不運が招く人間兵器の異世界生活

紫苑

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第一章

48.ジルフォード

ジルフォードは二人に気付かれない位置で、彼らをそっと見ていた。
やはりスイにはジオルドが相応しくて、俺は不要だ。
俺はスイから身を引くべきなのだろうが、愛おしくて、離れがたい。
だが、二人の幸せを考えると、やはり俺は二人に必要ない人物で。
ジオルドにとってはただの『弟』で、スイにとってはただの『義弟』だったのだろう。今目の当たりにしている光景から、そう考えるのが当たり前だ。
しかし、その思考は一瞬にして崩れ去る。
「ジルフォード殿下、入ってきて良いですよ?」
「ジル、いるのだろう?入っておいで」
気付かれていたのだ、二人に。
俺の存在を『無き者』にしてくれはしないのか?
覗き見がバレた事への罪悪感で、行動がどうしてもゆっくりになってしまう。
「ジル、早く入っておいで。あまり時間がないのだから」
「あ、ああ・・・・・・」
ジオルドは弟に諭すような口調で、俺を諫める。
スイがいる前で恥ずかしいが、既に情けないことをしてしまった俺だ。恥も何もないだろう。
「スイ、ジルも随分心を傷めたんだよ?そのことわかってあげてよ?」
「ぐっ!ごめんなさいジルフォード殿下」
ジオルドに言われて、スイは俺に謝りながら、優しく抱きついてくるのだ。
一体何で?お前は兄上の大事な人なのだろ?
「心配かけてごめんな。俺言われて考えたよ。もし俺が殿下たちの立場だったら、俺だって殿下たちと考えは同じだと」
「『たち』?」
「へ?『たち』だろう?ん?もしかして、俺が好きでもない奴に股を自ら開いているとでも思ってたの?それこそ心外なんだけど!!!」
「え、いや、そんなことは・・・・・」
「そりゃ~初めて会った殿下たちに無理矢理身体を触られたけど、挿入されることになったら俺はさすがに本気で抵抗したと・・・・・・うん、思う?」
「おい、なんでそこは疑問系なんだよ」
顎に手をかけてコテンと首をかしげるスイは、非情に可愛い。
「うん、抵抗した!うんうん!」
「・・・・・・・・そういうことにしといてやるよ」
スイのツンツンとした黒髪を撫でつける。
「んっ!俺にとってジオルドは甘えたい人、ジルフォードは甘えられたい人なんだよね。外見からは逆だけど」
「おい、俺だって甘えられたいんだが?」
「充分甘えてるでしょ、俺?あれ?足りないの?」
「足りる足りないじゃなくて、お前のいったいどこが俺たちに甘えてるんだ?」
「全身で!!本来の俺は素直に頭撫でさせないよ?」
「っ!!そっか・・・・・・」
「ん・・・・・・」
温かい何かが身体の中を巡る感覚。これが
安心
という言葉なのだろうか。
スイの身体を引き寄せる。
すんなりと俺に身体を預けるスイ。その身体は俺たちから比べて頼りないほど細い。
だが、この身体には俺たちが絶対に敵うことのできない実力とそして責任を一身に受けている事実がある。
責任を俺に少しでも分けてくれたら良いと思うのに。
「大丈夫・・・。こうやって傍にいてくれるだけで、頑張れるから」
どこまで見抜かれているのだろうか。
聖母のような優しい眼差しで微笑む彼は、俺にとって本当の意味での『神』だ。
その大切で仕方がない『神』を支える役目、しかと承ろう。

「はいはい、そのくらいで!元々こんなところでスイを拘束するつもりはなかったんだけどね」
「ジオルド殿下がいきなり注目を浴びるような変な笑い声あげるからでしょう?」
「あのね!スイが私たちに心配さえかけなければよいことなんだけど?」
「ぐぬぬぬぬっ!!それじゃ、俺の身体が鈍る!」
「確かにな。あの時のスイは、俺たちの実力ではどうにもならん。俺たち瞬殺されて終わりだったろうな」
先ほどジオルドがスイに言った言葉は、本当だった。
あの光景は二度と見たくない、血だらけで、身体が歪にねじ曲がったスイを。
ただ、俺たちではスイを満足させられないことは確かで。
「結界内で行うと死にはしないから、安心してよ」
「「そういう問題ではないっ!!」」
どこからスイの考えを糾したら良いのか、それを考える方が先なのか?
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