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2nd Stage / ワード争奪ゲーム
第22話:2nd Stage / ワード争奪ゲーム・10
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「うおわっ」
空気すら削ぎ取るように高速回転する刃が三途の鼻先を掠める。
踵で素早く地面を弾き、ギリギリで後ろにステップして避ける。逃げ遅れた髪の毛を何本か切り飛ばしたのは回る刃先か風圧か。
ギロチンの如く振り下ろされたチェンソーはそのまま地面に突き刺さるが、それでも一切の勢いを落とさない。
刃先が地中に潜り込み、岩盤をぐるりと両断。縦に一回転したゾンちゃんはよろけることなく軽やかに着地する。土埃に混じって粉砕された岩の細かい破片が舞い上がった。
「アンタ見た目の割にパワータイプじゃん! そりゃ小さいキャラにデカい武器ってのは、こんがり焼いたトーストにマーガリンみたいなもんだけど」
「俺様はバター派だぜ、です」
どれだけ乱暴に扱われても元気に唸り続けるチェンソーも大したものだが、もっと常軌を逸しているのはゾンちゃんの腕力だ。
小学生のように小柄な体躯、そしてぽっきり折れないか心配になるほど不健康そうな色白の細腕。それでいて刃渡り二メートル近い超巨大チェンソーを旗でも振るように軽々と振り回す。
ゾンちゃんが振るうチェンソーはとにかく障害物の一切を無視して動き、まるで出来の悪いインディーズゲームのように荒唐無稽に思えた。洞窟に生えた岩、そして壁や床でさえも意に介さずに切り刻む。おかげで辺りの地形が開拓されて狭い空間が広がりつつあるほどだ。
「そんで意外と動けるね、ウチは!」
そんなゾンちゃんのチェンソーをきっちり避け続けていることは三途自身にとっても意外だった。
三途は身軽で活動的ではあるが、基本はインドア派のデジタルゲーマーだ。たまに気分転換にジョギングするくらいが精々で、それ以上は真剣に鍛えた記憶などない。
しかし「だいたいゲームだとこんな動きするよな」と思った動きが割とできてしまう。横薙ぎなら飛んだりしゃがんだり、縦ならロールかステップ。コマンドでもあるかのように身体が動く。
思ったより動ける理由の一つに不死があることは間違いない。多少は身体を切り飛ばされても即座に再生できるし、タブレットさえ奪われなければ死んでも問題はない。
その理解を受け入れた頭に従い、いまや生死に係る本能を完全に制御して動けている。その適応の早さこそ三途が最も驚くべきことなのかもしれなかった。
ゾンちゃんが再びチェンソーを振りかぶった。今度は袈裟懸けに斜め上から振り下ろしてくる。天井をガリガリ削りながら迫る軌道を読み切って、三途は二歩だけ後ろに下がる。
「こんなもんでしょ」
と慢心した瞬間、顔の上半分が吹き飛んだ。
あれ目測ミスったかな、と即座に再生した頭で考える。背後で岩盤に突き刺さるチェンソーを見てようやく事態が飲み込めた。
ゾンちゃんはチェンソーから手を離したのだ。ブン投げられたチェンソーの軌道は三途が予測したラインを越えて前に伸び、三途の頭部を刈り取った。
しかしハイリスクハイリターンな攻撃ほど不死者に対して無意味なものもない。武器を手放してまで三途の顔面を消し飛ばしたとて、別に三途は死なないのだから。
「それはちょっと迂闊なんじゃない、ゾンちゃん!」
この隙を見逃す手はない。三途は自らの武器を握りしめて前に駆け出した。
その手にあるのは細い空き缶のような金属製の円柱。側面に付いたボタンの一つを押すと、先端から赤い光が伸び、一メートルほどの輝く直線が空中に描かれる。
これが三途の武器、レーザーブレード。
高密度粒子だかプラズマだか、細かい原理はよく知らないが、とにかく超高熱の光刃を形成するSFチックな近接戦闘武器。ダメ元でクロケルにお願いしてみたら本当に出てきた。
「ウチのブレードのサビに……サビはないな……えーっと、肉片にしてやるぜ……焼き肉にしてやるぜ?」
「別のエモート使った方がいいぜ、です」
「それはそう!」
口上を諦め、目の前のゾンちゃんに向かってブレードを振り上げる。
チェンソーを手放したゾンちゃんは辛うじて指先でスターターロープを摘まんでいた。ロープ伝いにブン投げたチェンソーを引き戻すつもりだったのかもしれないが、もう遅い。
「おら!」
細い手首に狙いを定めてレーザーブレードを一閃する。ロープを摘まむ手があっさり焼き切られて地面に落ちた。反作用の感触は全くない。
レンタル武器が期待通りに働いたことに頷く。元々このブレードを選んだ理由の一つは扱いやすさにある。
ゲームでは無数の武器を使い倒してきた三途だが、リアルで武器を振るった記憶はもちろんない。泥夢のように鋭い刀を振り回したところでちゃんと切れるとは思えないし、銃器を握っても照準なしで上手く当てる自信はない。
だからもっと簡単そうな武器が必要だ。コツも熟練も要らず、ただ当てるだけで見た目通りのわかりやすいダメージが生じる武器としてレーザーブレードを選択した。
「てか痛くない? ゴメン」
「何も痛くないですぜ」
「なら良かった!」
焼き切られたゾンちゃんの腕は、泥夢や萌え様のように治癒再生する気配がなかった。
平然とした表情のゾンちゃんは片手が欠損した女子小学生にしか見えない。焼け焦げた断面からは煙と臭いが立ち上り、痛々しくグロテスクな光景を晒し続けている。まるでいたいけな少女を痛めつけているような、いや、それ自体は強ち間違いでもないのだが。
ややいたたまれない気持ちで見下ろしていると、ゾンちゃんの腹部にタブレットを発見した。細い胴体に食い込むように、というか実際に食い込んでいる。看板や柵を飲み込んで成長する樹木が頭に浮かんだ。
まさかこんな形で持ち歩いているとは思わなかったが、ブレードで軽く刻めばすぐに摘出できそうだ。
「ゴメン、もうちょっと切るね!」
「俺様まだいけるぜ、です」
ゾンちゃんが軽く舌を出した途端、今度は三途の全身が硬直した。
「なになになになに」
金縛り的な魔法か。いや、ゾンちゃんの世界観はそういう感じではない。
一瞬混乱してから自分の身体がロープで拘束されていることに気付く。細いが強度のある金属ロープが腕から足までグルグルと巻き付いていた。
振り返ってロープの出所を探ってから状況を理解する。
さっき切り落としたはずのゾンちゃんの腕が、まるで自分の意志を持つかのように軽快に動いていた。手首から先だけでスターターロープをカウボーイのように投げ、三途の身体に巻き付けたのだ。
ゾンちゃんの生首が転がる姿は今までも何度か見ていたが、まさか切断された部位が独立して動けるとまでは思っていなかった。
「なるほど、そういうこと」
本命はチェンソーの刃ではなくロープの方だったのだ。さっきのチェンソー投擲も三途を誘い込むための布石に過ぎなかった。
不死者を殺せばどうせ再生してしまう、だから致命傷を避けて拘束するのがセオリー。遊道楽同様、ゾンちゃんも最初からそれを狙っていた。
締め上げられた身体では腕も足も動かせない。腰に挟んだタブレットにゾンちゃん本体の腕が伸びてくるが、しかし三途はお返しとばかりに舌を出してみせた。
「これダースモールモデルね」
ブレード側面にある二つ目のスイッチを指先で押し込んだ。
すると今までとは逆の方向、すなわち三途自身に向けて赤いレーザーが飛び出す。超高熱が身体の真ん中を貫き、致命傷によって即座に不死性がトリガーする。僅かに座標がズレて再生することで拘束をすり抜け、ロープは虚空を締めて絡まった。
これがレーザーブレードを武器に選んだ二つ目の理由。自分で自分に致命傷を与えることが容易なのだ。
三途の不死性において自殺ほど便利な手札もない。自殺すればズレた座標でリスポーンするため、拘束された状態からもすぐに緊急脱出できる。それはさっき泥夢に殺されて助けられたときに気付いたことだ。
「なかなかやるな、です」
「そっちもね! ちなみにこれは通常エモート」
ゾンちゃんが立ち上がり、三途もブレードを構え直した。お互いに一手を見せ合ったあとの仕切り直し。
ゾンちゃん本体と切り落とした腕、同時に動ける敵が複数いる状況はかなり悩ましい。無闇にバラすと逆に手数が増えるとなると、何でもすぐに焼き切ってしまうレーザーブレードは対ゾンちゃんでは相性が悪いのかもしれない。
どうしようかなと思案しつつ、そういえば泥夢たちの戦いはどうなったかと横に視線を向けた三途は息を呑んだ。
「なんだこれ!」
骨と肉の海が地面に広がっていた。ゾンちゃんの転がった手首どころの騒ぎではない。
まるで合戦が終わったあとの屍の山のような、何十体分もの骨と肉。それこそが熟練した不死者二人が戦う中で生み出された副産物だった。
泥夢の不死性については既に知っている。細く短い刀を自らの身体に突き刺し、無限に再生する骨を引き出すことで武器として使う。そうやって使い捨てた骨が地面に溜まっていく。
泥夢の戦い方も相当に奇怪だが、HEAVENの異常さはそれを遥かに上回っていた。
拳銃を構えて駆け抜けるHEAVENの背後からはまるで道標のように肉片がボトボト落ちていく。
それは手だったり足だったり腰だったり。明確に何とは言い難い、出来損ないのパーツたちも含まれている。空中からいきなり現れたようにも、HEAVEN自身が生み出しているようにも見える。
少し考えてから、三途は最もしっくりくる表現を見つける。
肉の残像。HEAVENが動くたび、その軌跡に沿って肉の残像が産出されている。
それがどういう理屈で何が起きているのかはさっぱりわからない。わかることと言えば、無尽蔵に生まれる肉片がガードや足場となって泥夢の攻撃への対応に使われていることくらいだ。
これが極まった不死者同士の戦い。思わず自分の戦闘を忘れて目を凝らし始めたとき。
「全員ストップ!」
空気すら削ぎ取るように高速回転する刃が三途の鼻先を掠める。
踵で素早く地面を弾き、ギリギリで後ろにステップして避ける。逃げ遅れた髪の毛を何本か切り飛ばしたのは回る刃先か風圧か。
ギロチンの如く振り下ろされたチェンソーはそのまま地面に突き刺さるが、それでも一切の勢いを落とさない。
刃先が地中に潜り込み、岩盤をぐるりと両断。縦に一回転したゾンちゃんはよろけることなく軽やかに着地する。土埃に混じって粉砕された岩の細かい破片が舞い上がった。
「アンタ見た目の割にパワータイプじゃん! そりゃ小さいキャラにデカい武器ってのは、こんがり焼いたトーストにマーガリンみたいなもんだけど」
「俺様はバター派だぜ、です」
どれだけ乱暴に扱われても元気に唸り続けるチェンソーも大したものだが、もっと常軌を逸しているのはゾンちゃんの腕力だ。
小学生のように小柄な体躯、そしてぽっきり折れないか心配になるほど不健康そうな色白の細腕。それでいて刃渡り二メートル近い超巨大チェンソーを旗でも振るように軽々と振り回す。
ゾンちゃんが振るうチェンソーはとにかく障害物の一切を無視して動き、まるで出来の悪いインディーズゲームのように荒唐無稽に思えた。洞窟に生えた岩、そして壁や床でさえも意に介さずに切り刻む。おかげで辺りの地形が開拓されて狭い空間が広がりつつあるほどだ。
「そんで意外と動けるね、ウチは!」
そんなゾンちゃんのチェンソーをきっちり避け続けていることは三途自身にとっても意外だった。
三途は身軽で活動的ではあるが、基本はインドア派のデジタルゲーマーだ。たまに気分転換にジョギングするくらいが精々で、それ以上は真剣に鍛えた記憶などない。
しかし「だいたいゲームだとこんな動きするよな」と思った動きが割とできてしまう。横薙ぎなら飛んだりしゃがんだり、縦ならロールかステップ。コマンドでもあるかのように身体が動く。
