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第20話 中国に合弁で現地法人を設立する場合の注意すべき交渉方法
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前回は「外商投資産業指導目録とはどのようなものかについて解説」と題して、深掘りの解説させていただきました。
今回は日中合弁で中国に現地法人を設立する場合、どのよう点に注意して合弁交渉を進めなければならないのか解説させていただきたいと思います。
合弁交渉を通してのパートナーとの充分な意思疎通が最も重要ですが、一定の交渉戦略も必要です。
また、中国企業から出資を仰げば「合弁企業」となり、外国企業だけで出資すれば「独資企業」に分類されますが、両者のメリットとデメリットは様々で、どちらがよいかは一概には言えませんが、日中合弁の場合は、合弁設立に向けたパートナーとの交渉が重要です。
中国側パートナーが、民間企業か国有企業か、都市部の企業か農村部の企業か、財務的に裕福な企業か否か、などによって交渉が難航する可能性が変わってきます。
まず、国有企業の場合は民間企業に比べて規制が多いことから、合弁交渉においてパートナーが 応諾した条項でも、国有企業を管轄する中国当局が事後的に認めない、という可能性がありますので注意が必要です。
このようなトラブルを避けるためには、合弁交渉過程を常に弁護士などの専門家に検証してもらうのがよいでしょう。
また、このような観点から、意思決定にもある程度時間がかかるため、 意思決定にかかる時間を見越した交渉が必要です。
次に農村部の企業の場合、地元自治体との関係が密接で、様々な許認可が思いのほかスムーズ に遂行される可能性もありますが、中央の法令法規に則っていない地方ルールで認可されたものは事後的に否認される可能性もありますので、その都度検証することをお勧めします。
都市部の場合、 たとえば上海市でも外商投資企業への対応が各区によって異なる可能性がありますので、一概に大 都市だから特殊なルールで認可されたが後で否認されることはありえない、と言えるわけではありません。
財務面については、以前は容易にパートナーの工商資料を取り寄せることが可能でしたが、現在 では地域によっては工商資料の取得が難しくなっています。
また、経営者が会社に資産を残さずに個人資産の積上げに注力しているなどの理由で、財務諸表などのデータが必ずしもその会社の実態を反映していない場合もありますので注意が必要です。
合弁候補が定まったら、まず意向書(LOI=Letter of Intent)を締結するのが一般的です。
LOIとは、 中国側パートナーと本格的な交渉を始める前に、合弁・合作の概要を記載するもので、合弁(合作)契 約書のたたき台となります。
契約書は全部で数十条と長くなりますが、その趣旨だけを抜粋して作成し、中国側と締結します。
一般に、LOIには次の内容が記載されます(法律上の要請ではないため、特に決まりがあるわけではなく、より限定的に記載することもあります)。
1.合弁(合作)当事者
2.企業名称
3.設立目的
4.経営範囲
5.奨励類等の認定取得
6.投資総額および登録資本
7.出資比率
8.董事会の構成
9.経営管理機構の構成
10.従業員の採用
11.利益配当
12.合弁(合作)期間
13.F/S報告書の完了時期
14.F/S報告書に基づきプロジェクトの正否を判断する旨
15.本意向書の法的効果
更に、一定期間内において相手方を唯一無二の合弁交渉相手とすることや、合弁交渉過程で得た 情報を他社に漏らさないとする守秘義務条項などを盛込みます。
この段階から、弁護士などの専門家にも関与してもらうとよいでしょう。
意向書には、特段の約定がない限り基本的に法的拘束力はないものと理解されていますが、詳細な規定を設ける場合、紛争解決機関により法的拘束力があると解されるリスクもあります(日本では 判例上認められているに過ぎないいわゆる「契約締結上の過失」が契約法第42条で定められていま す)。
したがって、意向書には詳細な規定を設ける一方、「法的拘束力はなく、当事者は何時でも一切損害賠償責任を負担することなく、プロジェクトの検討を中止することができる」ことを明示するのがよいでしょう。
