稲荷詣で

斐川 帙

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四、二人連れの女性

(九)

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 三人が飲み干したのを確認した芳野は、「じゃあ、行きますか。」と出発を促すと、妹が先に立ち、そのあとに姉が続いた。右の道は、階段が続く細い参道で、鳥居の連なる中を、稲荷山の峰に向かって上って行った。
 暫く上ると、参道の左側に大小の石造りの鳥居や赤い鳥居、祠が密集するところが出現し、その先に『三ノ峰 下ノ社』と書かれた扁額がかかる社が現れた。大小の祠は『お塚』と呼ばれるものだろう。反対側には茶店があった。社の入り口には『下社神蹟しんせき』と書かれた立札が立っており、そこを読むと、「下社神蹟とは稲荷山の七神蹟の一つで白菊大神しらぎくおおかみとなえられている。」と書かれている。となると、下社も入れて神蹟は七つあり、そのうち三つが三ヶ峰にある上・中・下の社、その他に四つあるということかと芳野は解釈した。この三ノ峰の次は間ノ峰あいのみねを通る予定なので、恐らく、そこにも七神蹟の一つがあるのだろう。とすると、一ノ峰を過ぎた先に残り三つの神蹟があるということだ。しかし、一ノ峰の先は谷に降ったあとの上り返しがある。
 『七神蹟』という言葉を見た途端、七つすべてを回ってみたいという欲求に駆られたものの、やはり、彼女等二人を見ると、今回は三ヶ峰だけでやめておこうと思った。三つ辻までで既に息が切れていた二人であるから、七神蹟全てを巡るのは酷だろう。
 ちなみに、実際のところ、七神蹟のうち六つまでは三ヶ峰を巡る途上に存在するが、残り一つだけ、荒神峰こうじんみねにあるので、全て巡るには四つ辻で一旦、荒神峰に向かわないといけない。また、七神蹟が確立されたのは明治時代とのことで、稲荷社創建時からあったわけではなく、比較的新しい時代に設定されたものだ。芳野はそこまでは知らなかったが、既に決めていた、一ノ峰まで行って引き返す方針は、変えなかった。
 「下ノ社に着きましたよ。」と振り返って、後ろの二人に声をかけた。二人はにっこりと笑顔になったように見えた。
 「ようやく、着きましたのね。」と姉が息の上がった声で辛うじて言葉を発すると、そこまでは息の上がっていない妹が「こちらをご参拝されれば、残りは二峰でございます。」と応じた。
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