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七、三条烏丸の御所
(十三)
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門を入るとすぐに建物が見えた。板葺きの一棟の館であった。高欄のない簀子が見えた。館の正面は、格子は外され半蔀が上に吊り上げられていたので内部が見えていた。人はいなかった。
男は簀子に腰を掛けると、中に向かって、「誰かいるか?」と叫んだ。すると、庭の裏の方から、萎烏帽子を被り、粗末な直垂に小袴、脛巾を履いて、足には草履の男が慌てて出てきた。四十代くらいに見える中高年の男であった。
「何かあったんですか?こんな早くにお戻りになられるとは?」
「いや、客人を連れてきた。」
水干の男は、そう言って、佩いていた太刀を外して、直垂の男に手渡すと、直垂の男は、怪訝そうに芳野を眺めながら、水干の男に向かって、
「今日は、宿直と伺っていたのですが、なくなったのですか?」
「いや、今夜の宿直は変わらない。修理殿から、この方の都見物の供をせよと言われたのだが、行く当てがなくて、困った末に、当家にお招きすることにした。数刻、お相手したら、また、猪隈のお屋敷に戻る。」
「はい、承知いたしました。」
「菓子はあるか?」
「干し柿が残っております。」
「じゃあ、それを出してくれ。」
「承知いたしました。」
直垂の男は、水干の男から受け取った太刀を抱えて、また、館の裏へと消えて行った。
水干の男は、草履を脱ぐと、簀子の下に設けられていた台を踏んで、簀子に上がった。簀子が高い位置にあったので、上がりやすくするために台を置いていたみたいだった。
「どうぞ、お上がりください。」と言われたので、芳野も台から簀子に上がった。この屋敷は母屋だけで庇の間はなかった。奥行二間の幅三間のこじんまりした屋敷だった。
水干の男と芳野が簀子に上がったところで、奥から小袖に腰布を巻いた女性が現れ、母屋の中央に円座を二つ置いて、奥に戻って行った。そして、暫くすると、平折敷に、干し柿が数個盛られた皿を乗せたのを手にして戻って来ると、二つの円座の間に置いて、再び、奥に消えていった。
「どうぞ、そちらへ。」と水干の男は円座の上に腰を下ろしながら、芳野にも円座の上に座るよう促したので、芳野も腰を下ろした。そして、男は、平折敷の上の干し柿を一つ手に取って、芳野に勧めると、自分も手に取って頬張った。
「今年の干し柿は、去年と比べるとね、ちょっと甘味は足りないかもしれないが、例年に比べれば、十分な甘さなんで、おいしいと思いますよ。」
しかし、芳野の舌にはかなり薄味に思えた。ほんのり甘さを感じる程度のものであった。
「上品な甘さですね。」
水干の男は、『上品な甘さ』という言葉をいい意味に誤解したのか、意を得たようににんまりとした。
男は簀子に腰を掛けると、中に向かって、「誰かいるか?」と叫んだ。すると、庭の裏の方から、萎烏帽子を被り、粗末な直垂に小袴、脛巾を履いて、足には草履の男が慌てて出てきた。四十代くらいに見える中高年の男であった。
「何かあったんですか?こんな早くにお戻りになられるとは?」
「いや、客人を連れてきた。」
水干の男は、そう言って、佩いていた太刀を外して、直垂の男に手渡すと、直垂の男は、怪訝そうに芳野を眺めながら、水干の男に向かって、
「今日は、宿直と伺っていたのですが、なくなったのですか?」
「いや、今夜の宿直は変わらない。修理殿から、この方の都見物の供をせよと言われたのだが、行く当てがなくて、困った末に、当家にお招きすることにした。数刻、お相手したら、また、猪隈のお屋敷に戻る。」
「はい、承知いたしました。」
「菓子はあるか?」
「干し柿が残っております。」
「じゃあ、それを出してくれ。」
「承知いたしました。」
直垂の男は、水干の男から受け取った太刀を抱えて、また、館の裏へと消えて行った。
水干の男は、草履を脱ぐと、簀子の下に設けられていた台を踏んで、簀子に上がった。簀子が高い位置にあったので、上がりやすくするために台を置いていたみたいだった。
「どうぞ、お上がりください。」と言われたので、芳野も台から簀子に上がった。この屋敷は母屋だけで庇の間はなかった。奥行二間の幅三間のこじんまりした屋敷だった。
水干の男と芳野が簀子に上がったところで、奥から小袖に腰布を巻いた女性が現れ、母屋の中央に円座を二つ置いて、奥に戻って行った。そして、暫くすると、平折敷に、干し柿が数個盛られた皿を乗せたのを手にして戻って来ると、二つの円座の間に置いて、再び、奥に消えていった。
「どうぞ、そちらへ。」と水干の男は円座の上に腰を下ろしながら、芳野にも円座の上に座るよう促したので、芳野も腰を下ろした。そして、男は、平折敷の上の干し柿を一つ手に取って、芳野に勧めると、自分も手に取って頬張った。
「今年の干し柿は、去年と比べるとね、ちょっと甘味は足りないかもしれないが、例年に比べれば、十分な甘さなんで、おいしいと思いますよ。」
しかし、芳野の舌にはかなり薄味に思えた。ほんのり甘さを感じる程度のものであった。
「上品な甘さですね。」
水干の男は、『上品な甘さ』という言葉をいい意味に誤解したのか、意を得たようににんまりとした。
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