ただし、設立申請の過程で実費負担が必要となることが多々ありますが、これを折半で負担することを約定する場合、当該約定に限っては法的拘束力を付与する旨を別途明示するのが妥当と思われます。
合弁交渉は、中外合弁企業法と同実施条例に則った上で、近い将来締結する「合弁契約書」や「合弁会社定款」を意識しながら進めていきます。総投資額や出資比率、原料供給や製品販売、合弁会社の組織構成や意思決定に関するガバナンスなどを討議します。
労力はかかりますが、討議が進むごとに(できれば毎回)日中2ヵ国語の「議事録」を作成し双方がサインしていくことで、「合弁契約書」や 「合弁会社定款」の作成に向け交渉が進行していきます。
合弁交渉においては、日中の文化の差異に遭遇することもよくあります。
日本人は中国人を「近似文化を保有している」と錯覚しがちですが、中国人は相手が中国人でも全く異文化を持つ人たちとして交渉することに慣れていますので、日本人に対しても「全く異文化の民族である」と認識しています。
日本側は、合弁交渉の過程で腹を立てたくなる状況に遭遇することがありますが、合弁契約書にサインするまでは、双方が自己の主張を思う存分ぶつけ合うことは双方の当然の権利ですので、何が起こっても立腹することなく冷静かつ理路整然と、交渉を続けるよう留意することが必要です。
また、中国の文化として交渉過程であっても双方が夕食を共にし、一緒に酒を飲む機会があります。
宴会時にはたとえ酔っても酔いつぶれないようにし、中国側の人間関係や権力力学、そして交渉に関する本音を聞きだせるように、通訳も含めた日本側交渉団のチームワークをしっかり維持することが肝要です。
日中合弁で中国に現地法人を設立する場合、どのよう点に注意して合弁交渉を進めなければならないのか解説させていただきましたがいかがでしたか?
上記のような注意点を書かせていただいたのには訳がございまして、私はお酒に強い自信があって中国の人とついつい白酒を飲み比べしちゃいました。
記憶は飛びました笑、、気をつけましょう!
さて次回は、中国に現地法人を設立するにあたって、どのような立地にすべきかについて共有させていただきたいと思います。
今回は日中合弁で中国に現地法人を設立する場合、どのよう点に注意して合弁交渉を進めなければならないのか解説させていただきたいと思います。
合弁交渉を通してのパートナーとの充分な意思疎通が最も重要ですが、一定の交渉戦略も必要です。
また、中国企業から出資を仰げば「合弁企業」となり、外国企業だけで出資すれば「独資企業」に分類されますが、両者のメリットとデメリットは様々で、どちらがよいかは一概には言えませんが、日中合弁の場合は、合弁設立に向けたパートナーとの交渉が重要です。
中国側パートナーが、民間企業か国有企業か、都市部の企業か農村部の企業か、財務的に裕福な企業か否か、などによって交渉が難航する可能性が変わってきます。
まず、国有企業の場合は民間企業に比べて規制が多いことから、合弁交渉においてパートナーが 応諾した条項でも、国有企業を管轄する中国当局が事後的に認めない、という可能性がありますので注意が必要です。
このようなトラブルを避けるためには、合弁交渉過程を常に弁護士などの専門家に検証してもらうのがよいでしょう。
また、このような観点から、意思決定にもある程度時間がかかるため、 意思決定にかかる時間を見越した交渉が必要です。
次に農村部の企業の場合、地元自治体との関係が密接で、様々な許認可が思いのほかスムーズ に遂行される可能性もありますが、中央の法令法規に則っていない地方ルールで認可されたものは事後的に否認される可能性もありますので、その都度検証することをお勧めします。
都市部の場合、 たとえば上海市でも外商投資企業への対応が各区によって異なる可能性がありますので、一概に大 都市だから特殊なルールで認可されたが後で否認されることはありえない、と言えるわけではありません。
財務面については、以前は容易にパートナーの工商資料を取り寄せることが可能でしたが、現在 では地域によっては工商資料の取得が難しくなっています。
