天才魔法士がオレを離してくれません

湯川岳

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第1部

1.身体の異変

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ない、ない、ない!

 ない、よな。2つの丸と立派な竿が。

え、待って欲しい。

 オレはそっと下着の中に手を入れる。

「ない!」

 慌ててズボンと下着を脱ぎ姿見の前に立つ。鍛え上げられた肉体美の中心にいつも堂々と鎮座しているはずのオレがいない。
 あるべき所にあるのは恥じらいを持った女性特有の性器。

「なぜ!?」

 意味がわからない。変な薬を飲んだ記憶もない。いや、そもそも薬だったら分からないように飲ませるか。

「なんで!?」

 鏡と自分の身体を交互に見る。思考が回らない。ただ、なぜか身体がいつもより軽い。

「オレのオレ、どこいったぁぁぁぁ!!!」

 オレはいなくなってしまった相棒に向かって叫んだ。

「そうだ!ルシアン!あいつなら」

 オレは寝台のサイドに置かれた通信具を取る。
 ルシアン・ヴァルディウス。公爵家で魔法塔の若き天才と呼ばれるオレの自慢の親友。

『おはよう、テオ』

「なぁ、ルシアン助けてくれよ」

 親友の声に安心して、思わず声が震えてしまう。

『...どうした?』

「驚かず聞いてくれよ?」

 ルシアンは面倒くさそうになんだよ、と返してきた。

「オレのオレがいなくなったんだ!」

『ブフッ』

ーー こいつ、笑ったな?笑ったよな?

『はは、ごめんね。じゃぁ、診てあげるから後で魔法塔においで』

「わかった。書類届けに行く時に行く」

 本当は早く行きたいがそこはぐっと我慢する。1つの隊の隊長としてしっかりしなくては。

『……テオ、もしかしたら呪いかもしれないから他の人には言ってはいけないよ』

 呪い、という言葉に背筋がぞわりとした。ルシアンの真剣な声が更に不安にさせる。
 オレは誰かに恨まれる程のことをしてしまったのだろうか。
 全く記憶になかった。
 隊の空気も悪くない。婚約者もいない。思い当たる節がないのだから。

『わかった?』

「あ、ああ。わかったよ。誰にも言わない」

『じゃぁ、待ってるね』

 通信具を切断する。

ーーーそれにしてもアイツ、笑いやがった。

 多少の、怒りを覚えた。オレの相棒のためだ、といい聞かせる。
 下半身丸出しだったオレはいそいそと身支度をしていく。
 まだ身体の1部が変わってしまっただけなのが救いだ。
 もしこれが全身変わっていたとしたら、オレはどうなってしまっていたんだろう。
 考えたくもない想像をしてしまい、鳥肌がたった。

「下だけでよかったぁ」

 オレは安堵の息を漏らした。
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