つばき

斐川 帙

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三、同棲

(十二)

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 「一緒にお布団に入っていい?」
 「いいけど。」
 そう、軽い気持ちで悟は答えたが、今頃になって疲れが出てきた悟は、布団が畳んであるロフトに昇らずに、そのまま、寝転がってしまった。そして、目をつぶった。酔いがまだ少し残っていたのか、頭はさえていたが、体は疲労でぐったりしていて、横になったまま、動けない感じになった。つばきが、寄り添うように悟の前に寝転がって身を寄せた。悟は、かったるそうに体を動かすと、つばきの体を抱き寄せ、不愉快な感情、惨めな気持ち、居酒屋で騒ぎたてていた連中に対するいらだちと腹立ち、それら全てに毒づき、つばを吐きかけるように、つばきを抱きしめ、体をすり寄せた。少し、力が入りすぎたのか、つばきが、「痛い。」と小さな悲鳴を上げた。悟は、少し力を緩め、そして、体を離した。仰向けになると、天井を眺めた。蛍光灯が眩しかった。悟は、立ち上がって、蛍光灯を消すと、再び、仰向けに寝転がった。そして、目をつぶった。つばきが、腕に絡みつくように体を寄せて、鼻先を腕にこすりつけてきた。
 「明日、どこに連れて行ってくれるの?」
 「わかんない。どっか行きたいところある?」
 「別にない。」
 悟はつばきの手を握った。なめらかでふっくらした手だ。つばきが握りかえしてきた。
 「遊園地、動物園、水族館、博物館、美術館、他に何があるかなあ・・・」
 「そういうところって面白い?」
 何か気に障ったのかなと思って、つばきを見ると、怒ってはいないようだった。本当に聞いただけみたいだった。
 「人によるんじゃない。君は、音楽とか聞くの?」
 思いついた事を適当に聞いてみたのだが、つばきは考え込むようにしばらく黙った。
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