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第1章 錆びた魔剣
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まあ、天才っていうのはいるもんだ。
カイルは目前の小柄な少女を見ながら、そう思った。
彼自身も17歳の割には王国の騎士団の見習い騎士の中でもそこそこ腕が立つ方だと自負している。しかし、彼と対峙している少女はその彼よりも呑み込みが早い。
彼の攻撃を練習用の木剣であっさりと受け流し、引くと見せかけながら鋭い突きを繰り込んでくる。
「!」
彼はすんででそれをかわしたが、わずかに体勢を崩した。その体勢の隙をついて、さらに二撃、素早い攻撃を食らわせてくる。袈裟懸けに一撃、返す手で逆袈裟。二手目で彼の脇をかする。
真剣だったら手を負っただろう。
カイルはひやりとして、後退した。
「そこまで」と老人の声が告げた。
カイルは顔を上げ、声の主を見やった。彼と少女の師範をしている、引退したかつての騎士団長、ウィルフレッド・バーグマン。
「もうちょっとやりたいよ!」と小柄な少女が師範にねだった。
「昼飯の時間だ、俺は腹が減ったぞ」と人柄のよさそうな表情で師範は言い返した。
王都のはずれの城門にほど近いバーグマン家の屋敷、古いが造りはしっかりとして、まるで持ち主を現しているかのようだ。その屋敷の庭で彼らは稽古をつけてもらっていたのだ。折しも太陽は南中し、昼時を示していた。
老人の屋敷の使用人頭が戸口から主の様子をうかがっていた。
「今日はいい天気だ、外で昼飯にしよう、カイルの分も頼む」と老人が声をかけると、使用人たちは慣れたもので、すぐに庭に折り畳みのテーブルを運び出した。
「じゃあ、遠慮なくいただきます、師匠! ティナ、昼飯の後でもう少し付き合えよ」とカイル。
少女は頷こうとして、はっとして首を振った。
「あ、今日は無理」
ランチを運んできた若い使用人がちらりといたずらな笑みを向ける。
「おや、カイル様、振られましたね?」
「バカ」とカイルは応じた。そんなからかいを真に受けるつもりはないのだが、少々照れ臭く、頬が上気してしまう。
「今日は爺ちゃんの家の片付けなんだ」とティナが言った。
ティナの祖父はつい最近亡くなった。人間よりも長命なドワーフといえど、300歳を目前にすれば、衰えもする。祖父が亡くなってから、少女は今後の身の振り方を考えつつ、バーグマンの屋敷に間借りしていた。ウィルフレッドと少女の祖父は仲が良かったため、ティナも剣の弟子というよりも、まるで家族同然の扱いだ。
「……そうか」とカイルは答えた。
テーブルの上に軽いランチが並んでいる。彼らは準備された椅子に腰を下ろした。豪華ではないものの、使用人たちの心がこもっている。
「いただきます!」少女は早速パンに手を伸ばした。彼女は人間の父親とドワーフの母親の間に生まれた。15歳という年齢の割には小柄でどことなく幼く見える。
「お前も暇なら来るか、カイル?」と師匠が尋ねた。
「いいんですか? 俺が行っても?」
「うん、片付けの手は多い方がいいよ」とティナが食べながら応じた。「爺ちゃんの家の古い蔵なんだけどさ、長い間、鍵がなくなっていたんだよ。鍛冶屋のボスコークの蔵だよ! お宝が出てくるかもしれないだろ?」
「おいおい、爺さんの形見は大事にしろって……」とカイルは苦笑した。
妙にあっけらかんとしているのだが、それも周囲に心配させないためだ、ティナにはそんなところがあった。
「蔵で埋もれているよりも、誰かが使った方がいい。爺ちゃんだって、騎士見習いのあんたが形見をもらって使ってくれれば、きっと喜ぶよ」
「んん…… まあ、それじゃ、手伝いだけでも」とカイルは応じた。
彼自身は彼女の祖父と親しかったというほどではなかった。剣を手に入れるときにいろいろと助言してもらったが、実際に剣を打ってもらったのは弟子のドーハンだ。
「儂の初めての剣もボスコーク親父だったからなあ……」と食べながらウィルフレッドがしみじみと口にした。
「これからはドーハンに頼んでやってよ」とティナはすかさず言った。「爺ちゃんにみっちり仕込まれてるから、腕前に関しちゃ心配ないよ」
「しっかり営業してるな」とカイルは笑った。
「うむむ、なかなか隠居させてはもらえんようだな?」
