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3rd Stage / 不死人狼ゲーム
第34話:3rd Stage / 不死人狼ゲーム・8
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「わかりました。人狼はあなたですね。遊道楽」
三途が答えに辿り着いたのと、HEAVENが確信に満ちた宣告を下したのは同時だった。
同じことの裏表だったのだ。ヴァンヒールが不正解だった理由、そして遊道楽が放送に残した台詞。
三途はHEAVENも同じ答えに至ったらしいことに安堵した。やはり村の趨勢を動かすのは生者であるべきだ。死者がいつまでも歩き回っているわけにはいかない。
「ほう? 今はヴァンヒールくんの白黒を決める時間だと思っていたが」
「同じことですよ。ヴァンヒールは人狼ではなく、かつ、あなたが人狼であることを示します」
「やってみたまえよ」
「まず、クロケルは正解キーワードが一つであるとは一度も言っていません。仮に正解キーワードが複数あるとした場合、正解者を先着順とするルールの解釈も僅かに変わります」
クロケルは萌え様の質問に答える形で以下のように説明した。
「入力を受け付けるのは一回だけ」「正解人数が上限に達した場合は先着順」。
今まで、入力回数制限はプレイヤーごとの入力回数に対するものだと認識されていた。しかし正解キーワードが複数あるのだとしたら、キーワードごとに制限を課した文章とも読める。つまり正しい解釈は以下の通り。
キーワードそれぞれについて正解を受け付けるのは先着一人まで。つまり回答者は先行の正解者とは異なるキーワードを入力しなければ正解扱いにはならない。
「前提がよくわからんな疑問。確かにクロケルは正解が一つとは言っていないが、TRIANGLEはTRIANGLEであってそれ以外のものではないだろう?」
「アナグラムですよ。TRIANGLEを並び替えるとINTEGRALになります。同じ八文字のワードから作れる以上、どちらも正解と見做すのが妥当でしょう。ヴァンヒールの入力が通らなかったのは、先にTRIANGLEを入力したプレイヤーがいたからです」
「なるほど面白い推理だが、それは誰でも可能では? 遊道楽が人狼である理由にはならないと思うがね」
「『遊道楽は完全ではない』。覚えていますか? あなたがAABBを投下する際に述べた台詞です」
「それが何か? 武器の貸借について大袈裟に喋っただけだが」
「あなたの本当のメッセージはこうです。遊道楽は完全ではない、つまり遊道楽はINTEGRALではない、遊道楽の入力はINTEGRALではない。すなわち正解キーワードにはINTEGRALがまだ残っているという意味です。これはあなたが正解キーワードを知った上でアナグラムにまで気付いていたことの動かぬ証拠です」
「深読みもここまで来ると芸術的だが……あとの裁断は村人諸君に任せるとしようか」
遊道楽は頭の後ろに腕を組み、微笑みながら目を閉じた。らしくない振る舞いを三途は実質的な降参と解釈するし、他のプレイヤーも同じだろう。
残り一分。泥夢が全員を見渡した。
「もう投票して問題無いか。他に論じる事が有る者は名乗り出ても良いが、無ければ投票先を指せ」
シャルリロ、HEAVEN、泥夢が遊道楽を指す。遊道楽自身は誰を指すこともなく動かなかった。
ゾンちゃんだけは頭を抱えて指先をぐるぐる回すジェスチャーで考え中を示していたが、もう既に遊道楽が最多得票で確定した。
三途が辿り着いた結論も同じだった。遊道楽が人狼であり、ヴァンヒールは人狼でない。
「……」
だが、疑問はまだ残っている。なぜ遊道楽はわざわざ他のプレイヤーにヒントを発したのだろう?
