天才魔法士がオレを離してくれません

湯川岳

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第2部

エピローグ

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 結婚式から数ヶ月。
 オレは騎士団の教官となり、みっちり隊員達を扱いていた。
 ルシアンはオレが剣を捨てきれないことを理解していたのか渋々許可を出してくれた。
 心配なのかしょっちゅう用もないのに魔法塔から出てきては騎士団の様子を覗きに来る。
 トリスタンは立派な隊長となり第3部隊を率いている。たまに呑みに行くと隊長としての威厳があるのか心配している。
 リュークはルシアンとほんの少しだけ仲良くなったのか二人で何やら話をしている時がある。ウィング隊長とも無事に結ばれたらしい。
 そのまま純粋なリュークでいて欲しい、とオレは願うばかりだ。

「やぁ、教官の仕事はどうだい?」
 
 イザークが護衛を付けて歩いてくる。彼はこの国の王となった。イザベラも王妃となり、子供を身ごもっている。
 2人も幸せそうだった。

「とても楽しくさせてもらっています。人に教えるのは得意だったので」

「無理はしてはいけないよ。もう1人の身体ではないのだからね」

「……はい」

  少し膨らんだ腹部を撫でる。ルシアンとの子がオレの中にいる。
 オレもまた幸せだった。


 勤務が終わるとルシアンが迎えに来てくれる。そして、ルシアンとオレは別邸に帰る毎日。
 本邸に移れと最近、言われている。ルシアンは移る気がない。そもそも爵位に興味がないから弟のアンデルに譲るかもしれない。魔法塔の管理と研究の方が忙しいからだ。
 イザークから頼まれている事が多いと文句を言っていた。
 別邸のウッドデッキでソファに座っているとビッグキャット達がオレのお腹にくっついてくる。

「この子達の感知能力はすごいな」

 きっと微力な魔力を感じ取っているのだろう。子が出来たとわかった時も彼らがオレのお腹を守るような仕草をしていた。
 ビッグキャットの耳がピクンと動く。

「あ、動いた」

 お腹の中で何か動く。

「なんだって!」

 ルシアンがオレのお腹に手を置く。しかし、何も反応がない。
 残念そうな顔をするルシアンにオレは笑ってしまう。
 ルシアンも声を出して笑う。
 そんな穏やかな日々が過ぎて行った。


 ーーーー6年後。

 別邸から出たオレ達は魔法塔の近くにあった屋敷に移り住んだ。イザークにより、ルシアンが魔法塔の主になったからだ。
 きっと2人の間で何かまた取り引きがあったのだろう。
なぜか、最初に見に来た時よりも屋敷は大きくなっていた。

ドカーン!!

「きゃーーー!」

 メイド達の叫び声が庭の方から聞こえ、オレはお腹に張り付いてたビッグキャットを撫でてから騒ぎの方へ向かった。

「こらー!ミカ!またやったな!」

 ビッグキャットがオレの後ろに着いて来る。6年前はまだ小さかったビッグキャットはオレ達から離れることなく共にいた。

「だって~」

 煙の中から出て来たのは白銀の短いかみに碧色の瞳を持った娘のミカ。顔立ちはオレに似ている。

「シエルも一緒にいたのか」

 ひょこっと後ろから出てきたのは長い黒髪にエメラルドの瞳を持った息子のシエルだった。顔立ちはルシアンに似ている。

 オレは双子に恵まれた。
 出産は大変だった。生殖器以外は男だったため、お腹を切っての出産だった。
 エリオが取り上げてくれた。何でも帝王切開というらしい。
 母乳は出ないため雇った乳母にお願いをした。その他のことはオレとルシアンが一通り行った。

「テオ、ごめんなさい」

 シエルがぴとり、とオレにくっつく。性格はルシアンに似ていた。

「ごめんなさーい」
 ミカは完全にオレそっくりだ。顔はルシアンなのに。

「魔法を扱う時はどーするんだっけ?」

「「パパがいる時だけ!」」

「そう!ルシアンがいない時はだめだ」

 シエルとミカは剣も魔法もどっちも才能があった。あるからこそ剣の練習をしながら使ってしまうらしい。
 ふわり、と冷たい魔力が2人の周囲を覆う。
 オレは苦笑いをする。きっとすっ飛んで来たのだろう。

「……何をしているんだ」

「……げ、パパ」

 シエルが露骨に嫌な顔をする。ミカはキャハハと魔力を切って楽しんでいた。

「お前達、テオは今、お腹の中に大事な命を抱えていると言ってあっただろう」

 そう、オレの中にはルシアンと子供が再び宿っている。

「もし何かあったら許さないからな」

「こら、ルシアン。大人気ない。オレ大丈夫だよ」

「いや、こればかりはだめだよ。テオに何かあったら俺はおかしくなってしまう」

 ルシアンは俺の頬にキスを落とす。
 そのまま、オレに魔力を流し込む。

「ありがとう、ルシアン」
 
 やはり妊娠の維持は1週間に1度か3日に1度の魔力補給が必要だった。
 今回も定期的に魔力を流してもらっている。

「リュークの方も大丈夫かな」

「そっちはエリオが行ってる」

 リュークも無事にウィングと結婚をした。ウィングの診察をエリオが行っているのだろう。

 イザークがルシアンの研究を公にしてから数年。オレが無事に出産してからは同性で子供が欲しいとよく魔法塔に来るらしい。
 色々手続きがあるらしいが、それを乗り越えれば生殖器を一時的に変えられる。
 その後、継続のために魔力を注がなければならないが。
 
「ルシアンの研究はすごいな」

「パパの魔法がそんなにすごいの?」

 シエルが聞いてくる。

「すごいよ、今も人を幸せにできているんだから」

 オレは2人の小さな手を取る。

「だからシエル、ミカ。いいか?魔法も剣も人を幸せに出来て、守ることもできる。……人を傷つけるために使わないでくれよ、な?」

「うん!」

 シエルとミカの頬にキスを落とす。
 2人はまた庭へと駆け出した。その後をビッグキャットが追いかける。

 大変なこともあるがオレは幸せな毎日を過ごしていた。

「……テオ」

 名前を呼ばれて振り向けばルシアンがオレの唇に口付けをする。

「テオ、愛してる」

 「うん、愛してる。オレ……すごく幸せを噛み締めてるよ」

 ルシアンはオレの左手を取ると薬指に付けられた指輪にキスを落とした。

「……幸せをありがとう」

 ルシアンの顔は幸せそうで、オレに向けられた笑顔は美しかった。

「どういたしまして」

 オレはにっかりとルシアンに笑った。





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