稲荷詣で

斐川 帙

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四、二人連れの女性

(三)

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「もし、お待ちください。もしや、稲荷のお社にお向かいならば、われらもご同道させて頂けませんか。」

 今度は間違いなく話しかけられていると確信して、振り返った。恐怖心を覚える前に体が動いていた。
 そこには、十二、三と見える少女と二十代半ばを思わせる若い女性が連れ立って立っていた。
 二十代半ばと思える女性は市女笠を被り、むしの垂れぎぬで顔を隠した壺装束つぼしょうぞくである。藤の重ねのうちきの裾から山吹の重ねのひとえが覗いている。肩から胸にかけて緋色の懸帯かけおびがかかり、胸元には萌黄色の懸守かけまもりが提げれているのがうっすら見える。素足に緒太おぶとの草履を履いて着物を少し端折っていたので足元はくるぶしの辺りまで肌が露わになっていた。一方、十二、三と見える少女の方は、同じく壺装束に頭からうちきかぶ衣被きぬかづきであった。紅梅の重ねの被衣かずきをかぶり、柳の重ねの袿の下に桜の重ねの単であった。足元も、同様に素足に緒太の草履であった。
 これらの服装は平安中期以降のものと思われるが、芳野には、そこまではわからず、着物のようだが、普段、見る着物とは大分、雰囲気の異なる美麗な装いで、物珍しさも手伝って、しばらく二人の服装を凝視していた。そのうち、どこかで見たような格好だと思っていたが、古典の授業で見た平安時代の女性の姿にそっくりなことに気づき、あっと声を上げた。しかし、何で平安時代の服装で参拝しているのだろうと不思議に思った。コスプレだろうか?源氏物語とかが好きな女性同士が当時の格好をして参拝をしているのだろうか。それにしては二人は年が離れているように見えるし友人同士には見えない。
 少女のほうが、芳野が自分たちをじっと眺めながら一言も発しないのに訝しく思ったか、「いかが、なされましたか。怪しい者ではございませんので、どうぞ、ご安心ください。」と、被衣の片側で顔の下半分を隠しながら、話しかけてきた。
 十二、三の中学生くらいの女の子にしては、しっかりした物言いだったが、服装と相まって少し仰々しい言い方に、源氏物語マニアにしては、凝り方が過剰な人たちだと感じた。
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