天才魔法士がオレを離してくれません

湯川岳

文字の大きさ
5 / 36
第1部

4.親友への罪悪感

しおりを挟む
 魔法塔の大きな扉を閉め、肌寒くなってきた空を見上げる。


ーーあー、なんか男としてオレ終わったわ。

 ルシアンに調査と称して徐々に弄ばれてしまった場所はしっかりと甘い刺激を刻まれてしまった。

 ルシアンのあの獲物を逃さないような眼差し。色気が凄まじかった。
 もしあのまま誰も来なかったらどうなってしまっていたんだろう。
想像して、中が再び熱を持つように疼く。

「オレは男だぞ」

 今は下半身だけ違うけど。
 先程までの行為が頭の中に嫌でも流れてくる。顔にも熱が集まっていく気がした。
 しゃがみ込み、隠れるように頭を抱え込む。これは調査、研究。とブツブツ自分に言い聞かせる。

「あら?サリバン伯爵家の次男坊様はまたこちらにいらしたの?王国騎士団は暇なのかしら?」

 柔らかい聞き覚えのある声にばっ!と顔を上げる。

 目の前には豪華な馬車から降り立つ淡いピンクのドレスを着た美女がいた。
 薔薇のような色のウェーブがかかった髪に全てを見透かすような金色の鋭い瞳。

 イザベラ・ウィンストン公爵令嬢。

 ルシアンの婚約者だ。今、一番顔を合わせたくない人に出会ってしまった。

「イザベラ様、お久しぶりですね。私は書類と報告も兼ねて少々彼に用事があったもので」

「貴方、顔色が悪くてよ?」

 それは貴方様にお会いしたからです!とは言えず、どう答えるか迷っていると。

「それにルシアン様の魔力を感じるわ」

 ウィンストン公爵家は魔力の感知が強い家系だ。
 イザベラは歴代の中でも群を抜いてその才能があると言われている。
天才同士の結婚はオレも楽しみだった。
が、オレは冷や汗が止まらない。

ーー先程まで貴方の大事な婚約者と少々不貞行為をしてしまいました、なんて言えない!ごめんなさい!

「......それは先程までオレの身体を調査?してもらっていたからかもしれませんね」

 イザベラは、頭から足先まで見ると「ふーん」と睨みつけてくる。 視線がとても痛い。この場から逃げたい。

「まあ、私には関係ないことですわ。彼が何しようとどんなことしようとしているのなんて。だって、私達は」

「イザベラ様!お着きになられていたんですね!お出迎えが遅くなり申し訳ありません!」

 魔法塔の中から魔法士が頭をペコペコしながら出てくる。

 イザベラは、そっと近付いてきて何もかも見透かしたように一瞥をしてから小声で伝えてきた。

「困ったことがあったら、手をお貸ししますわ。いつでも」

 なんのお手伝いですか!?

 困惑の表情に出さないようににこり、と笑い返す。

「では、テオドール様。またお会いしましょう」

 魔法塔の中に入って行く。
 ゆっくりと閉まっていく扉とイザベラの後ろ姿を見送る。
 完全に扉が閉まった後、大きな息を吐いた。

「...誰か助けてくれぇ」

 情けない声が地面に吸い込まれていく。
 調査を言われて流し込まれたルシアンの魔力。

ーーそれにルシアン様の魔力を感じるわ。

 下腹部を中心に流されたがそれも彼女に気が付かれてしまったのだろうか。
 感知能力が鋭い彼女ならあり得なくもない。

 ああ、早く騎士団に戻らなくては。

 慣れない疼きを持った身体と罪悪感の重りを持って団員達が待つ訓練場へと向かった。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

身代わり閨係は王太子殿下に寵愛される

雨宮里玖
BL
僕なんかが好きになっちゃいけない相手なんだから……。 伯爵令息の身代わりになって王太子殿下の閨《ねや》の練習相手になることになった平民のラルス。伯爵令息から服を借りて貴族になりきり、連れて行かれたのは王太子殿下の寝所だ。 侍女に「閨事をしたからといって殿下に恋心を抱きませんように」と注意を受け、ラルスは寝所で王太子殿下を待つ——。 アルファの王太子×厩係の平民オメガ

傷跡傭兵の強制結婚-実子かどうかはどうでもいいので義理の息子を溺愛します-

同軸
BL
前の世界で凄惨な死を迎えた傭兵であった自分、シラー・イーグルズアイは神の使徒として異世界に転移してしまう。 現地の法令の元、有力貴族であるロアイト公爵との結婚を強引にも取り付けられ急な結婚生活が始まるが、傷んだ食事を出されたり冷遇されたりと歓迎されていない様子。でも誰も殺そうとしてこないし良いか。 義理の息子が成人するまではしっかり面倒をみてその後に家を出ようと画策するが、ロアイト公爵の様子がどうにもおかしくなってきて……?

ぼくが風になるまえに――

まめ
BL
「フロル、君との婚約を解消したいっ! 俺が真に愛する人は、たったひとりなんだっ!」 学園祭の夜、愛する婚約者ダレンに、突然別れを告げられた少年フロル。 ――ああ、来るべき時が来た。講堂での婚約解消宣言!異世界テンプレ来ちゃったよ。 精霊の血をひく一族に生まれ、やがては故郷の風と消える宿命を抱えたフロルの前世は、ラノベ好きのおとなしい青年だった。 「ダレンが急に変わったのは、魅了魔法ってやつのせいじゃないかな?」 異世界チートはできないけど、好きだった人の目を覚ますくらいはできたらいいな。 切なさと希望が交錯する、ただフロルがかわいそかわいいだけのお話。ハピエンです。 ダレン×フロル どうぞよろしくお願いいたします。

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

給餌行為が求愛行動だってなんで誰も教えてくれなかったんだ!

永川さき
BL
 魔術教師で平民のマテウス・アージェルは、元教え子で現同僚のアイザック・ウェルズリー子爵と毎日食堂で昼食をともにしている。  ただ、その食事風景は特殊なもので……。  元教え子のスパダリ魔術教師×未亡人で成人した子持ちのおっさん魔術教師  まー様企画の「おっさん受けBL企画」参加作品です。  他サイトにも掲載しています。

【完結】スパダリを目指していたらスパダリに食われた話

紫蘇
BL
給湯室で女の子が話していた。 理想の彼氏はスパダリよ! スパダリ、というやつになったらモテるらしいと分かった俺、安田陽向(ヒナタ)は、スパダリになるべく会社でも有名なスパダリ…長船政景(マサカゲ)課長に弟子入りするのであった。 受:安田陽向 天性の人たらしで、誰からも好かれる人間。 社会人になってからは友人と遊ぶことも減り、独り身の寂しさを噛み締めている。 社内システム開発課という変人どもの集まりの中で唯一まともに一般人と会話できる貴重な存在。 ただ、孤独を脱したいからスパダリになろうという思考はやはり変人のそれである。 攻:長船政景 35歳、大人の雰囲気を漂わせる男前。 いわゆるスパダリ、中身は拗らせ変態。 妹の美咲がモデルをしており、交友関係にキラキラしたものが垣間見える。 サブキャラ 長船美咲:27歳、長船政景の年の離れた妹。 抜群のスタイルを生かし、ランウェイで長らく活躍しているモデル。 兄の恋を応援するつもりがまさかこんなことになるとは。 高田寿也:28歳、美咲の彼氏。 そろそろ美咲と結婚したいなと思っているが、義理の兄がコレになるのかと思うと悩ましい。 義理の兄の恋愛事情に巻き込まれ、事件にだけはならないでくれと祈る日々が始まる…。

処理中です...