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ずれた運命
しおりを挟む運命の歯車は、いつも突然に動き、止まり、そしてまた動き出す。
二千年に一度、世界のどこかで魔王産まれ、それに比例して、勇者もまた生を持った。
世界はそれが当たり前のようにそのサイクルを変える事はなく、そして今も人々はその時が来るのを恐れている。
海が見渡せるその場所に格言のように書かれたその大きな石碑はあった。
「……なに、この御話」
「昔話なんだって」
大きな石碑の前で、双子の幼い男女が手を繋いで前後にゆっくりと揺らして上を向いて話している。
宵闇とレモンイエローの髪の色の違う二人は仲良しなのが見て取れるその光景を誰も見てはいない。少年は怯えた顔のまま石碑から顔を背け、凪いだ海を見つめた。
「リリー、何でこんな所に来ようなんて言ったの?」
「知ってるわよね、此処が外れの幽霊岬だって」
「う、うん」
肩を竦め頷く少年に、少女は威張るように腰に手を当て頬を膨らませた。
「あいつらが私達の事を馬鹿にしたのよ? 『あの姉弟はきっとこの岬にたどり着けない』って! 私だけならまだしもクロも言われたのよ、許せないわ!」
「ぼ、僕の事はいいよ。って、リリー大丈夫だったの!?」
繋いでいた手をパッと解くと、その手を少女の肩に触れた。そして顔を真っ青にして、しきりに体を何度も見ている。
「怪我は? 石とかぶつけられてない?」
「してないわよ、まったく本当にクロは心配性ね」
からからと笑う少女に苦い顔をした少年は唇を尖らせて拗ねた口調で「だって」と言う。
「リリーが居なくなったら僕は一人ぼっちだ」
「そんな事」
「あるよ。だって僕は皆に嫌われてて、君は愛されてる」
「……クロ」
「それに双子なのに何一つ似ていない」
否定はしなかった。
少女も知っていたから。
「でもそれは皆がクロの事を誤解してるから。それに」
黒色の長い前髪で隠れている顔の上半分を見えるように手で払うと、見えるのは右目の下から左の額にかけて黒い痣が靄のように広がっている皮膚。そして瞳は夕暮れを思わせる赤紫を掃いた色を覗かせている。
「こんな痣、不吉なんかじゃない」
少女は何度も優しく触れ、静かに涙を流した。
まるで祈るように、静かに。
「リリー……」
「ねぇ、私たちずっと一緒だから。私がクロを守ってあげるから」
「……僕も、リリーを守るよ」
少女の手に自分の手を重ねた少年は、両手で優しく包んだ。
まるで繊細なガラス細工を扱うように優しく。
「なにがあっても僕たちはたった二人の家族だから」
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