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四、二人連れの女性
(八)
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「右の道に入った方が早く参拝できそうですよ。」
芳野は、そう、姉に声をかけた。
姉は傍らに控える妹に視線を投げかけた。妹は、被衣を少し上げながら、
「では、そちらから参りましょう。」と答えた。芳野は、それを聞くと四つ辻まで戻って右の道に進路を取った。すると、妹から「お待ちを。」と声をかけられた。そして、「お喉はお渇きになっておりませんか?」と尋ねられた。芳野は、別に渇いていなかったので、「大丈夫ですよ。」と無思慮に答えてしまった。妹は黙っていた。何か意味がありそうな沈黙に思えたが、芳野は気にせず、先に進もうとしたが、妹は動く気配はなかった。顔を覆う薄絹を通して、姉が妹をじっと見ているのがうっすらと窺えた。
芳野は、そこで、やっと気づいて、「お茶でも飲みますか?」と声をかけると、妹の表情が明るくなるのがわかった。逆に姉の方は薄絹越しだが、妹を見る視線が険しくなったような気がした。
近くの茶店に入って、長椅子に三人並んで腰を下ろした。メニューを見ると抹茶があったので、それを三人分注文した。暫くして運ばれてきたのは、グラスに氷が入った抹茶だった。その抹茶を妹は袖で口元を隠しながら飲み、姉は枲の垂れ衣の中でやはり袖で口元を隠しながらグラスを口にした。
芳野は、そう、姉に声をかけた。
姉は傍らに控える妹に視線を投げかけた。妹は、被衣を少し上げながら、
「では、そちらから参りましょう。」と答えた。芳野は、それを聞くと四つ辻まで戻って右の道に進路を取った。すると、妹から「お待ちを。」と声をかけられた。そして、「お喉はお渇きになっておりませんか?」と尋ねられた。芳野は、別に渇いていなかったので、「大丈夫ですよ。」と無思慮に答えてしまった。妹は黙っていた。何か意味がありそうな沈黙に思えたが、芳野は気にせず、先に進もうとしたが、妹は動く気配はなかった。顔を覆う薄絹を通して、姉が妹をじっと見ているのがうっすらと窺えた。
芳野は、そこで、やっと気づいて、「お茶でも飲みますか?」と声をかけると、妹の表情が明るくなるのがわかった。逆に姉の方は薄絹越しだが、妹を見る視線が険しくなったような気がした。
近くの茶店に入って、長椅子に三人並んで腰を下ろした。メニューを見ると抹茶があったので、それを三人分注文した。暫くして運ばれてきたのは、グラスに氷が入った抹茶だった。その抹茶を妹は袖で口元を隠しながら飲み、姉は枲の垂れ衣の中でやはり袖で口元を隠しながらグラスを口にした。
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