天才魔法士がオレを離してくれません

湯川岳

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第1部

11.飢えた身体

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 あれから1ヶ月程経った。魔力が馴染んできたのか身体の不調もなく過ごせていた。

 休憩のため執務室から出たオレは、ちょっとしたカフェスペースに来ていた。

「よぉ、テオドール」

「おっ、トリスタン。お前も休憩か?」

 トリスタンも別に特変変わったことはなかった。あんな痴態を見せてしまったから色々聞かれるかと思ったが、特に何もなくいつも通りだった。
 ただ、ほんの少しだけ変わったことと言えばーーー。

「体調は大丈夫か?何かあれば俺に言えよ?」

 体調面をすごく気にしてくるようになった。しつこいくらいに。

「そうですよー隊長ー!無理しないで下さいね!」

 後ろにいた部下達が口々に「疲れたら休め」と言ってくる。ぼこぼこにされた恐怖があるのだろう。

「そうだ、この間話をした夜会!どうする?体調がいいなら、行くか?」

 いいや、と首を振る。今、夜会に行ったとしても女性に対して失礼だ。
 なんたって、オレはーーー。

「テオ、ここにいたのかい?探したよ」

 声を聞いて胸がドキっとする。
 部下達が「ルシアン様だ」「今日も綺麗だ」とコソコソ話始める。

「お、おお、ごめんな。ちょっと休憩に入っていたんだ」

 キラキラとした部下の眼差しがルシアンに降り注ぐ。とても話にくい。

「……少し、場所移していいか?」

 執務室にルシアンと共に戻った。

「悪いな、部下たちが。お前ってほら、綺麗だから」

「いいよ、別に。気にしていないよ。……俺のこと綺麗だって嬉しいなぁ」

 テーブルの上に書類を置いたルシアンが俺の背後から抱きしめてくる。

「ちょ、ルシアン」

「夜、行くから……待っててね」

 ずくり、と下腹部に疼きを感じた。
 今日は3日に一度の魔力を馴染ませる日だ。
 あれから何回もしているが少しずつ身体が変わっていっている気がする。

「……っ」

 それはルシアンからの好意も含まれるようになったからかもしれない。

「好きだよ、テオ」

 前までは笑って流していた言葉。 この間、本当の意味を知ってしまったからか恥ずかしくてしょうがない。
 ちゅっ、と赤くなっているであろう首にキスを落とす。
 くすり、と楽しそうに微笑んだルシアンはそのまま魔法塔へと戻って行った。

 執務室を出るとトリスタンがオレに駆け寄ってくる。

「大丈夫か?顔が赤いじゃないか!ルシアン様に何もされていないか?」

「……されてないよ、別に」

 いや、されたけど。言えるわけがない。
 顔や身体をベタベタ触って確認してくる。

「おい、いい加減にしろ。オレは子供じゃない」

 照れを隠すためにオレはトリスタンを突き放す。

「そ、そうか。悪いな。分かってはいるんだけど、な。なんか、この間の様子を見てから心配なんだ」

『ーーートリスタンでいいや』

 あの時の俺はどうかしていた。
 頭がおかしくなってしてしまった行動。忘れてくれ、と身体の底から絞り出す。

「テオドール、今度また呑みに行こうな。お前、頑張り過ぎるから。副隊長としてどんなことでとサポートしたいんだ。いや、サポートさせてくれ!」

 両肩を掴まれ、頭を下げてくるトリスタンの様子を周囲の部下達からのなんだ、なんだ、という視線が集まってくる。

「わ、分かったから。やめてくれよ。呑みに行こう。そん時はオレの悩み聞いてくれな?」

「おう!何でも話してくれ!」

 トリスタンは嬉しそうに爽やかな笑顔を見せると仕事へと戻って行った。
 歳は同じなのに面倒見が良く、この部隊の兄貴分だ。オレが隊長としてやっていけるのも彼のお陰だ。
オレと呑みに行く約束が出来たトリスタンは、嬉しそうに爽やかな笑顔を見せると仕事へと戻って行く。
 オレもまた部下達の報告を聞いたあと、執務室で書類の仕事に戻っていった。


ーーー日が傾きかけた頃。
 普段ならば家に帰り食事し入浴し眠るだけなのに、今日は違う。夜になればルシアンと誰にも言えない秘め事が始まる。
 窓に映るオレはもう部隊の隊長としての顔ではなかった。何かを欲している、飢えた顔。
 このオレは誰だ。自分でも分からなくなる時がある。
 夜が来て欲しくない。
 しかし、オレの気持ちと裏腹に身体は期待を募らせていった。


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