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「レイラール領では、ゆっくり過ごされたのですか」
「ええ。まあ。のんびり過ごしましたわ」
曲が止まりダンスが終わった。
「ありがとうございました」
「こちらこそ」
「では、兄の所に行きますので……」
「少しお話をしませんか。いつもより元気が無い。何かありましたか? 私でよろしければ話を聞きますが」
うーん。アンドリュー様は意外と優しい人なのかしら?
親切は断りづらいのよね。
「ええ。では、少しだけ聞いていただけますか?」
「ええ、もちろん」
私はアンドリュー様に連れられ庭園に来た。
屋敷の光と月明かりで、そこそこ明るいが、人が誰もいない。
「あの……会場の中でお話しませんか」
「聞かれて困る話もあるかと、配慮したつもりでしたが……戻りますか」
「あっいえ、ここで大丈夫です」
親切でここに連れて来たのなら、仕方ない……わよね。
私達はベンチに座った。
「えっとですね。飼っていたネズミが行方不明で少し落ち込んでいます」
ネズミのロンに会えないと思うと少し寂しい。だから、これは嘘ではないと思う。
「そうだったのですね。とても可愛がっていたのでしょうね」
「ええ、そうなんです。少しわがままだけれども、とても可愛かったんです」
「……そうですか。それは寂しいですね。……私が代わりに慰めて差し上げましょう」
そう言うとアンドリュー様は、私の腕を引いてキスをしようとしてきた。
「嫌、やめて下さい」
私が抵抗をするとアンドリュー様は不機嫌になった。
「こんな人気の無い所についてきて、何が嫌なんだ。アネモネ嬢も少しくらい期待しだろう?」
アンドリュー様は私をベンチに押し倒し、私の手首を掴んで抵抗出来ないようにした。
ゆっくりとアンドリュー様の顔が近付いて来る。
「い、嫌! やめて! ロン助けて!」
嫌だ! こんなやつとしたくない。ロン助けて! ロン!
「アネモネに何をしている」
頭上から、低く相手を威かくするような声が聞こえて来た。
アンドリュー様の拘束が緩み、私はベンチから立ち上がる事が出来た。
助けに来た男に腕を引かれ、私は男に抱きしめられた。
「もう一度聞く。アネモネに何をしようとしていた」
「アネモネ嬢と話をしていたら、盛り上がったのでキスをしようとしただけですよ」
「アネモネは嫌がっていたように見えたが」
「いえ、同意の上です」
男が私を腕の中から開放すると、視界に入ったのはロイアン様だった。
私はロイアン様の顔を見て安心した。
「アネモネ……同意の上なのか?」
私は首を振った。
「だそうだが」
「いえ、こんな所にノコノコとついてきておいて……嫌だと言われましても」
「アンドリュー様は話を聞いてくれると言いました。親切だったので、断りにくかったです。私はここでアンドリュー様とお話以外はするつもりがありませんでした」
「ノコノコついてきておいて、少しはその気があったのだろう? うまくいけば侯爵夫人になれるのだからな」
アンドリュー様は、私の事を見て鼻で笑った。
「アネモネがそんな事をするはず無いだろう。アンドリュー殿と結婚をしなくても、アネモネは侯爵夫人になれるだからな」
「はっ?」
「アネモネは私の婚約者だ。私の婚約者に手を出したんだ。それなりの覚悟あっての事だろう?」
「い、いえ。ロイアン殿下が婚約をしたなど知りませんでした」
「もう殿下ではない。ロイアン・マードックだ。同じ侯爵家同士よろしく頼むよ」
「は、はい! 大変失礼致しました」
アンドリュー様は急に焦り始めた。
「で、この件に関しては後日、メリベーン家に連絡をする」
「承知しました」
ロイアン様は私の腰に手をまわし、歩き始めた。
「ええ。まあ。のんびり過ごしましたわ」
曲が止まりダンスが終わった。
「ありがとうございました」
「こちらこそ」
「では、兄の所に行きますので……」
「少しお話をしませんか。いつもより元気が無い。何かありましたか? 私でよろしければ話を聞きますが」
うーん。アンドリュー様は意外と優しい人なのかしら?
親切は断りづらいのよね。
「ええ。では、少しだけ聞いていただけますか?」
「ええ、もちろん」
私はアンドリュー様に連れられ庭園に来た。
屋敷の光と月明かりで、そこそこ明るいが、人が誰もいない。
「あの……会場の中でお話しませんか」
「聞かれて困る話もあるかと、配慮したつもりでしたが……戻りますか」
「あっいえ、ここで大丈夫です」
親切でここに連れて来たのなら、仕方ない……わよね。
私達はベンチに座った。
「えっとですね。飼っていたネズミが行方不明で少し落ち込んでいます」
ネズミのロンに会えないと思うと少し寂しい。だから、これは嘘ではないと思う。
「そうだったのですね。とても可愛がっていたのでしょうね」
「ええ、そうなんです。少しわがままだけれども、とても可愛かったんです」
「……そうですか。それは寂しいですね。……私が代わりに慰めて差し上げましょう」
そう言うとアンドリュー様は、私の腕を引いてキスをしようとしてきた。
「嫌、やめて下さい」
私が抵抗をするとアンドリュー様は不機嫌になった。
「こんな人気の無い所についてきて、何が嫌なんだ。アネモネ嬢も少しくらい期待しだろう?」
アンドリュー様は私をベンチに押し倒し、私の手首を掴んで抵抗出来ないようにした。
ゆっくりとアンドリュー様の顔が近付いて来る。
「い、嫌! やめて! ロン助けて!」
嫌だ! こんなやつとしたくない。ロン助けて! ロン!
「アネモネに何をしている」
頭上から、低く相手を威かくするような声が聞こえて来た。
アンドリュー様の拘束が緩み、私はベンチから立ち上がる事が出来た。
助けに来た男に腕を引かれ、私は男に抱きしめられた。
「もう一度聞く。アネモネに何をしようとしていた」
「アネモネ嬢と話をしていたら、盛り上がったのでキスをしようとしただけですよ」
「アネモネは嫌がっていたように見えたが」
「いえ、同意の上です」
男が私を腕の中から開放すると、視界に入ったのはロイアン様だった。
私はロイアン様の顔を見て安心した。
「アネモネ……同意の上なのか?」
私は首を振った。
「だそうだが」
「いえ、こんな所にノコノコとついてきておいて……嫌だと言われましても」
「アンドリュー様は話を聞いてくれると言いました。親切だったので、断りにくかったです。私はここでアンドリュー様とお話以外はするつもりがありませんでした」
「ノコノコついてきておいて、少しはその気があったのだろう? うまくいけば侯爵夫人になれるのだからな」
アンドリュー様は、私の事を見て鼻で笑った。
「アネモネがそんな事をするはず無いだろう。アンドリュー殿と結婚をしなくても、アネモネは侯爵夫人になれるだからな」
「はっ?」
「アネモネは私の婚約者だ。私の婚約者に手を出したんだ。それなりの覚悟あっての事だろう?」
「い、いえ。ロイアン殿下が婚約をしたなど知りませんでした」
「もう殿下ではない。ロイアン・マードックだ。同じ侯爵家同士よろしく頼むよ」
「は、はい! 大変失礼致しました」
アンドリュー様は急に焦り始めた。
「で、この件に関しては後日、メリベーン家に連絡をする」
「承知しました」
ロイアン様は私の腰に手をまわし、歩き始めた。
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