かわいがっているネズミが王子様だと知ったとたんに可愛くなくなりました

ねむ太朗

文字の大きさ
33 / 42

34

しおりを挟む
  王都のほうれん草祭から数日。今日は、満月の日だ。

  私達は寝る為に部屋に戻って来た。

「お嬢様、おやすみなさいませ」

「ありがとう。アリサ」

  アリサは退出したけれど、カーテンを開けるのは、もう少し待ってからの方がいいわね。

  人間の姿だといつもより騒がしいのよね。

  最近のロンはため息ばかり、頭の中がほうれん草祭でいっぱいなのね。

「ロン?  元気?」

「……ああ」

  全然元気じゃ、ないじゃない!

  私は廊下が静かになったのを確認してから、ロンに尋ねた。

「そろそろ、カーテンを開ける?」

「いや、今日はいい」

  はい?
  今、なんとおっしゃりましたか?

「あの……人間の姿に戻りたくないの?」

「戻りたいけれど、一日だけ戻ってもしょうがないだろう……はぁ」

  まるで別人ね。うじうじうじうじ、イライラしてきたわ!
  なんだか分からないけれど、すっごくイライラする。

「ちょっと!  この間からずっと、うじうじうじうじ。やめて欲しいんですけど!」

「いや、俺はうじうじなんて……」

「しているでしょ!  もっと、シャキっとしてよ!  そんなんだから、人間に戻れないのよ」

「そ、そんな事言うことないだろう……?  俺だって……ネズミになりたくて、この姿でいるんじゃないんだから……」

  はぁ、もうイライラする。
  イライラがピークに達した私は、何を思ったのかロンを片手で掴み持ち上げた。

「お、おい。アネモネ?  なんだ急に。下ろせよ」

「嫌よ!  もう、頭にきたんだから!」

「お、おい。何をする気だ?」

「静かにして!」

  そう言うと私は、自分の唇にロンの唇を押し付けた。

  やっぱり何も起こらないわね。やはり相手は、人間じゃなくて、ネズミなんだわ。

  私はそう思いながロンを窓際の机の上に置いた。
  すると……ロンの身体が白く光人間の姿に戻っていた。

「へっ……?」

「あ、あれ?  もとに戻ったのか?」

  私のキスでもとに戻った?  いや、そんなはず……。

「カーテンの隙間から月明かりが少し差し込んでいるから……かしら?」

「ああ、そうか……今日は満月だったんだった」

「あの……ごめんなさい」

「いや……少し驚いたが気にしていない」

「なんだか、今のロンを見ていたらイライラしてしまって……」

「いいんだ。俺も悪かった。一日でもはやくに戻れるように頑張るよ」

「ええ。私も協力するわ」

「ありがとう」

  私達は仲直りをして、いつものように寝具に入った。
  いつもは、ロンに背を向けて寝ていたが、仲直りの意味を込めて今日はロンの方を向いて寝た。

「アネモネ……?」

「何?」

「……少し恥ずかしい」

「ふふ。私も」

  私が背を向けると。ロンが後ろから抱きしめきた。

  あの……そっちの方が恥ずかしいのですが……と思ったが、またケンカになるのが嫌だったので、そのまま眠った。

  そして……次の日の朝。

「お嬢様おは……いやややあああーーーー!」

  私はアリサの悲鳴を聞き、目を覚ました。

「ア、アリサどう」

  私の声はアリサに遮られた。

「だ、旦那様!  不審者です!  アネモネお嬢様の部屋に不審な男が居ます!」

  アリサは廊下に向かって、そう叫び続けていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

【完結】妻の日記を読んでしまった結果

たちばな立花
恋愛
政略結婚で美しい妻を貰って一年。二人の距離は縮まらない。 そんなとき、アレクトは妻の日記を読んでしまう。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
恋愛
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

処理中です...