」
「アネモネ、俺にしとけよ」
真剣な顔で言われると、相手がロイアン殿下でもドキっとした。
「えっと、その……」
戸惑っている私にロイアン殿下は近付いてきて、耳元で呟いた。
「俺と結婚をすればミランダ嬢とは家族ぐるみの付き合いになるかもしれないな。一番上の兄上より、二番目の兄上の方が仲が良いからな。だから、俺にしとけよ」
家族ぐるみの付き合い……たまらないですね。
悪魔の囁きは止まらない。
「マードック家はそんなに畏まった仕来たりも無いし、そこまで大変ではないぞ」
そ、それは魅力的ですね。
ところで、少し離れて欲しいのですが。
「アネモネ……俺と結婚をしたくなっただろう?」
ロイアン殿下と結婚……
「ロイアン殿下と結婚を……したくありません!」
「えっ、お、おい」
あっ、いつものロンだ。
これよ、これ。このあわあわした感じ。
「そうよ。これよ、これ。私の知っているロンだわ」
「ちょっ、アネモネ、何の話だ」
「何ってロンの話よ」
慌てだしたロンは、私から離れてくれた。
「俺と結婚をしたくないって、何故だ」
「うーん。まだ誰と結婚をするのか決めるのは、はやいかなぁーって」
「そんな事はない。縁談を進められたらどうするんだ」
「大丈夫よ。私もこの間十七歳になったばかりなの。だから、あと一年近くあるわ」
「一年なんてあっという間だぞ」
「その時は、その時よ。お父様が紹介をしてくれる人が、もしかしたら素敵な方かもしれないし」
ロンはむすっとした顔をした。
「十歳以上も年が離れた男性だったらどうするんだ」
「その時はその時よ。若いから好きになるって事でもないし、年上過ぎるから好きならないって、話でもないでしょう?」
「……分かった」
あら? ロンの機嫌が少し悪い。
そうか、ロンは人間に戻りたくて必死だったのよね。
力になれなくてごめんなさい。
「寝るぞ」
「はーい」
私達は一つの寝具に横になった。
二回目だし、なんとも思わないわ!
私がうとうとしてきた頃……後ろから誰かに抱きしめられた気がした。
しかし、今日はアリスの家に行き疲れていたので、確認をする事なくそのまま眠りについた。
「エリーアンヌ様です」
「そう。母上の結婚をする前の名前……旧姓は、エリーアンヌ・マードック。マードック侯爵家の人間だった」
「はい」
「俺には母方の伯父上がいるが、伯父夫婦には子どもがいないから俺が引き継ぐ事になっている」
「あっ、成る程。では、なんでまだ王家にいるのですか?」
「父上が駄々をこねたんだ」
「へ?」
「まだ、手元に俺を置きたいと言った。父上と伯父上の話し合いで十八歳になったら、養子縁組をする予定だったんだが……」
「予定だったんだが……?」
「誕生日の前日にネズミになってしまったんだ。あはは」
だから、笑えないって。
ネズミになったの全然笑えないから。
「そう……だったのですね」
「ああ、だから、マードック領には結構行っていたし、ほとんどの人間が知っていると思っていたのだが」
「すみません」
何しろ私の夢はお気楽、楽々実家生活でしたので、男の人に興味がありませんでした。
「いや、いい。それよりも、話を戻していいか」
「ええ」
「アネモネ、俺にしとけよ」
真剣な顔で言われると、相手がロイアン殿下でもドキっとした。
「えっと、その……」
戸惑っている私にロイアン殿下は近付いてきて、耳元で呟いた。
「俺と結婚をすればミランダ嬢とは家族ぐるみの付き合いになるかもしれないな。一番上の兄上より、二番目の兄上の方が仲が良いからな。だから、俺にしとけよ」
家族ぐるみの付き合い……たまらないですね。
悪魔の囁きは止まらない。
「マードック家はそんなに畏まった仕来たりも無いし、そこまで大変ではないぞ」
そ、それは魅力的ですね。
ところで、少し離れて欲しいのですが。
「アネモネ……俺と結婚をしたくなっただろう?」
ロイアン殿下と結婚……
「ロイアン殿下と結婚を……したくありません!」
「えっ、お、おい」
あっ、いつものロンだ。
これよ、これ。このあわあわした感じ。
「そうよ。これよ、これ。私の知っているロンだわ」
「ちょっ、アネモネ、何の話だ」
「何ってロンの話よ」
慌てだしたロンは、私から離れてくれた。
「俺と結婚をしたくないって、何故だ」
「うーん。まだ誰と結婚をするのか決めるのは、はやいかなぁーって」
「そんな事はない。縁談を進められたらどうするんだ」
「大丈夫よ。私もこの間十七歳になったばかりなの。だから、あと一年近くあるわ」
「一年なんてあっという間だぞ」
「その時は、その時よ。お父様が紹介をしてくれる人が、もしかしたら素敵な方かもしれないし」
ロンはむすっとした顔をした。
「十歳以上も年が離れた男性だったらどうするんだ」
「その時はその時よ。若いから好きになるって事でもないし、年上過ぎるから好きならないって、話でもないでしょう?」
「……分かった」
あら? ロンの機嫌が少し悪い。
そうか、ロンは人間に戻りたくて必死だったのよね。
力になれなくてごめんなさい。
「寝るぞ」
「はーい」
私達は一つの寝具に横になった。
二回目だし、なんとも思わないわ!
私がうとうとしてきた頃……後ろから誰かに抱きしめられた気がした。
しかし、今日はアリスの家に行き疲れていたので、確認をする事なくそのまま眠りについた。
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