「当然! あたしに教えてもらうためにも、先生にはずっと頑張ってもらわないと」
「やれやれ……」と老人は笑った。
カイルは目前の小柄な少女を見ながら、そう思った。
彼自身も17歳の割には王国の騎士団の見習い騎士の中でもそこそこ腕が立つ方だと自負している。しかし、彼と対峙している少女はその彼よりも呑み込みが早い。
彼の攻撃を練習用の木剣であっさりと受け流し、引くと見せかけながら鋭い突きを繰り込んでくる。
「!」
彼はすんででそれをかわしたが、わずかに体勢を崩した。その体勢の隙をついて、さらに二撃、素早い攻撃を食らわせてくる。袈裟懸けに一撃、返す手で逆袈裟。二手目で彼の脇をかする。
真剣だったら手を負っただろう。
カイルはひやりとして、後退した。
「そこまで」と老人の声が告げた。
カイルは顔を上げ、声の主を見やった。彼と少女の師範をしている、引退したかつての騎士団長、ウィルフレッド・バーグマン。
「もうちょっとやりたいよ!」と小柄な少女が師範にねだった。
「昼飯の時間だ、俺は腹が減ったぞ」と人柄のよさそうな表情で師範は言い返した。
王都のはずれの城門にほど近いバーグマン家の屋敷、古いが造りはしっかりとして、まるで持ち主を現しているかのようだ。その屋敷の庭で彼らは稽古をつけてもらっていたのだ。折しも太陽は南中し、昼時を示していた。
老人の屋敷の使用人頭が戸口から主の様子をうかがっていた。
「今日はいい天気だ、外で昼飯にしよう、カイルの分も頼む」と老人が声をかけると、使用人たちは慣れたもので、すぐに庭に折り畳みのテーブルを運び出した。
「じゃあ、遠慮なくいただきます、師匠! ティナ、昼飯の後でもう少し付き合えよ」とカイル。
少女は頷こうとして、はっとして首を振った。
「あ、今日は無理」
ランチを運んできた若い使用人がちらりといたずらな笑みを向ける。
「おや、カイル様、振られましたね?」
「バカ」とカイルは応じた。そんなからかいを真に受けるつもりはないのだが、少々照れ臭く、頬が上気してしまう。
「今日は爺ちゃんの家の片付けなんだ」とティナが言った。
ティナの祖父はつい最近亡くなった。人間よりも長命なドワーフといえど、300歳を目前にすれば、衰えもする。祖父が亡くなってから、少女は今後の身の振り方を考えつつ、バーグマンの屋敷に間借りしていた。ウィルフレッドと少女の祖父は仲が良かったため、ティナも剣の弟子というよりも、まるで家族同然の扱いだ。
「……そうか」とカイルは答えた。
テーブルの上に軽いランチが並んでいる。彼らは準備された椅子に腰を下ろした。豪華ではないものの、使用人たちの心がこもっている。
「いただきます!」少女は早速パンに手を伸ばした。彼女は人間の父親とドワーフの母親の間に生まれた。15歳という年齢の割には小柄でどことなく幼く見える。
「お前も暇なら来るか、カイル?」と師匠が尋ねた。
「いいんですか? 俺が行っても?」
「うん、片付けの手は多い方がいいよ」とティナが食べながら応じた。「爺ちゃんの家の古い蔵なんだけどさ、長い間、鍵がなくなっていたんだよ。鍛冶屋のボスコークの蔵だよ! お宝が出てくるかもしれないだろ?」
「おいおい、爺さんの形見は大事にしろって……」とカイルは苦笑した。
妙にあっけらかんとしているのだが、それも周囲に心配させないためだ、ティナにはそんなところがあった。
「蔵で埋もれているよりも、誰かが使った方がいい。爺ちゃんだって、騎士見習いのあんたが形見をもらって使ってくれれば、きっと喜ぶよ」
「んん…… まあ、それじゃ、手伝いだけでも」とカイルは応じた。
彼自身は彼女の祖父と親しかったというほどではなかった。剣を手に入れるときにいろいろと助言してもらったが、実際に剣を打ってもらったのは弟子のドーハンだ。
「儂の初めての剣もボスコーク親父だったからなあ……」と食べながらウィルフレッドがしみじみと口にした。
「これからはドーハンに頼んでやってよ」とティナはすかさず言った。「爺ちゃんにみっちり仕込まれてるから、腕前に関しちゃ心配ないよ」
「しっかり営業してるな」とカイルは笑った。
「うむむ、なかなか隠居させてはもらえんようだな?」
「当然! あたしに教えてもらうためにも、先生にはずっと頑張ってもらわないと」
「やれやれ……」と老人は笑った。
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