かわいがっているネズミが王子様だと知ったとたんに可愛くなくなりました

ねむ太朗

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  今日は、ロイアン様と町に出かける日だ。
  私は動き易くて少しお上品なワンピースと、ネズミのネックレスをつけた。

  ロイアン様は私の屋敷まで迎えに来てくれ、私を見つけるとロイアン様は笑顔を見せてくれた。

  ロイアン様の後ろに居るのは、私の知らない護衛だ。
  今日は護衛の方のみなのだろか?

「あの……デュラン様とサム様は?」

「デートにあの二人を連れて来る訳無いだろう?  ちゃっかり、会話に入ってきそうだ」

  ロイアン様は不機嫌そうにそう言った。

「そう……なのですね」

「デュランとサムに会いたかったのか?」

「会いたいか会いたくないかと聞かれたら、会いたいですね。せっかく、仲良くなったので」

「そうか。行くぞ」

  ロイアン様は不機嫌そうに返事をすると、私の手を引いて馬車の方に歩いて行った。

  アリサはロイアン様が連れて来た、護衛の方と一緒の馬車に乗ったので、馬車の中では二人きりだ。

  しかも、機嫌の悪いロイアン様と……最悪ね。

「ネズミのネックレス似合っている」

「ありがとうございます」

「今度俺がネックレスをプレゼントしたらつけてくれるか?」

「あまり高価な物でなければ……」

「……分かった。いつか、宝石も贈りたい」

「えっと……」

「未来の旦那様に買ってもらうのではないのか?」

  そうだわ。私そんな事を言ったわね。

「うっ……そうでしたね。機会がありましたら」

「これからずっと一緒なんだ。贈る機会などたくさんある」

「……そう、ですね」

  うわあ。気まずい。
  今日はどのタイミングで言おうかしら?
  この雰囲気では、怖くて言えないわ。

  馬車はこじゃれた飲食店についた。

「お待ちしておりました」

  私達は席に案内された。
  
「ロイアン様、約束をしていたお礼ですか?」

「そうだ。味が気に入るといいが」

「ふふ。楽しみです。ありがとうございます」

  コース料理だったようで、次々と食事が運ばれた。

「どうだ?」

「とても美味しいです!」

「良かった」

  ロイアン様は機嫌が戻ったのか、笑顔を見せてくれた。

「アネモネ……どうして敬語なんだ?」

「まだ、なれなくて……」

「少しずつでいいからなおして欲しい」

「が、頑張ります」

  もうすぐ別れる予定だから、敬語を使っていますなんて言えないわ。

  食事の後は、お店を見て回った。
  欲しい物があったら買ってくれると言われたので、全力で断った。

  夕方が近付いて来る頃には、高台に来て王都の町を眺めた。
  ロイアン様が二人で話たいと言ったので、少し離れて見守ってくれている。

「アネモネ……少し座るか?」

「ええ」

  二人でベンチに座ると、ロイアン様が私の手を握ってきた。
  嫌では無かったが、今から婚約を解消したい。と言わなくてはならないかと思うと。少し胸がドキドキしていた。

  きっと私……緊張をしているのね。このドキドキは、きっとそうよ。

「ロイアン様……少しお話があります」

「なんだ?」

「私と無理をして結婚をしなくても大丈夫です。もともと、誰とも結婚をせずに、お気楽、楽々実家生活の予定だったので。少しばかり、不名誉な噂があっても気にしません」

「……婚約を解消したいのか?」

「ええ」

「何故?」

  なんだか、ロイアン様の雰囲気が怖いと思ったが、私は質問に答えた。

「ですから、責任をとって私と結婚をしなくてもいいです。ロイアン様はもう人間の姿に戻れたのですから、好きな女の子と結婚をしたらいいと思います」

「アネモネは、好きな男が二人も三人もいるのか?」

  なんの話だ?  私は好き男など一人もいないわ。初恋もまだよ!

「私の初恋はまだです!  ですから、好きな男性はいません」

「いや、そんなはずは……だったら、どうして俺は……はて?  人間に……いや、俺だけの気持ちで戻れるのか……?」

  ロイアン様は、独り言を言っている。
  独り言が止まると顔を上げた。

「アネモネは……好き男がいないのだな?」

「ええ」

「では、婚約は解消しない」

「えっ」

「しかし、アネモネに好き男が出来たら、話し合いの場を儲けよう。だが、それは婚約期間の間だ。もし、それまでに誰も好きにならなければ、俺と結婚をしてもらう」

「……分かりました」

  うーん。私に好きな男の人なんて出来るのかしら?
  まあ、好き人が出来なければ、サム様あたり偽装恋人でもやってもらいましょう。
  あー、セシルお兄様に怒られそう。

  ロイアン様は、しばらく考え込んだ様子もあったが、機嫌は戻ったようで、帰りは屋敷まで送ってもらった。

  何故かずっと手は繋いだままだった。
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