不・死亡遊戯の成れの果て

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2nd Stage / ワード争奪ゲーム

第13話:2nd Stage / ワード争奪ゲーム・1

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「それじゃ第二回を始めるぞ!」
「おーっ」

 クロケルの高らかな宣言にちゃんと反応を返したのは三途とゾンちゃんだけだった。昨日とは打って変わって声が明るいゾンちゃんに頬を寄せる。

「今日は眠くないの? ゾンちゃん」
「俺様フルチャージだぜ、です」
「そりゃ良かった……いや良くないか? 敵かもだし」

 デスゲーム開始から明けて翌日。
 クロケルの招集に応じ、昨日とは別の大部屋に八人の不死者たちが再集合していた。
 ずっと窓も時計もない屋内にいるので時間は不明だが、三途の割と正確な体内時計が今は正午前だと主張している。昼夜のリズムを反映しているのか、館内は昨日寝る前よりもかなり明るくなっているように感じる。
 昨夜、食事のあとは個室で風呂に入ってベッドで寝た。長い廊下にびっしり並ぶ部屋はいくらでも余っていて、一人一部屋で贅沢に宿泊できた。

「スケール感にももう驚かなくなってきたけど」

 あまりにも広すぎ、あまりにも豪華すぎる館。
 そもそもここは日本ではないのかもしれない。ここまで巨大な館を勝手に建設できる平地は小さな島国にはないはずだ。もっと広い砂漠、もしくは掘り抜いた地下とか。
 そしてどこであれ、こんな館を作るのにいったいどれだけの手間とお金がかかるのか。ちょっとやそっとの金持ちの手に負える設備ではない。地球に数人しかいない大富豪とか政府の国家予算とかが絡んでいるに違いない。
 その辺りからデスゲームの真相を考えることもできるはずだが、三途が見る限り、現状で館の調査というアプローチに興味を示している不死者は特にいないようだった。
 それは不死者に特有の余裕によるのかもしれない。謎の真相は探りたいにせよ、別に急ぎでもないし命の危険もないのだから、とりあえず最も穏当な手にオールインしてダメだったときにまた次のプランを練ればよい。
 つまり今は萌え様の煽りに素直に乗って殺し合えばいい、と考えている者が多いような気がする。つくづく綺麗にゲームに乗せられているが、それを不本意としない鷹揚さこそが不死者でもあるのかもしれない。

「今回はワード争奪ゲームだ。アルファベットを一人一文字ずつ持ち、それを奪い合って八文字の正解キーワードを組み立てるゲームだな」

 だからクロケルの説明も全員が素直に黙って聞いている。
 どうせデスゲームに参加するか否かを決める権利は運営側ではなく参加者側にある。つまりいつでもか弱い妖精をぶっ殺して出ていける。穏やかに進行しているようで水面下のパワーバランスが狂いきっている、つくづく異様なデスゲームだった。

「名前は?」

 三途の質問にルールノートを捲るクロケルの手が止まる。見たところ、クロケルは昨日と同じノートに従って今日も解説を行っていた。

「もう忘れたのか? おいらの名前はクロケル」
「アンタの名前じゃなくてゲームの名前ね。タイトルがないと締まらないじゃん」
「『棺に迷う脳幹』だぞ」
「クソ変な名前だな……ちなみに昨日のゲームはなんてやつだったの?」
「『鎖絡み舞う爆心地』だな」
「うーん、なんだろうこの感じ」
「僕はかなり好きですけどね」

 隣で満足げに頷くシャルリロの頭を撫でる。

「ゲーマーのセンスではないけど、探偵小説の章題みたいかもね」
「ですよ」

 そういえば、ヴァンヒールも館の内装が好みだとか言っていたのを思い出す。不死者たちがしっかりデスゲームに参加している遠因には、そういう部分的なセンスの一致もあるのかもしれない。

