天孫降臨

斐川 帙

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一、愛宕山の白い猫

たあちゃんと一夜をともにしたが・・・ということ (1)

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 部屋は四十階建ての三十五階にあった。周囲には愛宕山、ライトアップされた東京タワー、遠くにはお台場にレインボーブリッジが見える、なんとも女の喜びそうな夜景がこれでもかというくらい窓外に展開する部屋。普通の女性なら、これだけでテンションあがりまくりで、その後の二人の進展も、スムーズに行きそうなものだが、たあちゃんは違った。たあちゃんは、窓の外を見て、「あれは何?あそこには何があるの?」と矢継ぎ早の質問で、まるで幼い子供のように目を輝かせて夜景に見える建造物を聞きまくる。「いいムード」とはほど遠い、けれど楽しい雰囲気が部屋に流れた。
 窓ガラスに目をくっつけんばかりに顔を近づけて夜景の隅々を見て回るたあちゃんの傍らに寄り添って、肩を抱き引き寄せるとたあちゃんは驚いた風を見せて、俺の横顔を見ている。ちょっと、びびった俺。恐る恐る彼女の目を見ると、「本当にいいの?」と、また、聞いてくる。さすがに、なんかあるのかなと不安になった俺は「なにか、まずいことでもあるの?」と聞き返すが、彼女は何も答えない。そういえば、以前、彼女は「大変な事になるかも知れない。」と言っていた。「大変な事になるって事?」と聞くと、彼女は「そうなるかもしれないけど、本当にそうなるかはわからないから、でも、そうならないとも言えないし。」と煮え切らない。そして、彼女は、こう付け加えた。
「でも、それでも、私を抱きたいなら、そうしなさいよ。抱きたいんでしょ、私の事?」
 何か、突き放したものの言い方だ。気持ちが引いていくのがわかった。
「まあ、それほどでもないんだけど。」とトーンダウンすると、たあちゃんは逆に積極的に俺を誘い始めた。
「何よ、それ。抱きなさいよ。そのために来たんでしょ?私は女神ひめかみよ。女神と添い臥すことのできる男なんて、有史以来、そういないんだから、それを断る気?あり得ない。」
 そう言って、たあちゃんは俺に顔を近づけて、返答を迫る。刑事に取り調べを受けているみたいだ。
「私ね、あなたのこと、好きなの。わかる?だから、あなたは私の神意を受けなければ行けないのよ。私は神なの。そして、あなたは私の参拝者。あなたは私に拝礼して私の神意を受ける。私を参拝してるのだから、私の神意を受けるのは本望でしょ?だからね、ここまで来ておいて逃げる事は出来ないの。だから私を抱きなさい。わかった?」
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