不運が招く人間兵器の異世界生活

紫苑

文字の大きさ
16 / 247
第一章

15.侮辱

俺はジオルドとジルフォードの案内で、これから行う闘技場へと足を運び入れた。
闘技場は円形で、コロッセオと似ている。
王族の観覧席には俺を連れてきた王子殿下二人以外の方々がワインを嗜んでいるお姿が見える。
ワイン美味そう・・・・・。という、羨ましい気持ちは絶対にないからな!これ重要!!正直それどころではなくて、マジで緊張する。
「そういえばスイはマントの色が黒なの気づいてる?」
「ん、あ、そういえば、ジオルド殿下の第三騎士団は金色ですね」
今更ながらに気がついた。
「インナーとマントは騎士団の色で分けてある。ついでにマントは王子、団長と副団長のみの着用で、王子はその騎士団色のサッシュ、団長は金色のエギュレットの違いがある。あとインナーとマント、サッシュの刺繍だが、これは対になる加護の色で編むことになっている。我々第三騎士団は私の加護「光」で地は金色だが、刺繍は対の「黒色」だ。第四はその逆だ」
「なるほどなるほど。それで団分けされているのですね」
闘技場を見渡すと、観覧席には色とりどりのインナーが見て取れる。
赤に青、緑に茶。
お、女性もいるんだな!
つか、
「すげ~~人!すんげ~~緊張してきたわ」
「俺の騎士団団長が緊張してどうする。どんと構えろ」
「ジルフォード殿下、俺こんなに見られること今までなかったんですよ?緊張するなって方が無理!」
「俺だってない。だが、王族としての矜恃で今ここにいる。正直慣れていない俺だって緊張で震えているが、ジオルドに情けない姿見られたくないからな」
「はっはっは。大丈夫だ!私も緊張している!ここまでの観客、私だってない!!」
どどーーーん、と胸を張って威張る姿は、正直情けない。
「ん?というか、殿下たちあっちの席じゃなくていいのか?」
今更だが、どうして二人が俺の案内をしてくれたんだろうか。王族なら安全席で見守っているのが当然ではないのか?
「本当に今更だな。私はスイを倒すために参加する!ジルはスイから技を盗むために傍にいる。以上!」
「い、ば、る、なっ!てか、怪我しても知らないからな!あ、ジルフォード殿下は俺の近くにはいないでくださいね。俺の上官に俺自身が怪我を負わせるなんて、そんな馬鹿なことあってはならないですから。ジオルド殿下は覚悟していてください。完膚なきまでに伸してさしあげますから?」
にっこり、と少し怒りを込めた笑みをジオルドに向けると、たじろいで「ほ、ほどほどでお願いします」と何とも情けない切り返しをいただきました。

闘技場中央部に行くと、威風堂々の騎士団長および副団長が俺の力量を試そうと息巻いている。ただ、蔑みの視線もいくつかある。
ま~異世界から来た野郎がいきなり団長になんだから、仕方ないとして。
「では、これより騎士団毎に対戦を「ちょっと待ってくれ、審判!」
と、ジオルドが止めに入った。
「各団毎にスイと対戦しても我々の負けが見えている。恥は承知だが、我々全員でスイに挑ませてくれないか」
「「「っ!!!!!!!??????」」」
会場中が一瞬凍り付き、ざわめきが起きる。
当然だ。対戦相手の方が「強い」と王子が断言し、そして全員でかからせてくれとは情けないにもほどがある。だが、ジオルドには俺の力量がちゃんと理解出来ているってことだ。
でも、やはり反発は起るのは必然。
「ジオルド殿下!!それは我々の力量をバカにしておられるのですか!!」
「いや、君たちは強い。だが、スイには勝てない」
「それがバカにしていると言っているのです!」
同調する声が観客席の騎士たちからも上がる。
ジオルド~~~自分の株を下げるようなことしなくてもよくね?俺手加減するの苦手だけど、頑張るから。力の差があるように見せないからさ、だからそんなに反感食らうようなこと言わないでおこうぜ?
「自分たちの力量もわからないのか?一人一人スイに挑んでも、手加減されるだけだ。手加減されて勝利を貰っても嬉しいのか?」
「我々の力が手加減されなければならないほど、彼の力が凄いと言うことですかっ!?」
もはや収拾が付かなくなってきている。俺は、ポツンと突っ立ったまま。ここで何か言おう物なら、これ幸いと俺を見下し、批判してくるであろう。面倒くさいことこの上ないので、この場は空気になろう。そうしよう!
「オークレイ第二騎士団長、ジオルド殿下の言い分が正しいと俺も思う。少しだが、スイの実力を見た。今の俺では絶対に勝てないこともわかった」
「はっ!アルバート如きが勝てなくても、私なら絶対に勝てる!あのようなひ弱な肉体を持つ異世界人に負けるはずがないだろう!」
失礼だな~、全く。お前には俺の10分の1も力ないのにさ。
「オークレイ!私のスイと騎士団長を侮辱するとは!そこまで言うのなら、スイ!この者と闘ってくれないか?それも超絶に手加減してだ!」
おいおいおいおい、俺に話を振るなよ。空気になっていたのに!つか、どさくさに紛れて「私のスイ」って言いませんでした?
俺は一呼吸して、
「殿下の命令とあらば。しかし、手加減とはどの程度でしょうか?」
「ちょっと待ってスイ。あ、ごめん私が間違えたな。大怪我をさせない程度で頼むよ」
「はぁ、じゃあ、私は武器を使用しません。術も使いません。体術だけでお相手しましょう」
俺はマントがついたジャケットを脱ぎ、武器を脇に控えていた審判に渡し、インナーだけになった。ついでにこのインナーはノースリーブでピッタリと肌に密着するタイプなので、服の中に武器が隠されていないことが観衆にもわかる。
「え、スイ?そこまでしなくてもいいんだけど?」
「???ハンデにならないではないですか?」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
フルフルと第二騎士団長は怒りに震え、
「バカにするのも大概にしろっ!」
と怒鳴り散らし、合図もないまま俺に突進してきたのだ。
剣に風の加護を纏わり付かせながら。
感想 6

あなたにおすすめの小説

処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる

猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。 しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。 当然そんな未来は回避したい。 原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。 さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……? 平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。 ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

腐男子♥異世界転生

よしの こひな
BL
ある日、腐男子で新卒サラリーマン・伊丹トキヤの自室にトラックが突っ込む。 目覚めたトキヤがそこで目にしたのは、彼が長年追い続けていたBL小説の世界――。しかも、なんとトキヤは彼が最推しするスパダリ攻め『黒の騎士』ことアルチュール・ド・シルエットの文武のライバルであり、恋のライバルでもあるサブキャラの「当て馬」セレスタン・ギレヌ・コルベールに転生してしまっていた。 トキヤは、「すぐそばで推しの2人を愛でられる!」と思っていたのに、次々と原作とは異なる展開が……。 ※なろうさん、Caitaさん、PIXIVさんでも掲載しています。

おひめさまな俺、帝王に溺愛される

  *  ゆるゆ
BL
帝王陛下に捧げられることになった小国の王族レイには、大変な問題が──! ……男です。

52歳のおっさん、異世界転移したら下水道に捨てられた――下水の汚物は宝の山だった

よっしぃ
ファンタジー
【祝!3/22~25 ホットランキング第1位獲得!】 皆様の熱い応援、本当にありがとうございます! ファンタジー部門6位獲得しました!感謝です! 【書籍化作家の本気作。まず1話、読んでください】 電車でマナー違反を注意したら、逆ギレされて殴られた。 気がついたら異世界召喚。 だが能力鑑定は「なし」。魔力適性も「なし」。 52歳のおっさんに、異世界は容赦ない。 結論――王都の地下下水道に「廃棄」。 玄湊康太郎。職業、設備管理。趣味、健康管理。 血管年齢は実年齢マイナス20歳。 そんな自慢も、汚物まみれの下水道じゃ何の役にも立たない。 だが、転んだ拍子に起きた「偶然の浄化」が、すべてを変えた。 下水には、地上の連中が気づかない「資源」が眠っている。 捨てられた魔道具。 長年魔素を吸い続けた高純度魔石。 そして、同じく捨てられた元聖女、セシリア。 チート能力なし。異能なし。魔法も使えない。 あるのは、52年分の知識と経験、そして設備屋としてのプロ意識だけ。 汚物を「資源」に変え、捨てられた者たちと共に成り上がる。 スラムから始まる、おっさんの本気の逆転劇。 この作品には、現代の「病気」と「健康」に対する、作者の本気のメッセージが込められています。 魔力は毒である。代謝こそが命である。 軽い気持ちで読み飛ばせる作品ではありません。 でも、だからこそ――まず1話、読んでください。 【最新情報&著者プロフィール】 代表作『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』(オリコンライトノベル部門18位記録)の著者が贈る最新作! ◆ 2月に待望の【第2巻】刊行! ◆ 現在、怒涛の展開となる【第3巻】を鋭意執筆中! ◆ 【コミカライズ企画進行中】! すでにキャラデザが完成し、3巻発売と同時に連載スタート予定です。絶対的な勢いで駆け上がる本作に、ぜひご期待ください!

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。

はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。 2023.04.03 閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m お待たせしています。 お待ちくださると幸いです。 2023.04.15 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m 更新頻度が遅く、申し訳ないです。 今月中には完結できたらと思っています。 2023.04.17 完結しました。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます! すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。