30 / 36
第2部
エピローグ
しおりを挟む結婚式から数ヶ月。
オレは騎士団の教官となり、みっちり隊員達を扱いていた。
ルシアンはオレが剣を捨てきれないことを理解していたのか渋々許可を出してくれた。
心配なのかしょっちゅう用もないのに魔法塔から出てきては騎士団の様子を覗きに来る。
トリスタンは立派な隊長となり第3部隊を率いている。たまに呑みに行くと隊長としての威厳があるのか心配している。
リュークはルシアンとほんの少しだけ仲良くなったのか二人で何やら話をしている時がある。ウィング隊長とも無事に結ばれたらしい。
そのまま純粋なリュークでいて欲しい、とオレは願うばかりだ。
「やぁ、教官の仕事はどうだい?」
イザークが護衛を付けて歩いてくる。彼はこの国の王となった。イザベラも王妃となり、子供を身ごもっている。
2人も幸せそうだった。
「とても楽しくさせてもらっています。人に教えるのは得意だったので」
「無理はしてはいけないよ。もう1人の身体ではないのだからね」
「……はい」
少し膨らんだ腹部を撫でる。ルシアンとの子がオレの中にいる。
オレもまた幸せだった。
勤務が終わるとルシアンが迎えに来てくれる。そして、ルシアンとオレは別邸に帰る毎日。
本邸に移れと最近、言われている。ルシアンは移る気がない。そもそも爵位に興味がないから弟のアンデルに譲るかもしれない。魔法塔の管理と研究の方が忙しいからだ。
イザークから頼まれている事が多いと文句を言っていた。
別邸のウッドデッキでソファに座っているとビッグキャット達がオレのお腹にくっついてくる。
「この子達の感知能力はすごいな」
きっと微力な魔力を感じ取っているのだろう。子が出来たとわかった時も彼らがオレのお腹を守るような仕草をしていた。
ビッグキャットの耳がピクンと動く。
「あ、動いた」
お腹の中で何か動く。
「なんだって!」
ルシアンがオレのお腹に手を置く。しかし、何も反応がない。
残念そうな顔をするルシアンにオレは笑ってしまう。
ルシアンも声を出して笑う。
そんな穏やかな日々が過ぎて行った。
ーーーー6年後。
別邸から出たオレ達は魔法塔の近くにあった屋敷に移り住んだ。イザークにより、ルシアンが魔法塔の主になったからだ。
きっと2人の間で何かまた取り引きがあったのだろう。
なぜか、最初に見に来た時よりも屋敷は大きくなっていた。
ドカーン!!
「きゃーーー!」
メイド達の叫び声が庭の方から聞こえ、オレはお腹に張り付いてたビッグキャットを撫でてから騒ぎの方へ向かった。
「こらー!ミカ!またやったな!」
ビッグキャットがオレの後ろに着いて来る。6年前はまだ小さかったビッグキャットはオレ達から離れることなく共にいた。
「だって~」
煙の中から出て来たのは白銀の短いかみに碧色の瞳を持った娘のミカ。顔立ちはオレに似ている。
「シエルも一緒にいたのか」
ひょこっと後ろから出てきたのは長い黒髪にエメラルドの瞳を持った息子のシエルだった。顔立ちはルシアンに似ている。
オレは双子に恵まれた。
出産は大変だった。生殖器以外は男だったため、お腹を切っての出産だった。
エリオが取り上げてくれた。何でも帝王切開というらしい。
母乳は出ないため雇った乳母にお願いをした。その他のことはオレとルシアンが一通り行った。
「テオ、ごめんなさい」
シエルがぴとり、とオレにくっつく。性格はルシアンに似ていた。
「ごめんなさーい」
ミカは完全にオレそっくりだ。顔はルシアンなのに。
「魔法を扱う時はどーするんだっけ?」
「「パパがいる時だけ!」」
「そう!ルシアンがいない時はだめだ」
シエルとミカは剣も魔法もどっちも才能があった。あるからこそ剣の練習をしながら使ってしまうらしい。
ふわり、と冷たい魔力が2人の周囲を覆う。
オレは苦笑いをする。きっとすっ飛んで来たのだろう。
「……何をしているんだ」
「……げ、パパ」
シエルが露骨に嫌な顔をする。ミカはキャハハと魔力を切って楽しんでいた。
「お前達、テオは今、お腹の中に大事な命を抱えていると言ってあっただろう」
そう、オレの中にはルシアンと子供が再び宿っている。
「もし何かあったら許さないからな」
「こら、ルシアン。大人気ない。オレ大丈夫だよ」
「いや、こればかりはだめだよ。テオに何かあったら俺はおかしくなってしまう」
ルシアンは俺の頬にキスを落とす。
そのまま、オレに魔力を流し込む。
「ありがとう、ルシアン」
やはり妊娠の維持は1週間に1度か3日に1度の魔力補給が必要だった。
今回も定期的に魔力を流してもらっている。
「リュークの方も大丈夫かな」
「そっちはエリオが行ってる」
リュークも無事にウィングと結婚をした。ウィングの診察をエリオが行っているのだろう。
イザークがルシアンの研究を公にしてから数年。オレが無事に出産してからは同性で子供が欲しいとよく魔法塔に来るらしい。
色々手続きがあるらしいが、それを乗り越えれば生殖器を一時的に変えられる。
その後、継続のために魔力を注がなければならないが。
「ルシアンの研究はすごいな」
「パパの魔法がそんなにすごいの?」
シエルが聞いてくる。
「すごいよ、今も人を幸せにできているんだから」
オレは2人の小さな手を取る。
「だからシエル、ミカ。いいか?魔法も剣も人を幸せに出来て、守ることもできる。……人を傷つけるために使わないでくれよ、な?」
「うん!」
シエルとミカの頬にキスを落とす。
2人はまた庭へと駆け出した。その後をビッグキャットが追いかける。
大変なこともあるがオレは幸せな毎日を過ごしていた。
「……テオ」
名前を呼ばれて振り向けばルシアンがオレの唇に口付けをする。
「テオ、愛してる」
「うん、愛してる。オレ……すごく幸せを噛み締めてるよ」
ルシアンはオレの左手を取ると薬指に付けられた指輪にキスを落とした。
「……幸せをありがとう」
ルシアンの顔は幸せそうで、オレに向けられた笑顔は美しかった。
「どういたしまして」
オレはにっかりとルシアンに笑った。
2
あなたにおすすめの小説
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
身代わり閨係は王太子殿下に寵愛される
雨宮里玖
BL
僕なんかが好きになっちゃいけない相手なんだから……。
伯爵令息の身代わりになって王太子殿下の閨《ねや》の練習相手になることになった平民のラルス。伯爵令息から服を借りて貴族になりきり、連れて行かれたのは王太子殿下の寝所だ。
侍女に「閨事をしたからといって殿下に恋心を抱きませんように」と注意を受け、ラルスは寝所で王太子殿下を待つ——。
アルファの王太子×厩係の平民オメガ
傷跡傭兵の強制結婚-実子かどうかはどうでもいいので義理の息子を溺愛します-
同軸
BL
前の世界で凄惨な死を迎えた傭兵であった自分、シラー・イーグルズアイは神の使徒として異世界に転移してしまう。
現地の法令の元、有力貴族であるロアイト公爵との結婚を強引にも取り付けられ急な結婚生活が始まるが、傷んだ食事を出されたり冷遇されたりと歓迎されていない様子。でも誰も殺そうとしてこないし良いか。
義理の息子が成人するまではしっかり面倒をみてその後に家を出ようと画策するが、ロアイト公爵の様子がどうにもおかしくなってきて……?
ぼくが風になるまえに――
まめ
BL
「フロル、君との婚約を解消したいっ! 俺が真に愛する人は、たったひとりなんだっ!」
学園祭の夜、愛する婚約者ダレンに、突然別れを告げられた少年フロル。
――ああ、来るべき時が来た。講堂での婚約解消宣言!異世界テンプレ来ちゃったよ。
精霊の血をひく一族に生まれ、やがては故郷の風と消える宿命を抱えたフロルの前世は、ラノベ好きのおとなしい青年だった。
「ダレンが急に変わったのは、魅了魔法ってやつのせいじゃないかな?」
異世界チートはできないけど、好きだった人の目を覚ますくらいはできたらいいな。
切なさと希望が交錯する、ただフロルがかわいそかわいいだけのお話。ハピエンです。
ダレン×フロル
どうぞよろしくお願いいたします。
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
給餌行為が求愛行動だってなんで誰も教えてくれなかったんだ!
永川さき
BL
魔術教師で平民のマテウス・アージェルは、元教え子で現同僚のアイザック・ウェルズリー子爵と毎日食堂で昼食をともにしている。
ただ、その食事風景は特殊なもので……。
元教え子のスパダリ魔術教師×未亡人で成人した子持ちのおっさん魔術教師
まー様企画の「おっさん受けBL企画」参加作品です。
他サイトにも掲載しています。
【完結】スパダリを目指していたらスパダリに食われた話
紫蘇
BL
給湯室で女の子が話していた。
理想の彼氏はスパダリよ!
スパダリ、というやつになったらモテるらしいと分かった俺、安田陽向(ヒナタ)は、スパダリになるべく会社でも有名なスパダリ…長船政景(マサカゲ)課長に弟子入りするのであった。
受:安田陽向
天性の人たらしで、誰からも好かれる人間。
社会人になってからは友人と遊ぶことも減り、独り身の寂しさを噛み締めている。
社内システム開発課という変人どもの集まりの中で唯一まともに一般人と会話できる貴重な存在。
ただ、孤独を脱したいからスパダリになろうという思考はやはり変人のそれである。
攻:長船政景
35歳、大人の雰囲気を漂わせる男前。
いわゆるスパダリ、中身は拗らせ変態。
妹の美咲がモデルをしており、交友関係にキラキラしたものが垣間見える。
サブキャラ
長船美咲:27歳、長船政景の年の離れた妹。
抜群のスタイルを生かし、ランウェイで長らく活躍しているモデル。
兄の恋を応援するつもりがまさかこんなことになるとは。
高田寿也:28歳、美咲の彼氏。
そろそろ美咲と結婚したいなと思っているが、義理の兄がコレになるのかと思うと悩ましい。
義理の兄の恋愛事情に巻き込まれ、事件にだけはならないでくれと祈る日々が始まる…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる