121 / 155
七、三条烏丸の御所
(二十)
しおりを挟む
年中行事絵巻(住吉本)の巻九には祇園御霊会の様子が描かれている。これを見ると、実際の祇園御霊会の様子がどういうものか想像する手掛かりになる。内容はこのようなものだ。
まず、築地塀の門前において乱舞する田楽の一団である。編木を弧を描くように翳して鳴らす人、腰に付けた太鼓を撥で鳴らす人、横笛を吹く人などがいる。中には空中に鼓を放り投げて曲芸のようなことをしている人もいる。そして、門前には御霊会の祭列を見ようと多くの人々が集まっている。当時も、貴族の屋敷に仕えている人々は、門前に出て来て、祭列を見物していたのであろう。
次に四人の乗尻が続く。乗尻とは、騎乗して行列の尻につき、供奉する者のことを指すが、ここでは先駆け役として供奉している。乗尻の中には暴れ馬に乗馬して振り落とされそうになっている者もいる。
円形の大幣を担ぐ童が歩き、幣をつけた榊の枝を持つ童が多数、歩いている。幣をつけた榊を持つ童は、ここだけでなく、他の場所でも出て来る。
大きな風流傘を翳された巫女や市女笠を被った巫女が馬に乗って過ぎる。巫女は扇などで顔を隠している。
楽人が演奏し、散手を舞い、邪気を払う獅子舞が続く。散手とは、一人で舞う武の舞で、舞人は、裲襠を着て、竜甲を被り,面をつけて,鉾を手に持って舞う。
鉾を持つ者が四人歩いている。これは四神(東の青龍、西の白虎、南の朱雀、北の玄武)が守護していることを表象している。
その後に、御旅所から祇園社へ還幸する三基の神輿が続く。神輿は四人で担ぎ、また、鈴や総のついた引綱が神輿についていて、それを僧や神人、童が引いている。神輿が三基続いているので、三基が合流して練り歩く、三条大路の様子が描かれているのだろう。
藺笠を被った騎馬の田楽が太鼓をのけぞりながら鳴らしている。鼓を打ち、横笛を吹き、編木を鳴らしている。
ここで川が流れ、橋がかかっていて、そこを騎馬の神官たちが渡ろうとしている。これが祭列の最後尾になる。川は堀川であろうか。そうだとすると、三条堀河の辺りと言うことになる。
沿道には多くの見物人がいる。牛車も停車している。然るべき身分の者が、この牛車の中から見物しているのだろう。
当時の祇園御霊会では、現代の祇園祭と違って、山鉾の巡幸はなかった。当時は神輿の巡幸が祭礼の中心行事であった。
ちなみに、祇園御霊会と似た祭礼が、三月から四月にかけてもあった。稲荷祭である。
稲荷祭でも、御旅所は、洛中の二か所にあった。八条坊門猪隈と七条油小路の二か所である。そして室町末期に七条油小路の御旅所は八条坊門の御旅所に合祀され、天正年間に至って豊臣秀吉によって、西九条油小路に移された。これが今の御旅所である。
稲荷祭では神輿は五基あり、三月の中午の日に、稲荷社から、この二か所の御旅所に分かれて神幸し、二十日間滞在したのち、四月の上卯の日に、七条大路を通って稲荷社に還幸した。
この様子は、年中行事絵巻(住吉本)の巻十二に描かれている。
稲荷祭もまた、祇園御霊会に勝るとも劣らない殷賑を極めた祭礼であった。
まず、築地塀の門前において乱舞する田楽の一団である。編木を弧を描くように翳して鳴らす人、腰に付けた太鼓を撥で鳴らす人、横笛を吹く人などがいる。中には空中に鼓を放り投げて曲芸のようなことをしている人もいる。そして、門前には御霊会の祭列を見ようと多くの人々が集まっている。当時も、貴族の屋敷に仕えている人々は、門前に出て来て、祭列を見物していたのであろう。
次に四人の乗尻が続く。乗尻とは、騎乗して行列の尻につき、供奉する者のことを指すが、ここでは先駆け役として供奉している。乗尻の中には暴れ馬に乗馬して振り落とされそうになっている者もいる。
円形の大幣を担ぐ童が歩き、幣をつけた榊の枝を持つ童が多数、歩いている。幣をつけた榊を持つ童は、ここだけでなく、他の場所でも出て来る。
大きな風流傘を翳された巫女や市女笠を被った巫女が馬に乗って過ぎる。巫女は扇などで顔を隠している。
楽人が演奏し、散手を舞い、邪気を払う獅子舞が続く。散手とは、一人で舞う武の舞で、舞人は、裲襠を着て、竜甲を被り,面をつけて,鉾を手に持って舞う。
鉾を持つ者が四人歩いている。これは四神(東の青龍、西の白虎、南の朱雀、北の玄武)が守護していることを表象している。
その後に、御旅所から祇園社へ還幸する三基の神輿が続く。神輿は四人で担ぎ、また、鈴や総のついた引綱が神輿についていて、それを僧や神人、童が引いている。神輿が三基続いているので、三基が合流して練り歩く、三条大路の様子が描かれているのだろう。
藺笠を被った騎馬の田楽が太鼓をのけぞりながら鳴らしている。鼓を打ち、横笛を吹き、編木を鳴らしている。
ここで川が流れ、橋がかかっていて、そこを騎馬の神官たちが渡ろうとしている。これが祭列の最後尾になる。川は堀川であろうか。そうだとすると、三条堀河の辺りと言うことになる。
沿道には多くの見物人がいる。牛車も停車している。然るべき身分の者が、この牛車の中から見物しているのだろう。
当時の祇園御霊会では、現代の祇園祭と違って、山鉾の巡幸はなかった。当時は神輿の巡幸が祭礼の中心行事であった。
ちなみに、祇園御霊会と似た祭礼が、三月から四月にかけてもあった。稲荷祭である。
稲荷祭でも、御旅所は、洛中の二か所にあった。八条坊門猪隈と七条油小路の二か所である。そして室町末期に七条油小路の御旅所は八条坊門の御旅所に合祀され、天正年間に至って豊臣秀吉によって、西九条油小路に移された。これが今の御旅所である。
稲荷祭では神輿は五基あり、三月の中午の日に、稲荷社から、この二か所の御旅所に分かれて神幸し、二十日間滞在したのち、四月の上卯の日に、七条大路を通って稲荷社に還幸した。
この様子は、年中行事絵巻(住吉本)の巻十二に描かれている。
稲荷祭もまた、祇園御霊会に勝るとも劣らない殷賑を極めた祭礼であった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる