不運が招く人間兵器の異世界生活

紫苑

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第一章

36.再開と捕縛

城の入り口には覚えのある近衛が立っていた。
「お前は「っ!!!グラスゴー団長!!!!」
「はっ?」
俺の言葉に被せ、近衛の元にレインは走って行く。
最近レインが俺の言葉に被せる回数が増えてきたような?気のせいではないはず?
兎も角、あの男がレインの想い人『エリアス・グラスゴー』なのだろう。
「レイン、お前騎士団に戻れたのか?!」
「はいっ!スイ団長のおかげですっ!!!」
レインは俺の腕を引っ張り、グラスゴーの前に押しやる。
「君は、異世界の・・・・・」
「ああ、あの時は助かった。礼を言う。使うことはなかったが、貴方に戴いた地図と金貨は大切に保管している。貴方の心遣い、感謝する」
「いや、こちらが絶対的に悪いのだ。あのくらいは当然だ。それにアシュレイの恩人なのだろう?私からも礼を言う」
「それはまだ早い。貴殿に命じる!エリアス・グラスゴー、陛下のいるところに案内をしろ!命令に背くならば、貴殿の命の保証はしない」
「・・・・・・ご命令とあらば!」
「良い返事だ。貴殿のその忠義に免じて、この国の民は我らフィルハート帝国が助けよう!」
「っ!!!よ、よろしくお願いいたします、スイ団長殿」
「まっかせとけ!さ~~てと、堅苦しいのはなしだ!中に入ったら皇女殿下の騎士たちは自由に行動をしてくれ。ただし、2人一組でな。もし、捕らわれている方々を見つけたら、必ず殿下たちに報告をっ!」
「「「はっ!!!」」」

エリアスの誘導で俺たちは長い豪奢な廊下を黙々と歩く。
前は気にならなかったが、品のない廊下であると思う。理路整然としたフィルハート宮殿の美しさは、完璧と言える品を備えた一級品の塊ばかりで、ある意味で恐ろしいのだが、こちらは気分が悪くなるほどの趣味の悪い骨董品がこれ見よがしに並べられ、所々に蜘蛛の巣が張り、小さな瘴気の溜まりが出来上がっている。
明らかに異様な空間なのだ。
「王妃殿下および第二王子が軟禁されて以降、このような城になってしまった」
エリアスがボソリと呟く。
「どこに軟禁されているのか知っているのか?」
「いや、わからない。知っているのは幹部以上の者たちだ。その者たちは今から行くところに集まっている」
「そうか・・・・・・・。じゃ、一網打尽だな。ヘルミア様、俺たちは首謀者たちを捕え次第、市井に行きます。その間、城内をお願いいたします。この中はまだ『瘴気』が市井より少ないため、『浄化』より『治癒』が効くかもしれません」
「わかりました。スイの言うとおりにいたしましょう。『治癒』なら我ら騎士団の得意分野ですから」
「ただ、気をつけてください。俺は『瘴気』は少ないと言いましたが、『呪詛』があちらこちらに存在しています。明らかに異常な城です。体調に異変を感じたら無理をせず、必ずお渡しした薬剤を服用してください。性格が変わった者にも無理矢理飲ませてください。数刻は持ちます。それまでに俺が全て浄化しますから」
この城によくエリアスは居れたものだと感心した。こんな場所、気が狂ってもおかしくはないはずなのだが。
ん?ああ、そういうことか・・・・・・・。
「ふふふ、エリアス殿は本当に精霊に好かれているのですね」
「「「えっ???」」」
「ま、それは落ち着いてから話すとして、着いたのか?」
エリアスは俺の言葉に疑問を持つも、それを一瞬で消し去り、自分の置かれている状況を瞬時に判断し、そして、
ギーーーー!
格段に豪奢で大きな扉を開けたのだった。

おうおう、この世界に来て初めて見た顔ばかり。
この顔を二度と見ることはないと思っていたが、見て良かったわ。
馬鹿面ばかり。
俺はコツコツコツとブーツの踵を鳴らして、玉座に近づく。
そこで漸く俺が誰かわかったようだ。
「き、貴様っ!どの面下げて!何故、ここにいる!?それにその服はっ!?」
でっぷりとしと陛下がわなわなと震え指を指す。
人に指を指したらいけません!!
「どの面って、この面ですけど?ん?この服?申し遅れました。私はフィルハート帝国第四騎士団団長スイレン・フウマです。貴様ら全員を捕縛する!」
印を結び、吉相体の大判が手の前に現われて、

永劫氷牢

氷の檻が一人一人を捕える。
もちろん氷で出来ているため、座ると尻は冷え、濡れてしまう。しかし、「永劫」というだけあって、俺が解術しない限り、閉じ込められたままとなる。
「貴様!?無礼であろう!?我らは王族!我らがフィルハート帝国に何をしたっ!?」
「無礼?無礼なのは貴様らだろう?こっちに来た俺に銭も何も与えず、城の外に放りだし、民に石を投げさせ、そして、城砦外に出た途端、殺そうとする野蛮行為。どれだけ、人間的に最低なのか、俺はこの世界に来て愕然としたぞ?だが、フィルハート帝国に助けられて、今こうしてここに立っている。わかるか、俺が何故団長なのか?自分で言うのも何だが、俺に勝てる者は世界に数人しかいないと思われるくらいの俺は強者だ。ん?自分で言っていて恥ずかしくないかって?恥ずかしいに決まっているだろう?だが、事実だ。俺に逆らうのなら、容赦なく首を斬る。嘘を言っても斬る。喚いて許しを請うても無残に斬り殺してやる。俺に逆らうな。ただ、嘘偽りなく、必要以上を語らず俺に話せ」
無慈悲に聞こえるであろうが、これでも俺は『命を捨てるな』と慈悲を与えているのだ。それを蔑ろにし、俺を蔑むようならば、問答無用で殺す。
ああ、で、その慈悲に気付かぬ馬鹿がいるいる。王子か王太子かしらんが、あの威張り散らかした陛下の横にいた一応美青年が俺に食ってかかってくるが、アホなのか間抜けなのか知らないが、氷牢の柵を素手で握りしめたため、手のひらが氷に張り付き、取れなくなったのだ。わざわざ自分から身動きできないようになるとは愚かなり。
「きっさまーーーーっ!!!その態度は何だっ!?俺は王族だ!?王太子だぞ!?早く俺をここから出せ!命令に従わぬかっ!!」
「???何でテメーの命令にフィルハート帝国の俺が動かないといけない?自分の立場わかっているのか?あ、その両手もう氷から剥がれないからな。そのまま凍傷になるのを待つか、斬り落とされるか、それとも俺は無駄なことは喋るなと言ったにも関わらず、口を開いたのだから頭を落としてもよいのだな?」
「ひっ!ひぎぃぃぃぃぃっ!」
俺の声音と迫力、そして『頭を落とす』という発言に恐怖で戦き、後ろに勢いよく下がったため、両手の皮が氷から剥がれ、激痛と共に夥しい血を氷牢内に撒き散らす。
「ひぎゃぁぁぁぁぁぁっ!!て、手当っ!誰かっ!!!」
「五月蠅い。永久に口を閉じさせるぞ。てか、何で貴様如きに治癒をかけねばならんのだ?利用価値もないのに」
「スイ、手当しないと死んでしまうし、この檻を帝国に運ぶには無理なんだけど」
「あ、じゃ、誰か簡単に治療してやって。俺は」

「解術!そこからの~~~天与全奪!」

永劫氷牢を解術し、新たに吉祥体の大判を彼ら一人一人に充てて、

「よし、完了!」
『天与全奪』は、天から与えられし全ての力・権限を剥奪し、頑丈な木の蔓で縛る技だ。
今の彼らは俺が問うた質問に答えるだけのただの傀儡となったわけだが。
王子は本当に簡単な治療をされただけで、巻かれた布からは赤色がしみ出している。
「では、俺の質問に答えてもらう。『精霊の住まう森』の水源を汚したのは貴様らだな」
「「「はい」」」
「聖女を降臨させるために資金が必要と偽り、民衆から税を巻き上げていたな」
「「「はい」」」
「一度は聖女を呼び出さないと民に示しが付かないから、失敗しようが成功しようが端から関係なかったな」
「「「はい」」」
と、素直に全ての質問に答え、全ての不正が明るみになったのだった。
「ヘルミア王女殿下、このままこの者らをここに放置し、我々は市井に行きます。後の城内はよろしくお願いいたします」
「わかりましたわ、スイ。ジオルド、ジル、絶対に危ない真似はしないでちょうだい。無理なのはわかっているけど、姉の心はわかってちょうだい」
「「姉上・・・・・・」」
「スイ団長、アルバート団長、そしてアシュレイ副団長たち、くれぐれも弟たちを頼みます」
「「「「仰せのままに」」」」
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