謡う魔剣と少女の物語

たまぞう

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第2章 奴隷の兄妹

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 一通りの捕り物が終わると、鉱山から解放された労働者たちがハフナーの屋敷に案内されてきた。多くの者はやせ細り、ひどい労働を強いられていたことが見て取れた。
「この人たちは怪我をしています、この老人は大分体調が悪いので、少し横になれるようにお願いします」
 労働者たちのリーダー格らしき男が甲斐甲斐しく怪我人たちを騎士団員たちに示しながら、仲間を休ませようとしている。
 コンラッド団長は騎士団員たちとともに怪我人の様子を見ている。
「治癒魔法を使える者は治療を頼むぞ。君も随分と疲弊しているようだが……?」
 リーダー格の男はまだ若いが物腰もしっかりしており、只者ではなさそうだった。
「私は大丈夫です、何か手伝わせてください」と必死に訴える。
「屋敷の庭で食事の準備をしている団員たちがいる、そちらに行ってもらおうか。しかしあまり無理はしないでくれよ?」
「はい、ようやく解放されて、安心しました。何かできることがあれば、役に立ちたいんです」
 彼は軽く会釈をすると、庭の方へと向かった。庭では解放された労働者と、働いた騎士団員たちのために食事の準備がされていた。彼が調理をする若い騎士の方に向かおうとすると、
「サミュエル!」と呼び声。
 彼がさっと振り返ると、そこには病で臥せっていたはずの主の姿があった。
「だ、旦那様!」と彼は声の主であるゴルドウィン公爵のもとに走り寄り、その足元に跪いた。
「お前は辞めてしまったとハフナーに聞いていたぞ」と公爵は使用人の肩を抱くようにして立ち上がらせた。
「いいえ、滅相もございません、旦那様! 私は秘書官のマイルズ様ともどもハフナーに囚われていたのです。マイルズ様は罪を擦り付けられて投獄され、私は鉱山に送られました。鉱山にはほかにもお屋敷の使用人たちが、自由を奪われて送り込まれて働かされていたのです!」
「ひどいことを! マイルズのような真面目な男に罪を着せるとは、ハフナーめ!」
「それよりも旦那様、お体の調子はいかがですか? ベッドから起き上がることも叶わないと伺っておりましたが……」
「ハフナーの奴め、魔女を雇って儂を呪わせていたらしい。呪いを解いたら、どうにか歩けるくらいにはなった。お前たちにも心配をかけてしまって、申し訳ない」
「勿体ないことを! 主の心配をするのは当然のことです」
「マイルズのことも早速手を回して、解放してやらなくては…… まずは、それ、お前も食事をして身体を休ませなさい」
 公爵は騎士団の下働きの若者が運んできた食事を示した。
「は、はい、ありがとうございます……!」
 張っていた気が少し緩んだのか、彼は涙をにじませた。慌てて目元を拭うと、若者から食器を受け取り、手近の簡易椅子に腰を下ろした。
 公爵はそれを見て取ると小さく頷き、少し離れたところにいたウィルフレッドに歩み寄った。
「秘書官補佐だ。あんな真面目な者まで奴隷のようにこき使っていたとは、ハフナーめ、重い罪に問われるべきだ」
「そうですな。しかし……」
 ウィルフレッドが口篭もったのを見て、公爵は眉をひそめた。
「どうした?」
「……妙にあっさり捕まりましたな。もしや、他にも手を回している者がいるのかも。ひょっとしたらその伝で放免されることを期待しているのかもしれません」
 公爵は俄かに顔を強張らせる。
「うむ、貴族の何者かが協力しているのではないかと言っておったな?」
「はい」と言って彼はちらりと周囲に目を走らせる。庭にいるのは騎士団員たちばかりだが、彼は無意識に声を低めた。「他国、という線もあるかと」
「むぅ……」
 ミスリルの密売には他国のルートもあるかもしれないと疑っていたのだ。
「我が国の貴重な資源が他国に流れてしまったかもしれないな」と公爵も声を潜めた。
「とりあえずはこれ以上の流出は防げました。国を裏切る貴族がいるのなら、それを見つけ出さなくてはなりません」
「確かにな」と公爵は頷いた。
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