「クロケルはどう思う? てかこれってクロケルが付けたの?」
「おいらは知らないぞ。おいらの仕事はデスゲームを進めることだけだからな」
「ふーん」

 案の定、クロケルのレスポンスは淡白だ。愛らしいマスコットのような見た目をしていながら、ゲームの進行以外には関与しない姿勢を貫いている。
 思えば、クロケルがはっきり動揺を見せたのは同僚が殺されて自らも殺されかけたときが最初で最後だ。それ以外の事態では、不死者の不死性を目の当たりにしたときですらノーリアクション。
 たぶん妖精が殺戮されたときに焦っていたのはゲームの続行が不可能になりかけたからであって、同胞に対する憐憫や自分の死への恐怖ではない。クロケルは徹頭徹尾ゲームの進行にしか関心がない。

「話を戻すぞ。争奪ゲームにはタブレットを一人一枚使うんだ。これはダミーだけど、あとで全員に配布するからな」

 クロケルが傍らの大きな箱から銀色のタブレットを一枚取り出した。
 とりあえず三途が受け取って全体を軽く検分してみる。カバーなどは特に付いていない、ごく普通の平べったいタブレット端末。やや小さめで片手で軽く扱えるサイズ感だ。

「電源を入れてみてくれ。入力画面しか出ないけど」

 言われた通りにボタンをタップすると画面が点灯し、JIS配列のタッチキーボードと提出ボタンだけの簡素なUIが映る。
 電波状態や電池残量の表示は見当たらない。下方をスワイプしたり色々試してみるが、他の画面に遷移する方法は見つからなかった。

「あと背面にはアルファベットが書いてあるからな」

 タブレットをひっくり返すと、確かに裏面にはリンゴマークの代わりにアルファベットのAが刻まれている。銀の地に対して黒く刻印されているのでそれなりに目立つ。

「各プレイヤーのタブレットごとに違うアルファベットが裏面に書いてあって、全員分で八つを集めて並び替えると八文字の英単語が作れるぞ。その正解キーワードを先に画面で入力した二人が勝利になって禁断の果実を入手できるんだ。制限時間は一時間だな」
「なるほど、タブレット一枚で当てっこゲームが完結してるわけだ。そんで今回は二人抜けなんだ?」
「ああ。一応正確に言うと最大二人だな、一人しか正解しない可能性もあるから」
「はいはい、質問しつもーん」

 萌え様が手を挙げた。

「キーワードって何度でも回答できるのー?」
「いや、入力を受け付けるのは一回だけだ。正解人数が上限に達した場合は先着順になるぞ」
「入力は一人一回の早いもの勝ちで先着二人ってことだねえー」
「そうだ。あと入力の正誤判定と賞品の贈呈は制限時間が過ぎたあとに行われるからな」
「ゲーム中にはわからないんだ?」
「うむ。読み合う余地も残したいしな」

 質疑応答を聞きながら三途も考える。
 入力が一人一回というのはシビアではあるが、それが無ければ総当たりの入力スピード勝負にもなりかねないので妥当な制約ではある。
 とはいえ早い者勝ちではあるので、全てのアルファベットを知る前に見切り発車で回答するのも有効な戦略だろう。そのあたりで運や度胸も絡むために一人抜けでなく二人抜けになっているのかもしれない。

「それで? まだ本題を説明してないよね。他人のアルファベットを見る方法についてのルールは?」

 ここまでで説明されたのはあくまでも目的の骨格だけだ。アルファベットを集めて推理するゲーム、そこまではいい。
 だが、現状の理解だと全員がタブレットを裏向きに抱えたまま一時間が経過して終わってしまうだろう。他人に自分のアルファベットを公開する動機が全くないからだ。
 だから他人のアルファベットを見る方法にこそゲームの本質があるはずだと思って質問したのだが、クロケルの回答は予想外だった。

「ん? いや、特に指定はないぞ」
「は? 殴り合いでもしろって言ってる?」
「それでもいいぞ。暴力禁止のルールはないし」
「いやいや、せめて武器でもないと」
「ああ、武器は貸与できるぞ。一人一つまでだけど」
「それ実質殺し合いってことじゃあん!」
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