単純に考えれば、遊道楽らしい遊び心。どうせもう自分は正解している自信があるし、ゲームを盛り上げるためにヒントを出しておく。それはいかにも遊道楽がやりそうなことだ。
しかし、それはこうして人狼ゲームの際に不利になるリスクを背負ってまでやることだったのだろうか。いや、この疑問は少しおかしい。遊道楽が争奪ゲーム中に人狼ゲームの内容を知っていたはずはないからだ。
「……」
だがしかし。少なくとも、昨日皆で入浴した時点では遊道楽は人狼ゲームのルールを知っていたはずなのだ。
そうでなければ昨晩に名乗り出ない理由がないから。勝者が名乗り出なかったから人狼ゲームが成立したのではなく、人狼ゲームを成立させるために勝者は名乗り出なかったと考えた方が自然だろう。
だとすると、争奪ゲーム終了から入浴までのどこかで遊道楽は次のステージが人狼ゲームであると知ったことになる。
となると、やはり禁断の果実を食べたタイミングか。そこでデスゲームの真相を把握すると同時に、次が人狼ゲームだということも知ったので、勝者として名乗り出ないことも決めた。この流れが一番違和感がない。
結局、戻ってくるのはこの疑問だ。
「デスゲームの真相って何?」
そういえば、萌え様も禁断の果実を食べた直後に不死者全員を煽ってデスゲームを成立させた。
遊道楽も同じように禁断の果実を食べた時点で人狼ゲームに協力することを決めたのだとしたら、きっとそうしなければならない理由がデスゲームの真相には含まれているのだ。
「……」
三途の頭に巨大な疑念が渦巻きつつあった。いま進行している人狼ゲームの推理なんかよりも遥かに大きな思考の渦が。
このデスゲームは、個別のステージを跨いだもっと大きなシステムとして成立しているのではないか? 禁断の果実、デスゲームの真相、ゲームの成立条件、ゲーム内容。そのいずれもが少しずつ絡み合って駆動しているように感じる。
各ステージをプレイすることでようやく見えてくる巨大な謎の全貌。その具体的な内実はまだ見えないが、そういうぼんやりとした輪郭が存在することを三回戦にしてようやく把握するに至ったのかもしれない。
「いいだろう! それでは処刑をお願いしよう」
三途の思考を遊道楽の大声が遮った。考え事をしているうちに、村では投票が無事に終わって遊道楽の処刑が確定したらしい。
「個人的にはヴァンヒールに頼みたいところだな希望。血を吸われる体験は貴重だから」
「駄目だぜ、です。除名された村人は処刑に参加できねーですからな。俺様がやったるぜ、です」
ゾンちゃんが席を降りてぴょんと跳ね、白く細い腕で遊道楽の首筋を後ろから可愛くチョップする。相変わらず見た目に似合わぬ怪力で首がスポンと跳ねた。
遊道楽の不死性が発動する。いや、生首が物理法則を無視してコミカルに吹っ飛んでいった時点で既に発動していたのかもしれない。
どこからともなく広がった煙幕と共に人体切断ボックスが現れ、中から無傷で現れた遊道楽がお辞儀。斬首すらも奇術だったことにする奥義が死亡を回避する。
「さて、これでゲームが終わるかどうかだけど……」
全員の視線がクロケルに集まった。
クロケルは動かない。いや、翼をパタパタと可愛く動かしてはいるが、少なくとも何もコールしていない。
ということは、ゲームはまだ終わっていない。人狼側の勝利条件も、村人側の勝利条件も満たされていない。
「耐えたあ~」
安堵の息を吐きながら、三途はもう次の昼フェイズでの進行を考え始めていた。
まず決めないといけないのはシャルリロの処遇。遊道楽が人狼なら黒出ししていたシャルリロは村人濃厚ではあるが、安全を取ってローラーで吊る手もなくはない。
遊道楽の動向を踏まえて、シャルリロは何をしていたのかという弁解がもう少し欲しいところだ。
「それじゃ、二回目の夜フェイズを始めてくれ」
クロケルが移行を宣言した瞬間、シャルリロのリングが爆発した。
三途が答えに辿り着いたのと、HEAVENが確信に満ちた宣告を下したのは同時だった。
同じことの裏表だったのだ。ヴァンヒールが不正解だった理由、そして遊道楽が放送に残した台詞。
三途はHEAVENも同じ答えに至ったらしいことに安堵した。やはり村の趨勢を動かすのは生者であるべきだ。死者がいつまでも歩き回っているわけにはいかない。
「ほう? 今はヴァンヒールくんの白黒を決める時間だと思っていたが」
「同じことですよ。ヴァンヒールは人狼ではなく、かつ、あなたが人狼であることを示します」
「やってみたまえよ」
「まず、クロケルは正解キーワードが一つであるとは一度も言っていません。仮に正解キーワードが複数あるとした場合、正解者を先着順とするルールの解釈も僅かに変わります」
クロケルは萌え様の質問に答える形で以下のように説明した。
「入力を受け付けるのは一回だけ」「正解人数が上限に達した場合は先着順」。
今まで、入力回数制限はプレイヤーごとの入力回数に対するものだと認識されていた。しかし正解キーワードが複数あるのだとしたら、キーワードごとに制限を課した文章とも読める。つまり正しい解釈は以下の通り。
キーワードそれぞれについて正解を受け付けるのは先着一人まで。つまり回答者は先行の正解者とは異なるキーワードを入力しなければ正解扱いにはならない。
「前提がよくわからんな疑問。確かにクロケルは正解が一つとは言っていないが、TRIANGLEはTRIANGLEであってそれ以外のものではないだろう?」
「アナグラムですよ。TRIANGLEを並び替えるとINTEGRALになります。同じ八文字のワードから作れる以上、どちらも正解と見做すのが妥当でしょう。ヴァンヒールの入力が通らなかったのは、先にTRIANGLEを入力したプレイヤーがいたからです」
「なるほど面白い推理だが、それは誰でも可能では? 遊道楽が人狼である理由にはならないと思うがね」
「『遊道楽は完全ではない』。覚えていますか? あなたがAABBを投下する際に述べた台詞です」
「それが何か? 武器の貸借について大袈裟に喋っただけだが」
「あなたの本当のメッセージはこうです。遊道楽は完全ではない、つまり遊道楽はINTEGRALではない、遊道楽の入力はINTEGRALではない。すなわち正解キーワードにはINTEGRALがまだ残っているという意味です。これはあなたが正解キーワードを知った上でアナグラムにまで気付いていたことの動かぬ証拠です」
「深読みもここまで来ると芸術的だが……あとの裁断は村人諸君に任せるとしようか」
遊道楽は頭の後ろに腕を組み、微笑みながら目を閉じた。らしくない振る舞いを三途は実質的な降参と解釈するし、他のプレイヤーも同じだろう。
残り一分。泥夢が全員を見渡した。
「もう投票して問題無いか。他に論じる事が有る者は名乗り出ても良いが、無ければ投票先を指せ」
シャルリロ、HEAVEN、泥夢が遊道楽を指す。遊道楽自身は誰を指すこともなく動かなかった。
ゾンちゃんだけは頭を抱えて指先をぐるぐる回すジェスチャーで考え中を示していたが、もう既に遊道楽が最多得票で確定した。
三途が辿り着いた結論も同じだった。遊道楽が人狼であり、ヴァンヒールは人狼でない。
「……」
だが、疑問はまだ残っている。なぜ遊道楽はわざわざ他のプレイヤーにヒントを発したのだろう?
