9 / 75
一、愛宕山の白い猫
日曜日、かねての約束通り、愛宕山を訪れ、たぎつ姫と短いデートを楽しんだこと (1)
しおりを挟む
愛宕山と言うのは、何でも、江戸湾際の低地に突然そびえる独立した小山で、何で、ここにこんな山塊があるのか、謎なんだそうだ。江戸城の堀を掘ったときの残土でできた山だとか言う説もかってはあったらしい。(今では自然にできた山であることが地質学的に証明されているそうだが)
高さは、京都の愛宕山が九二四メートルあるのに比して、たった二六メートルの小さな山だが、正面の石段は非常に急峻で登るのは疲れるし、降りるのは足を踏み外しそうで怖い。この小山への登り口は、正面の男坂、脇の女坂、他に神社裏から入る道がある。このうち、神社裏から入る道は、車が通れるくらいの坂道で、入り口には愛宕山参道というアーチがかかっている。その他にも、NHK放送博物館脇に出る野外のエレベータがあり、合計4つのルートがあることになる。俺が普段使っているのは、NHK放送博物館脇に出るエレベータか、愛宕山参道の緩やかな坂道のいずれかだ。で、その日は、愛宕山参道をてくてくと上って、実は、この参道には、途中で細い脇道があって、それを通ると、虎ノ門方面への近道にもなっているが、その道から参道の上り坂に入って、ある有名ソムリエの経営しているチーズとワインの店の前を通って、愛宕神社の脇から境内に入ったわけだ。境内に入ると、いつもの習慣で、手水舎で両手を清めていたところを、背後から聞き覚えのある女性の声で、呼びかけられて、振り返ると、彼女だったわけだ。彼女は、嬉しそうに俺の背後に立っていて、俺は、ひしゃくで左手に水をかけながら、彼女に振り向くと、「来たよ。」とだけ、言葉を発した。彼女も短く「待ってた。」とだけ答えた。なんか、その短い受け答えだけで、楽しくなってきたね。俺も、内心、相当嬉しかったのかもしれない。やっぱり、彼女、不思議な魅力があるよ。
それで、二人で連れ立って、デートとなるわけだけど、俺、全く何のプランも用意していなかったから、会って次の瞬間、さて、どうしようかということになったわけ。でも、彼女は、人の心を読む術に長けているから、すぐに察して、この近くを散歩するだけでいいわなんて言うわけ。それだけで楽しいのかどうか疑問だったけど、彼女がそう言うのだから、他にプランのない俺は、彼女の助け船に乗っかったわけだ。
そう、彼女の服装は、白いワンピースに黒のふんわりしたコートを羽織って、実に清楚で優雅だったな。長い黒髪を後ろで束ねて、前に垂らしていた。髪型が巫女の髪型に似ていなくもなかったけど。
高さは、京都の愛宕山が九二四メートルあるのに比して、たった二六メートルの小さな山だが、正面の石段は非常に急峻で登るのは疲れるし、降りるのは足を踏み外しそうで怖い。この小山への登り口は、正面の男坂、脇の女坂、他に神社裏から入る道がある。このうち、神社裏から入る道は、車が通れるくらいの坂道で、入り口には愛宕山参道というアーチがかかっている。その他にも、NHK放送博物館脇に出る野外のエレベータがあり、合計4つのルートがあることになる。俺が普段使っているのは、NHK放送博物館脇に出るエレベータか、愛宕山参道の緩やかな坂道のいずれかだ。で、その日は、愛宕山参道をてくてくと上って、実は、この参道には、途中で細い脇道があって、それを通ると、虎ノ門方面への近道にもなっているが、その道から参道の上り坂に入って、ある有名ソムリエの経営しているチーズとワインの店の前を通って、愛宕神社の脇から境内に入ったわけだ。境内に入ると、いつもの習慣で、手水舎で両手を清めていたところを、背後から聞き覚えのある女性の声で、呼びかけられて、振り返ると、彼女だったわけだ。彼女は、嬉しそうに俺の背後に立っていて、俺は、ひしゃくで左手に水をかけながら、彼女に振り向くと、「来たよ。」とだけ、言葉を発した。彼女も短く「待ってた。」とだけ答えた。なんか、その短い受け答えだけで、楽しくなってきたね。俺も、内心、相当嬉しかったのかもしれない。やっぱり、彼女、不思議な魅力があるよ。
それで、二人で連れ立って、デートとなるわけだけど、俺、全く何のプランも用意していなかったから、会って次の瞬間、さて、どうしようかということになったわけ。でも、彼女は、人の心を読む術に長けているから、すぐに察して、この近くを散歩するだけでいいわなんて言うわけ。それだけで楽しいのかどうか疑問だったけど、彼女がそう言うのだから、他にプランのない俺は、彼女の助け船に乗っかったわけだ。
そう、彼女の服装は、白いワンピースに黒のふんわりしたコートを羽織って、実に清楚で優雅だったな。長い黒髪を後ろで束ねて、前に垂らしていた。髪型が巫女の髪型に似ていなくもなかったけど。
0
あなたにおすすめの小説
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる