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1.仲良くしたい
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はっ、と泥から掬い上げられたように目を覚ました。
窓から差し込む光とふかふかのベッド。自室だった。
刺されたはずの胸を触るが傷ひとつなかった。
「……夢?」
はらり、と髪から落ちた髪留めを拾う。
真っ赤な血がベッタリくっついていた。
手のひらに付いた血はまだ乾いていなかった。
今の今まで血に浸かっていたようだった。
「……夢、じゃない?」
理解が追いつかない。
ーーーあの日、オレはあいつと何を話していた?
記憶を辿るが色んな部分が黒く塗りつぶされたかのようにあったはずの記憶が消されていた。
確かにあったはずの、忘れてはいけない何かが。
コンコン、と部屋の扉が開けられる。
手にあった髪留めを無意識に隠した。
「どうぞ」
「おはようございます、アルト様」
入って来たのはユーリだった。
無意識に体が警戒をしてしまう。
「本日の報告をしに参りました」
ユーリは朝までに起きた魔物の被害報告を行う。
オレたちシューベルト領では国と魔物の森の国境に領土を構えていた。
領主はオレの兄が、オレは騎士団団長として日々魔物からこの領土を守っていた。
大した魔物はでない。しかし、出現する量が多くて手を焼いている。
報告を済ませるとユーリはオレの服を用意する。
ユーリはオレの身の回りのことをしつつ、副団長も兼任していた。副団長になった頃から向こうから願い出たことだった。断る理由がなくそのまま来ている。
「お召し換えを……」
先程見たユーリとは雰囲気が違うと分かっていても一瞬体が強ばってしまった。
「いや、今日は自分でやるよ。ありがとう」
「いえ、しかし……私にやらせて下さい」
いつ頃からなのか忘れてしまったがユーリは感情をあまり表に出さない。
基本、無表情だ。
しかし、今日はなんだか目の下に影ができていて 少し疲れているようだった。
「わかった、お願いするよ」
ユーリの指がオレの体に触れる。
記憶に残る嫌悪の表情を思い出し、体に緊張が走った。
気を紛らわせるために質問をしてみた。
「……兄さんの結婚式はいつだっか覚えているか?」
「……え?えっとつい先日行われましまたが」
オレは1年前に戻って来たのか。
ユーリは1年後にオレを殺すのだろうか。
「あれ、お前のネックレス。そんな色だったか?」
服の隙間から錆びたようなネックレスが見えた。この間までは綺麗なシルバーだったはずだ。
ユーリはそっとネックレスを隠した。
「これはその、私にも分からないのです」
「……そっか」
そのネックレスの色に違和感を覚えながらも頭の中はユーリが1年後になぜ、自分を殺してしまうのかということでいっぱいだった。
「アルト様、この血はなんですか?」
顔は無表情なのに声色が変わる。
少し驚いているようだった。
オレの血が服を汚してしまったようだ。
「あー……、寝ながら引っ掻いたっぽい。もう治った」
オレはしれっと嘘をついた。
ちらり、とユーリを見ると信じてはいなそうだったが深くは聞く気がないようだった。
「……そうですか」
オレの手についた血を落とす。
「……なぁ、一緒に朝食、食べよう」
まずはもっと仲良くなるべきだと思った。
彼は平民なのに副隊長までのし上がった強さがある。
しかし、オレはなぜかユーリと距離を置いていた気がする。
その理由も思い出せない。記憶に制限が掛けられているような変な気分だ。
「え、一緒にですか?」
ユーリの顔の表情筋が動いた。
驚くのも不思議ではない。今まで食事は一緒に摂っていない。
オレは1人、リビングで摂っていた。
「今日から騎士団の食堂で食べる、お前と一緒に」
ユーリは何も答えなかった。
「……、いやか?」
「そんなわけ、ないです。すごく嬉しいです」
顔は変わらないのに嬉しそうだった。
騎士団の食堂に行くとざわっ、と団員達がオレの方を見ていた。
「……無理もないかぁ」
「みんなきっと嬉しいと思いますよ」
「ふーん」
ユーリと向かい合って朝食を撮る。
彼は食べ方が綺麗だ。誰かに教えてもらったのか?というくらい綺麗な作法だった。
「ユーリはさ、食べ方、綺麗だね」
「え、ああ、まぁ。……教えてもらったので」
「誰に?」
ユーリは悲しそうに目線を落とした。
「えと、祖母にです」
「そっか」
気まずい空気が流れていく。
このままだと、また1年後、殺されてしまうのでは?
どうしたらいいのか、様々な考えをオレは張り巡らせる。
風呂に一緒に入るか?
いや、それはいやだ。
夜、一緒に寝るか?
それもいやだな。
どうでもいいことしか思い浮かばなかった。オレは考えるのを諦めた。
「髪の毛、上手く縛れないんだ。ユーリが毎日結ってくれる?」
「……もちろんです」
あ、嬉しそうだ。
オレは見ようとしなかっただけで、彼は声で表現するのかも知れない。
一年もある。
どうにかして、彼と仲良くならなくては。
欠落している記憶も気になった。
まるで何かを守るように蓋をしているようだった。
「ありがとう、ユーリ」
さっそく結おうと髪に触れるユーリの手はとても優しかった。
窓から差し込む光とふかふかのベッド。自室だった。
刺されたはずの胸を触るが傷ひとつなかった。
「……夢?」
はらり、と髪から落ちた髪留めを拾う。
真っ赤な血がベッタリくっついていた。
手のひらに付いた血はまだ乾いていなかった。
今の今まで血に浸かっていたようだった。
「……夢、じゃない?」
理解が追いつかない。
ーーーあの日、オレはあいつと何を話していた?
記憶を辿るが色んな部分が黒く塗りつぶされたかのようにあったはずの記憶が消されていた。
確かにあったはずの、忘れてはいけない何かが。
コンコン、と部屋の扉が開けられる。
手にあった髪留めを無意識に隠した。
「どうぞ」
「おはようございます、アルト様」
入って来たのはユーリだった。
無意識に体が警戒をしてしまう。
「本日の報告をしに参りました」
ユーリは朝までに起きた魔物の被害報告を行う。
オレたちシューベルト領では国と魔物の森の国境に領土を構えていた。
領主はオレの兄が、オレは騎士団団長として日々魔物からこの領土を守っていた。
大した魔物はでない。しかし、出現する量が多くて手を焼いている。
報告を済ませるとユーリはオレの服を用意する。
ユーリはオレの身の回りのことをしつつ、副団長も兼任していた。副団長になった頃から向こうから願い出たことだった。断る理由がなくそのまま来ている。
「お召し換えを……」
先程見たユーリとは雰囲気が違うと分かっていても一瞬体が強ばってしまった。
「いや、今日は自分でやるよ。ありがとう」
「いえ、しかし……私にやらせて下さい」
いつ頃からなのか忘れてしまったがユーリは感情をあまり表に出さない。
基本、無表情だ。
しかし、今日はなんだか目の下に影ができていて 少し疲れているようだった。
「わかった、お願いするよ」
ユーリの指がオレの体に触れる。
記憶に残る嫌悪の表情を思い出し、体に緊張が走った。
気を紛らわせるために質問をしてみた。
「……兄さんの結婚式はいつだっか覚えているか?」
「……え?えっとつい先日行われましまたが」
オレは1年前に戻って来たのか。
ユーリは1年後にオレを殺すのだろうか。
「あれ、お前のネックレス。そんな色だったか?」
服の隙間から錆びたようなネックレスが見えた。この間までは綺麗なシルバーだったはずだ。
ユーリはそっとネックレスを隠した。
「これはその、私にも分からないのです」
「……そっか」
そのネックレスの色に違和感を覚えながらも頭の中はユーリが1年後になぜ、自分を殺してしまうのかということでいっぱいだった。
「アルト様、この血はなんですか?」
顔は無表情なのに声色が変わる。
少し驚いているようだった。
オレの血が服を汚してしまったようだ。
「あー……、寝ながら引っ掻いたっぽい。もう治った」
オレはしれっと嘘をついた。
ちらり、とユーリを見ると信じてはいなそうだったが深くは聞く気がないようだった。
「……そうですか」
オレの手についた血を落とす。
「……なぁ、一緒に朝食、食べよう」
まずはもっと仲良くなるべきだと思った。
彼は平民なのに副隊長までのし上がった強さがある。
しかし、オレはなぜかユーリと距離を置いていた気がする。
その理由も思い出せない。記憶に制限が掛けられているような変な気分だ。
「え、一緒にですか?」
ユーリの顔の表情筋が動いた。
驚くのも不思議ではない。今まで食事は一緒に摂っていない。
オレは1人、リビングで摂っていた。
「今日から騎士団の食堂で食べる、お前と一緒に」
ユーリは何も答えなかった。
「……、いやか?」
「そんなわけ、ないです。すごく嬉しいです」
顔は変わらないのに嬉しそうだった。
騎士団の食堂に行くとざわっ、と団員達がオレの方を見ていた。
「……無理もないかぁ」
「みんなきっと嬉しいと思いますよ」
「ふーん」
ユーリと向かい合って朝食を撮る。
彼は食べ方が綺麗だ。誰かに教えてもらったのか?というくらい綺麗な作法だった。
「ユーリはさ、食べ方、綺麗だね」
「え、ああ、まぁ。……教えてもらったので」
「誰に?」
ユーリは悲しそうに目線を落とした。
「えと、祖母にです」
「そっか」
気まずい空気が流れていく。
このままだと、また1年後、殺されてしまうのでは?
どうしたらいいのか、様々な考えをオレは張り巡らせる。
風呂に一緒に入るか?
いや、それはいやだ。
夜、一緒に寝るか?
それもいやだな。
どうでもいいことしか思い浮かばなかった。オレは考えるのを諦めた。
「髪の毛、上手く縛れないんだ。ユーリが毎日結ってくれる?」
「……もちろんです」
あ、嬉しそうだ。
オレは見ようとしなかっただけで、彼は声で表現するのかも知れない。
一年もある。
どうにかして、彼と仲良くならなくては。
欠落している記憶も気になった。
まるで何かを守るように蓋をしているようだった。
「ありがとう、ユーリ」
さっそく結おうと髪に触れるユーリの手はとても優しかった。
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