単純に考えれば、遊道楽らしい遊び心。どうせもう自分は正解している自信があるし、ゲームを盛り上げるためにヒントを出しておく。それはいかにも遊道楽がやりそうなことだ。
しかし、それはこうして人狼ゲームの際に不利になるリスクを背負ってまでやることだったのだろうか。いや、この疑問は少しおかしい。遊道楽が争奪ゲーム中に人狼ゲームの内容を知っていたはずはないからだ。
「……」
だがしかし。少なくとも、昨日皆で入浴した時点では遊道楽は人狼ゲームのルールを知っていたはずなのだ。
そうでなければ昨晩に名乗り出ない理由がないから。勝者が名乗り出なかったから人狼ゲームが成立したのではなく、人狼ゲームを成立させるために勝者は名乗り出なかったと考えた方が自然だろう。
だとすると、争奪ゲーム終了から入浴までのどこかで遊道楽は次のステージが人狼ゲームであると知ったことになる。
となると、やはり禁断の果実を食べたタイミングか。そこでデスゲームの真相を把握すると同時に、次が人狼ゲームだということも知ったので、勝者として名乗り出ないことも決めた。この流れが一番違和感がない。
結局、戻ってくるのはこの疑問だ。
「デスゲームの真相って何?」
そういえば、萌え様も禁断の果実を食べた直後に不死者全員を煽ってデスゲームを成立させた。
遊道楽も同じように禁断の果実を食べた時点で人狼ゲームに協力することを決めたのだとしたら、きっとそうしなければならない理由がデスゲームの真相には含まれているのだ。
「……」
三途の頭に巨大な疑念が渦巻きつつあった。いま進行している人狼ゲームの推理なんかよりも遥かに大きな思考の渦が。
このデスゲームは、個別のステージを跨いだもっと大きなシステムとして成立しているのではないか? 禁断の果実、デスゲームの真相、ゲームの成立条件、ゲーム内容。そのいずれもが少しずつ絡み合って駆動しているように感じる。
各ステージをプレイすることでようやく見えてくる巨大な謎の全貌。その具体的な内実はまだ見えないが、そういうぼんやりとした輪郭が存在することを三回戦にしてようやく把握するに至ったのかもしれない。
「いいだろう! それでは処刑をお願いしよう」
三途の思考を遊道楽の大声が遮った。考え事をしているうちに、村では投票が無事に終わって遊道楽の処刑が確定したらしい。
「個人的にはヴァンヒールに頼みたいところだな希望。血を吸われる体験は貴重だから」
「駄目だぜ、です。除名された村人は処刑に参加できねーですからな。俺様がやったるぜ、です」
ゾンちゃんが席を降りてぴょんと跳ね、白く細い腕で遊道楽の首筋を後ろから可愛くチョップする。相変わらず見た目に似合わぬ怪力で首がスポンと跳ねた。
遊道楽の不死性が発動する。いや、生首が物理法則を無視してコミカルに吹っ飛んでいった時点で既に発動していたのかもしれない。
どこからともなく広がった煙幕と共に人体切断ボックスが現れ、中から無傷で現れた遊道楽がお辞儀。斬首すらも奇術だったことにする奥義が死亡を回避する。
「さて、これでゲームが終わるかどうかだけど……」
全員の視線がクロケルに集まった。
クロケルは動かない。いや、翼をパタパタと可愛く動かしてはいるが、少なくとも何もコールしていない。
ということは、ゲームはまだ終わっていない。人狼側の勝利条件も、村人側の勝利条件も満たされていない。
「耐えたあ~」
安堵の息を吐きながら、三途はもう次の昼フェイズでの進行を考え始めていた。
まず決めないといけないのはシャルリロの処遇。遊道楽が人狼なら黒出ししていたシャルリロは村人濃厚ではあるが、安全を取ってローラーで吊る手もなくはない。
遊道楽の動向を踏まえて、シャルリロは何をしていたのかという弁解がもう少し欲しいところだ。
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