また、経営者が会社に資産を残さずに個人資産の積上げに注力しているなどの理由で、財務諸表などのデータが必ずしもその会社の実態を反映していない場合もありますので注意が必要です。
合弁候補が定まったら、まず意向書(LOI=Letter of Intent)を締結するのが一般的です。
LOIとは、 中国側パートナーと本格的な交渉を始める前に、合弁・合作の概要を記載するもので、合弁(合作)契 約書のたたき台となります。
契約書は全部で数十条と長くなりますが、その趣旨だけを抜粋して作成し、中国側と締結します。
一般に、LOIには次の内容が記載されます(法律上の要請ではないため、特に決まりがあるわけではなく、より限定的に記載することもあります)。
1.合弁(合作)当事者
2.企業名称
3.設立目的
4.経営範囲
5.奨励類等の認定取得
6.投資総額および登録資本
7.出資比率
8.董事会の構成
9.経営管理機構の構成
10.従業員の採用
11.利益配当
12.合弁(合作)期間
13.F/S報告書の完了時期
14.F/S報告書に基づきプロジェクトの正否を判断する旨
15.本意向書の法的効果
更に、一定期間内において相手方を唯一無二の合弁交渉相手とすることや、合弁交渉過程で得た 情報を他社に漏らさないとする守秘義務条項などを盛込みます。
この段階から、弁護士などの専門家にも関与してもらうとよいでしょう。
意向書には、特段の約定がない限り基本的に法的拘束力はないものと理解されていますが、詳細な規定を設ける場合、紛争解決機関により法的拘束力があると解されるリスクもあります(日本では 判例上認められているに過ぎないいわゆる「契約締結上の過失」が契約法第42条で定められていま す)。
したがって、意向書には詳細な規定を設ける一方、「法的拘束力はなく、当事者は何時でも一切損害賠償責任を負担することなく、プロジェクトの検討を中止することができる」ことを明示するのがよいでしょう。
ただし、設立申請の過程で実費負担が必要となることが多々ありますが、これを折半で負担することを約定する場合、当該約定に限っては法的拘束力を付与する旨を別途明示するのが妥当と思われます。
合弁交渉は、中外合弁企業法と同実施条例に則った上で、近い将来締結する「合弁契約書」や「合弁会社定款」を意識しながら進めていきます。総投資額や出資比率、原料供給や製品販売、合弁会社の組織構成や意思決定に関するガバナンスなどを討議します。
労力はかかりますが、討議が進むごとに(できれば毎回)日中2ヵ国語の「議事録」を作成し双方がサインしていくことで、「合弁契約書」や 「合弁会社定款」の作成に向け交渉が進行していきます。
合弁交渉においては、日中の文化の差異に遭遇することもよくあります。
日本人は中国人を「近似文化を保有している」と錯覚しがちですが、中国人は相手が中国人でも全く異文化を持つ人たちとして交渉することに慣れていますので、日本人に対しても「全く異文化の民族である」と認識しています。
日本側は、合弁交渉の過程で腹を立てたくなる状況に遭遇することがありますが、合弁契約書にサインするまでは、双方が自己の主張を思う存分ぶつけ合うことは双方の当然の権利ですので、何が起こっても立腹することなく冷静かつ理路整然と、交渉を続けるよう留意することが必要です。
また、中国の文化として交渉過程であっても双方が夕食を共にし、一緒に酒を飲む機会があります。
宴会時にはたとえ酔っても酔いつぶれないようにし、中国側の人間関係や権力力学、そして交渉に関する本音を聞きだせるように、通訳も含めた日本側交渉団のチームワークをしっかり維持することが肝要です。
日中合弁で中国に現地法人を設立する場合、どのよう点に注意して合弁交渉を進めなければならないのか解説させていただきましたがいかがでしたか?
上記のような注意点を書かせていただいたのには訳がございまして、私はお酒に強い自信があって中国の人とついつい白酒を飲み比べしちゃいました。
記憶は飛びました笑、、気をつけましょう!
さて次回は、中国に現地法人を設立するにあたって、どのような立地にすべきかについて共有させていただきたいと思います。
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