稲荷詣で

斐川 帙

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七、三条烏丸の御所

(二十五)

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 修理は、「供の者たちです。」と、庭先に控える四人を紹介した。
 しかし、芳野は、紹介されても、次にどうすればいいかわからず、座ったままでいると、修理に庭先に下りるよう促された。そして、「今回は危険な道中ですので、こちらをお持ちください。」と言って、太刀と革緒かわおを手渡された。太刀は、細身のわりにどっしりと重量のあるもので、手にしたときにずしりと重みを感じて、ぴりっとした緊張感を覚えた。革緒は、革製の細いベルトである。
 太刀と革緒を手に持って、簀子に座ると、台の上には芳野の靴が置かれていて、芳野は、靴を履くと、振り返って、
「このまま、この方たちの後について行けば、よろしいんですか?」と確認した。
 修理は、「はい、よろしくお願いします。」と答えると、水干の男に、「では、頼みます。」と声をかけて、二棟廊の奥に消えて行った。
 水干の男は、去って行く修理を見送りながら、「行ってまいります。」と言って、二頭の馬を引いている口取りの男の方に向かおうとしたが、まだ、太刀と革緒を手に持っている芳野を見つけて、立ち止まり、「手伝いましょうか?」と声をかけてきた。
 芳野は、何を手伝おうと言っているのかわからず、きょとんとしていると、水干の男は、直垂の男に目配せし、目配せされた男は、長刀を簀子に立てかけて、芳野の傍に来て、革緒を受け取ると芳野の腰に巻き、太刀を手に取って、さや帯取おびとりに革緒から下がっている佩緒はきおを結んで、芳野に太刀を佩かせた。そう言うことだったのかと芳野はようやく理解したが、子供が親に世話されているような感じがして、少々、気恥ずかしかった。

 左側に太刀を佩用はいようしたので、芳野は、体の左側が急に重くなった気がした。

 芳野に太刀を佩かせると、男は、簀子に立てかけた長刀を手に取り、一方、水干の男は、口取りの男が引いている二頭の馬から一頭を引き取って跨り、東門に向かって馬を進めた。すると、残りの二人の武者も続いて東門に向かって歩き始め、口取りの男も残された一頭を引いて、彼らに続いた。
 そして、彼らは駿河守邸の東門から堀河小路に出た。芳野も後を追って、東門から外へ出た。

 東門から出ても、口取りの男は、その馬に乗る気配はなく、そのまま馬を引いて目的地に向かう感じに見えたので、その男がただの口取りの男であることを知らなかった芳野は不審に思って、
「馬には乗らないのですか?」と男に尋ねると、
「いや、これは姫君を乗せて連れ帰るためのもので、我々の乗用ではありません。」とすげない返答が返って来た。
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