決められた運命

野々村

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闇に潜む

闇に潜む 2

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「コルマ!?」
「何処いったんだ!」
「コルマ殿が! わ、私を守った所為で……」
 顔色が真っ青になったエマは顔を覆って下を向いた。
 そのエマの背中をヘンリーは軽く叩き「下を向くな」と呟く。
「今ならまだ間に合う。こっちも装備はしたばかりで、回復だってたくさんある」
「そうですよ! それにコルマだったらきっと途中で逃げ出してるはず! だから行きましょう、助けに!」
 二人の言葉に、大きく何度も頷いたエマは「ありがとうございます」と言って、下に落ちた松明とコルマの荷物を持ち上げた。
 松明一つは心もとないという事で、ヘンリーはトンネルの中にある緊急時用のカンテラを二つ取り出して、リリーシャとエマの腰のベルトに掛けた。
「ヘンリーはいいの? その松明、邪魔じゃない?」
 手に持っている松明を見るが、ヘンリーは静かに笑って何も言わずに先へ歩き出した。
 洞窟の中は不思議なほどに静かだった。僅かに開いた扉から何かが這いずる音が聞こえてきて、三人は耳を澄ませながら慎重に進んで行った。
  自分の足音や呼吸すら、雑音に聞こえる気がする。
 道中居るのは鉱石を主食としているロックウォームや洞窟に住んでいるコウモリより一回り大きいバットが視界に入る程度だが、皆あまりカンテラに怯えたりはしてない様にも思えてならない。
 半開きの扉を開けるとヘンリーは二人に止まるように手で制した。
「この先、なにか居る」
「ヘンリー様、ここは私が」
「いや、待て」
 光が漏れないように扉の奥に引っ込み、微かな明かりを頼りに隙間からのぞき見ると、ズルズルと何かが這う音が聞こえ、薄ぼんやりと光を放つそれは次第に姿を現した。
 その魔物は上半身が人間で下半身が蛇の姿をしている。「ナーガだ」と誰かが呟いた。
 大きさは長身のヘンリーより一回り大きい。
 三人の前を悠々と通り過ぎ、奥へと消えていったのを見届けてナーガとは反対側に走って行った。
「な、なにあれ」
「ナーガだ。話では聞いた事があるが、まさか此処で見ることになるとはな」
「戦いになるとこちらが不利です。今以上に警戒していきましょう」
 進んでいくと、二股に分かれた道が出てきて足を止めた。
 左右で話し合いが続くかと思われたが、左の先の方で折れた矢が落ちていたのをリリーシャが見つけた。
「これはコルマの使っていた矢……」
 矢尻の部分は綺麗に拭き取ってあるが、射付節の部分に魔物の血の痕が付着している。
 使いまわしの癖があるコルマだからこそ、この矢がコルマの矢だとリリーシャは分かった。
 矢の折れた部分に足跡がある。
(これは多分コルマの靴。無事、だよね……)
 確実とは言えないが、可能性があるのならそう思おうと、リリーシャは一度ゆっくりと深呼吸をした。

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