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3 黒の王
黒の王 ⑤
しおりを挟む「領主貴族に……と言ったって、領地が必要だろう。叔母上の言うとおりだ」デイミオンは頬づえをついたまま片手を振った。「領地はどこに?」
「西部領カーチ」ナイルは言った。
その言葉に、五公のみならず他の貴族議員たちも静まりかえった。
「かつての五公の一人、反逆者マリウスの領地はエリサ王によって接収され、王の直轄地となった。その領地はエリサ王の死によって、嫡子であられるリアナさまへ受け継がれた」
ナイルは左手のひらに指輪を取りだして示した。その場の全員の目が、白い印章指輪に注がれる。エサルの顔は驚愕を通り越していて、視線で相手を呪い殺せるならといった風情だった。
「陛下の印章か?」と、エンガスが手を伸ばした。ナイルが指輪を手わたすと眼鏡をはずし、しげしげと眺める。「スイカズラの紋章。間違いなく陛下のものだ」
他の三人が確認するのを待って、ナイルは居ずまいをただした。
「リアナ陛下の命を受け、北部領主である私ナイルは、かかる領地と領民とを、彼と同じ黄の竜騎手であるエピファニー殿に受け継がせていただくよう、陛下に請願するものです」
「すると、新しい家の設立ということになるのか?」デイミオンが面倒くさそうに言った。新しく貴族家を承認するとなれば、あれこれと煩雑な手続きが発生し、そのたびごとに議会と五公の賛同が必要になるのだ。王の背後で、発言権のない竜騎手たちも議論に飽きはじめている雰囲気が伝わってきた。
ナイルが快活に告げた。
「いいえ、マリウス卿の生家、セキエル家の当主としてお認めいただければいいのです」
「セキエル家? まだ断絶していなかったのか?」と、エサルが舌打ちする。「領主がクーデタを目論んだんだぞ。存続しているはずがない」
「復興となると面倒だな」と、デイミオン。
「どうだったかしら?」グウィナが口もとに手を当てて考え込んだ。「マリウスが出奔して、直後にエリサ王が亡くなられて……クローナン王がたしか……?」
「家は当主不在のまま残してある」それまで黙っていたエンガス卿が口を開いた。彼はクローナン王の実兄だ。「弟はマリウスに同情的だったからな」
「ね?」ナイルが手を打った。「そんなに難しくないでしょう」
「新設よりは継承のほうがましだな」と、デイミオンも同調した。「どうでもいいが、議題が山積しているんだ。はやく済ませよう」
「では、五公による採決を」
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