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七、三条烏丸の御所
(十一)
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あさつゆとあきおぎの二人を三条烏丸殿に無事送り届けると、元来た道を戻り、駿河守邸に戻った。西中門で修理の出迎えを受けて、寝殿に向かうように言われ、到着すると駿河守が待っていた。すぐに南庇の中央の辺りに腰を下ろして会釈した。
「どうであった?無事であったか?」
「はい。何事もなく、無事に御所に到着いたしました。」
「まあ、そうであろうな。ご苦労であった。」
駿河守は、さも結果はわかりきっていたと言わんばかりに言うと、芳野は修理に促されて、部屋に帰った。
部屋に戻ってから、暫くすると八重が朝食を運んできたので、それを食して、食事が終わると、八重に片づけてもらった。そして、しばらく微睡んでいると、退屈してきたので、思い切って部屋から出て屋敷の中を歩いてみようと思い立った。
部屋から出てみると、珍しく八重がいなかった。ちょっと解放された気分になって、北の対の西面に付帯する簀子に出てみた。この簀子は南に向かっていて、寝殿北面に当たると左に折れて、寝殿と西の対を結ぶ渡殿に当たると鍵状に折れて西の対の北面を西に進む形になっていた。寝殿と西の対を結ぶ渡殿は幅二間であったが、北に一間分ずれていて、それで寝殿北面を進む簀子は、北に一間はみ出している渡殿に当たる格好になっていた。
寝殿北面から西の対へと続く簀子の外には庭木が植えられていて、今は冬なので葉は落ちていたが、彩羽椛が数本、苔むした岩の散在する中に生えていた。
芳野は、北の対から簀子に出て南に進むと、寝殿北面に至ったところで、妻戸から出てきた修理と鉢合わせになった。修理は驚いた顔をして、「どちらに行かれるのですか?」と尋ねてきたので、芳野は、思い切って、「時間を持て余してきたので、屋敷の外を歩いてみようかと思って。」と告げると、目を丸くして、「いや、それはお控えください。おひとりで出歩くのは、危ないです。」と諫められた。
芳野は思わず、「どうしてですか?」と聞き返してしまった。
治安が悪いのだろうかと思ったのだが、修理の答えは少々違っていた。
「洛中の地理に通じておられればよろしいのですが、そうでなければ、きっと道に迷われると思います。もし、お出かけになるのであれば、侍所の者をつけますので、お申し付けください。また、駿河守様にも一言申し上げておかねばならないので、断りなく、市中にお出かけになられるのはお控えいただけるとありがたいです。」
「そうですか、すいません。」
芳野は平謝りすると、改めて、「外出したいので、誰か、案内していただける人をつけていただけると嬉しいのですが。」と丁寧に依頼した。
「承知いたしました。こちらでお待ちください。駿河守様に一言申し上げてから人を見繕いますので。」
そう言って修理は妻戸から寝殿の中に入ると、暫くして、同じ妻戸から出て来て、「こちらへ。」と元来た方向に戻り、北の対と寝殿を結ぶ廊を抜けて反対側の簀子に出ると、南行して反り橋を渡り二棟廊の簀子に到着した。庭先には既に、一人、折烏帽子を被った水干姿に括袴の男が立っていた。草履を履いている。年のころは三十代であろうか。太刀を下げていた。
芳野が簀子から下に置いてあった台に下りて、用意されていた靴に足を通すと、修理が「この者が洛中を案内いたします。」と男を紹介した。芳野は軽く会釈すると、歩き始めた男の後を付いて屋敷の外に出た。
「どうであった?無事であったか?」
「はい。何事もなく、無事に御所に到着いたしました。」
「まあ、そうであろうな。ご苦労であった。」
駿河守は、さも結果はわかりきっていたと言わんばかりに言うと、芳野は修理に促されて、部屋に帰った。
部屋に戻ってから、暫くすると八重が朝食を運んできたので、それを食して、食事が終わると、八重に片づけてもらった。そして、しばらく微睡んでいると、退屈してきたので、思い切って部屋から出て屋敷の中を歩いてみようと思い立った。
部屋から出てみると、珍しく八重がいなかった。ちょっと解放された気分になって、北の対の西面に付帯する簀子に出てみた。この簀子は南に向かっていて、寝殿北面に当たると左に折れて、寝殿と西の対を結ぶ渡殿に当たると鍵状に折れて西の対の北面を西に進む形になっていた。寝殿と西の対を結ぶ渡殿は幅二間であったが、北に一間分ずれていて、それで寝殿北面を進む簀子は、北に一間はみ出している渡殿に当たる格好になっていた。
寝殿北面から西の対へと続く簀子の外には庭木が植えられていて、今は冬なので葉は落ちていたが、彩羽椛が数本、苔むした岩の散在する中に生えていた。
芳野は、北の対から簀子に出て南に進むと、寝殿北面に至ったところで、妻戸から出てきた修理と鉢合わせになった。修理は驚いた顔をして、「どちらに行かれるのですか?」と尋ねてきたので、芳野は、思い切って、「時間を持て余してきたので、屋敷の外を歩いてみようかと思って。」と告げると、目を丸くして、「いや、それはお控えください。おひとりで出歩くのは、危ないです。」と諫められた。
芳野は思わず、「どうしてですか?」と聞き返してしまった。
治安が悪いのだろうかと思ったのだが、修理の答えは少々違っていた。
「洛中の地理に通じておられればよろしいのですが、そうでなければ、きっと道に迷われると思います。もし、お出かけになるのであれば、侍所の者をつけますので、お申し付けください。また、駿河守様にも一言申し上げておかねばならないので、断りなく、市中にお出かけになられるのはお控えいただけるとありがたいです。」
「そうですか、すいません。」
芳野は平謝りすると、改めて、「外出したいので、誰か、案内していただける人をつけていただけると嬉しいのですが。」と丁寧に依頼した。
「承知いたしました。こちらでお待ちください。駿河守様に一言申し上げてから人を見繕いますので。」
そう言って修理は妻戸から寝殿の中に入ると、暫くして、同じ妻戸から出て来て、「こちらへ。」と元来た方向に戻り、北の対と寝殿を結ぶ廊を抜けて反対側の簀子に出ると、南行して反り橋を渡り二棟廊の簀子に到着した。庭先には既に、一人、折烏帽子を被った水干姿に括袴の男が立っていた。草履を履いている。年のころは三十代であろうか。太刀を下げていた。
芳野が簀子から下に置いてあった台に下りて、用意されていた靴に足を通すと、修理が「この者が洛中を案内いたします。」と男を紹介した。芳野は軽く会釈すると、歩き始めた男の後を付いて屋敷の外に出た。
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