思ったより動ける理由の一つに不死があることは間違いない。多少は身体を切り飛ばされても即座に再生できるし、タブレットさえ奪われなければ死んでも問題はない。
その理解を受け入れた頭に従い、いまや生死に係る本能を完全に制御して動けている。その適応の早さこそ三途が最も驚くべきことなのかもしれなかった。
ゾンちゃんが再びチェンソーを振りかぶった。今度は袈裟懸けに斜め上から振り下ろしてくる。天井をガリガリ削りながら迫る軌道を読み切って、三途は二歩だけ後ろに下がる。
「こんなもんでしょ」
と慢心した瞬間、顔の上半分が吹き飛んだ。
あれ目測ミスったかな、と即座に再生した頭で考える。背後で岩盤に突き刺さるチェンソーを見てようやく事態が飲み込めた。
ゾンちゃんはチェンソーから手を離したのだ。ブン投げられたチェンソーの軌道は三途が予測したラインを越えて前に伸び、三途の頭部を刈り取った。
しかしハイリスクハイリターンな攻撃ほど不死者に対して無意味なものもない。武器を手放してまで三途の顔面を消し飛ばしたとて、別に三途は死なないのだから。
「それはちょっと迂闊なんじゃない、ゾンちゃん!」
この隙を見逃す手はない。三途は自らの武器を握りしめて前に駆け出した。
その手にあるのは細い空き缶のような金属製の円柱。側面に付いたボタンの一つを押すと、先端から赤い光が伸び、一メートルほどの輝く直線が空中に描かれる。
これが三途の武器、レーザーブレード。
高密度粒子だかプラズマだか、細かい原理はよく知らないが、とにかく超高熱の光刃を形成するSFチックな近接戦闘武器。ダメ元でクロケルにお願いしてみたら本当に出てきた。
「ウチのブレードのサビに……サビはないな……えーっと、肉片にしてやるぜ……焼き肉にしてやるぜ?」
「別のエモート使った方がいいぜ、です」
「それはそう!」
口上を諦め、目の前のゾンちゃんに向かってブレードを振り上げる。
チェンソーを手放したゾンちゃんは辛うじて指先でスターターロープを摘まんでいた。ロープ伝いにブン投げたチェンソーを引き戻すつもりだったのかもしれないが、もう遅い。
「おら!」
細い手首に狙いを定めてレーザーブレードを一閃する。ロープを摘まむ手があっさり焼き切られて地面に落ちた。反作用の感触は全くない。
レンタル武器が期待通りに働いたことに頷く。元々このブレードを選んだ理由の一つは扱いやすさにある。
ゲームでは無数の武器を使い倒してきた三途だが、リアルで武器を振るった記憶はもちろんない。泥夢のように鋭い刀を振り回したところでちゃんと切れるとは思えないし、銃器を握っても照準なしで上手く当てる自信はない。
だからもっと簡単そうな武器が必要だ。コツも熟練も要らず、ただ当てるだけで見た目通りのわかりやすいダメージが生じる武器としてレーザーブレードを選択した。
「てか痛くない? ゴメン」
「何も痛くないですぜ」
「なら良かった!」
焼き切られたゾンちゃんの腕は、泥夢や萌え様のように治癒再生する気配がなかった。
平然とした表情のゾンちゃんは片手が欠損した女子小学生にしか見えない。焼け焦げた断面からは煙と臭いが立ち上り、痛々しくグロテスクな光景を晒し続けている。まるでいたいけな少女を痛めつけているような、いや、それ自体は強ち間違いでもないのだが。
ややいたたまれない気持ちで見下ろしていると、ゾンちゃんの腹部にタブレットを発見した。細い胴体に食い込むように、というか実際に食い込んでいる。看板や柵を飲み込んで成長する樹木が頭に浮かんだ。
まさかこんな形で持ち歩いているとは思わなかったが、ブレードで軽く刻めばすぐに摘出できそうだ。
「ゴメン、もうちょっと切るね!」
「俺様まだいけるぜ、です」
ゾンちゃんが軽く舌を出した途端、今度は三途の全身が硬直した。
「なになになになに」
金縛り的な魔法か。いや、ゾンちゃんの世界観はそういう感じではない。
一瞬混乱してから自分の身体がロープで拘束されていることに気付く。細いが強度のある金属ロープが腕から足までグルグルと巻き付いていた。
振り返ってロープの出所を探ってから状況を理解する。
さっき切り落としたはずのゾンちゃんの腕が、まるで自分の意志を持つかのように軽快に動いていた。手首から先だけでスターターロープをカウボーイのように投げ、三途の身体に巻き付けたのだ。
ゾンちゃんの生首が転がる姿は今までも何度か見ていたが、まさか切断された部位が独立して動けるとまでは思っていなかった。
「なるほど、そういうこと」
本命はチェンソーの刃ではなくロープの方だったのだ。さっきのチェンソー投擲も三途を誘い込むための布石に過ぎなかった。
不死者を殺せばどうせ再生してしまう、だから致命傷を避けて拘束するのがセオリー。遊道楽同様、ゾンちゃんも最初からそれを狙っていた。
締め上げられた身体では腕も足も動かせない。腰に挟んだタブレットにゾンちゃん本体の腕が伸びてくるが、しかし三途はお返しとばかりに舌を出してみせた。
「これダースモールモデルね」
ブレード側面にある二つ目のスイッチを指先で押し込んだ。
すると今までとは逆の方向、すなわち三途自身に向けて赤いレーザーが飛び出す。超高熱が身体の真ん中を貫き、致命傷によって即座に不死性がトリガーする。僅かに座標がズレて再生することで拘束をすり抜け、ロープは虚空を締めて絡まった。
これがレーザーブレードを武器に選んだ二つ目の理由。自分で自分に致命傷を与えることが容易なのだ。
三途の不死性において自殺ほど便利な手札もない。自殺すればズレた座標でリスポーンするため、拘束された状態からもすぐに緊急脱出できる。それはさっき泥夢に殺されて助けられたときに気付いたことだ。
「なかなかやるな、です」
「そっちもね! ちなみにこれは通常エモート」
ゾンちゃんが立ち上がり、三途もブレードを構え直した。お互いに一手を見せ合ったあとの仕切り直し。
ゾンちゃん本体と切り落とした腕、同時に動ける敵が複数いる状況はかなり悩ましい。無闇にバラすと逆に手数が増えるとなると、何でもすぐに焼き切ってしまうレーザーブレードは対ゾンちゃんでは相性が悪いのかもしれない。
どうしようかなと思案しつつ、そういえば泥夢たちの戦いはどうなったかと横に視線を向けた三途は息を呑んだ。
「なんだこれ!」
骨と肉の海が地面に広がっていた。ゾンちゃんの転がった手首どころの騒ぎではない。
まるで合戦が終わったあとの屍の山のような、何十体分もの骨と肉。それこそが熟練した不死者二人が戦う中で生み出された副産物だった。
泥夢の不死性については既に知っている。細く短い刀を自らの身体に突き刺し、無限に再生する骨を引き出すことで武器として使う。そうやって使い捨てた骨が地面に溜まっていく。
泥夢の戦い方も相当に奇怪だが、HEAVENの異常さはそれを遥かに上回っていた。
拳銃を構えて駆け抜けるHEAVENの背後からはまるで道標のように肉片がボトボト落ちていく。
それは手だったり足だったり腰だったり。明確に何とは言い難い、出来損ないのパーツたちも含まれている。空中からいきなり現れたようにも、HEAVEN自身が生み出しているようにも見える。
少し考えてから、三途は最もしっくりくる表現を見つける。
肉の残像。HEAVENが動くたび、その軌跡に沿って肉の残像が産出されている。
それがどういう理屈で何が起きているのかはさっぱりわからない。わかることと言えば、無尽蔵に生まれる肉片がガードや足場となって泥夢の攻撃への対応に使われていることくらいだ。
これが極まった不死者同士の戦い。思わず自分の戦闘を忘れて目を凝らし始めたとき。
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