稲荷詣で

斐川 帙

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二、一時帰国

(二)

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 帰国した当日は、夕刻だったこともあり、家に帰ると簡単な食事を作って、すぐに寝た。

 翌朝は、五時に目が覚めた。
 時差ボケの影響か、自分自身、信じられないくらいの早起きであった。普段は、これ以上遅れると始業時間に間に合わないと言うぎりぎりの時間まで、布団の中にもぐっていることが常なのだ。
 今日は月曜日だったが、しかし、一時帰国と言うことで休暇扱いだった。特に出かける用事もなく、目を開けたまま、しばらく布団の中で天井を見上げていた。

 芳野は、久しぶりに日本の住み慣れた自分の部屋にいることを再確認していた。渡米前よりも、強い安心感を覚えた。

 アメリカのオフィスで仕事をしていたときのことが思い出されてきた。
 鮮明な陽光の降り注ぐ緑の芝生に囲まれたところに、二階建てだが広いので平べったく見えるオフィスビルがあり、そのビルの二階の一角に芳野の席がある。
 机の上には17インチの液晶ディスプレイの前にキーボードが置かれ、和文、英文混交の設計ドキュメントが山積みになっていて、日本から持ってきた日本語のコンピュータ関連書籍が何冊も目の前に立てかけてある。ディスプレイに映るソースコードをにらみながら、設計ドキュメントと照合して、目星をつけた箇所を修正していく。コンパイル、リンク、テスト実行。ときどき、気分転換も兼ねて、届いたメールに目を通しながら、返事を書いていく。

 その日の仕事に区切りがついたら、車で、近くに会社が借りてくれたアパートに向かう。会社がと言っても直接借りているのはベンチャー企業の方で、多分、賃貸料や光熱費などの経費は後で親会社の商社の方に請求が行く形になっているのだろう。
 また、ここでは、日常生活に車は欠かせないため、レンタカーを常時借りていたが、その代金も同じ形で商社の方に請求が行っていたに違いない。
 ここに来てから、一度、そのベンチャー企業のオフィスを尋ねてみたことがあるが、二階建てのオフィスビルの二部屋程度を占有して従業員も十人ちょっとと言う零細企業のようだったので、我々の面倒を見る余裕などなさそうだったからだ。

 そして、アパートに帰る途中、スーパーに寄って、その日の夕食の食材を買い込む。
 車は、会社が借りてくれたレンタカーで、今の車は二台目になる。中途半端な契約期間で借りたせいで、途中で借り直すことになり、車種が変わって、今は二代目である。
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