天孫降臨

斐川 帙

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二、アイル橋のたもと

越前、敦賀までの道行き (4)

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 昨日は、金沢について、すぐにはホテルに行かず、金沢城、兼六園を見て回った。そして、近江町市場をぶらっと散策して、加賀野菜と呼ばれるこの地特有の野菜を見て回った。
 今日は、白山比咩神社しらやまひめじんじゃに参拝した。この神社は、白山信仰はくさんしんこうの神社で白山山頂に奥宮があり、麓に本宮があった。本宮は金沢から北陸鉄道で終点加賀一宮駅で降りる。俺となぎは、本宮に参拝した。さすがに白山山頂までは行けない。白山は海抜二七〇〇メートル、山頂の奥宮まで参拝するとなると、もう、登山である。それなりの準備をしていかないと危険だが、そんな用意はしていない。
 なぎは、境内の隅にある奥宮遙拝所の前に立って、遠く、白山の方を眺めていた。礼拝はしないみたいだ。俺は、隣で、なぎを見ていたが、結局、何もせず、そこを立ち去った。拝殿の前を素通りして、駅に戻っていった。駅の裏側は、すぐ、手取川てどりがわの渓谷になっていて、山並みからの雪解け水が川の流れを作っていた。
 列車の本数が少ないので、後、三十分ほど待たないと、列車が来ない。駅の待合室に入って、木製の硬いベンチに腰を下ろし、列車が来るのを待った。
「私、お父さんと結ばれたい。」
 びっくりした。
「何、言ってるの?」
「そうすると、もう少し、いられるのだけど、駄目なのよ。だから、なぎは、上るの。」
「どこに?」
「内緒。」
 なぎは、また、例の穏和な笑みを返して黙った。
 なぎは、俺の手を握ると、俺に寄り添った。なぎの柔らかな髪が俺の頬にかかった。なぎを愛しいと思った。
「ありがとう。」
 なぎは、俺を見上げると、言った。まるで、俺の心の内を見透かしたような口ぶりだった。この辺りは、やはり、母親の血か。
 金沢に戻ると、特急雷鳥に乗って、いよいよ、敦賀に向かって、出発した。雷鳥は、その昔、L特急と呼ばれていた頃の車体で、古めかしい感じの列車だった。
 金沢から敦賀まで雷鳥で一時間半の距離である。敦賀には、夕方に着いた。そのまま、駅から十分ほど歩いたところにあるホテルに泊まった。
 なぎは、寝るとき、同じ布団に入ってきて、俺の体にぴったりと自分をくっつけ、そして、抱きついてきた。俺は、学生の頃、そのころつきあっていた女性の部屋に泊まったときのことを思い出していた。
 なぎを抱き寄せて、しかし、それ以上のことはせず、その夜は、そのまま、眠りに落ちた。これが、学生の頃だったら、我慢できなかっただろうが、今となっては、それを抑えられるだけの衰えと分別ができていたのを実感した。
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