稲荷詣で

斐川 帙

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三、伏見稲荷

(十四)

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 権殿を離れた芳野は、左わきにある大きな赤い鳥居をくぐって、なだらかな広い階段を上っていった。そして、玉山稲荷社の前で、右側にある赤い鳥居をくぐって、また、なだらかな階段を上っていった。そして、奥宮に着いた。檜皮葺きの三間社流造である。
 ここから千本鳥居の参道を上って行けば、奥社奉拝所に至り、さらに、そこから稲荷山へ入って行く道がいくつか伸びていた。
 稲荷社ができた最初の頃は、麓の本殿はなくて、参詣者は皆、稲荷山を上って三ヶ峰の上社、中社、下社を参拝していた。それは、今に至っても、変わらない。麓の本殿で参拝を済ませた参詣者の多くが、そのまま、稲荷山に入って行く。芳野が前回訪れた時も、同様に稲荷山を登って三ヶ峰の社を参拝した。当然、今回もそのつもりで奥宮から奥社奉拝所を目指していた。
 奥宮に着くと左わきの『稲荷大神』と大書された扁額がかかる赤い鳥居をくぐって、そこから無数の赤い鳥居が続く参道に入って行く。無数の鳥居は、ほぼ隙間なく連なるので、まるで鮮やかな朱の鳥居でできた隧道を歩くような感覚に陥る。この鳥居の隧道は延々と続き、途中で二本に分かれて、奥社奉拝所まで続く。
 奥社奉拝所に到着する。ここには茶店があったり、お守りが売っていたり、おみくじがひけたり、奥にはおもかる石というものがあったが、早く山に入ろうと思い、これらを素通りして、左手に、また、鳥居の隧道が続いていたので、その中に入り、先を急いだ。この千本鳥居の道は沢沿いに延々と続いていて、周囲は段々と森が深くなり、山中の谷間たにあいを沢の上流に向かって上って行くような感じになっていった。
 更に道を進むと、今度は周囲のそこかしこに無数の赤い鳥居と大小の祠が密集して目立つようになり、その数の多さは異様に感じた。これが「お塚」と呼ばれるものらしいが、そこは、山中の薄暗さと相まって、まるで闇の沼の底に何かの生き物が蝟集するような息づかいをして佇んでいた。
 この辺りになると階段も傾斜がきつくなってきた。
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