子供はこれでいいんですか?

かきのたね

文字の大きさ
3 / 3

どう見られたいかって大切だと思う。

しおりを挟む
通常通りの授業を終えた。今日は水曜日、週の山場と言える。家まで片道2時間、軽い睡眠には十分すぎる。

眠い眠い眠い眠い。

今日は特に辛い。
最近何かと眠れていなかった気がする。

その日総武線はいつになく混み合っていた。




人の多い車内に低く少し枯れた声が響いた。
「ほんとよねえ」

車内で中年の女性が大きな声で笑っている。丁度私のすぐ見える優先席、目の前には小学生の女の子が座っている。

身内?

ではなさそう。

少女は俯いて泣きそうな顔をしている。
何かあったのだろうか。

むぅ。

少し考えたが、考えはまとまりそうにない。情報が少ない。そして眠い。

ドアに寄りかかり少し眠ろうとした。
目を閉じイヤホンをする。

心做しか雑音は聞こえなくなった気がした。立ったままではあったが意識が飛ぶのに時間はかからなかった。









「最近の子はどうなってるのかしらね」

さっきのおばさん達か。
携帯を取り出し時間を確認すると、40分ほどが経過していた。

うん。普通にちゃんと寝た。
立ちながらでも頭はスッキリするものだ。ある意味自分の才能かもな。

少し得意気である。

「普通代わりますよとか」

女性達は人目を気にせず話していた。

「そうよねえ、こんな若い頃から座ることを覚えていたら将来大変よねえ」

目の前の子への皮肉?に聞こえないことも無い。子供相手にか。

周りの人も気がついているようだ。見て見ぬふりをしている。

こんな光景を聞いたことがある。

どこかのSNSで流れていた。
近くのおじいさんだかが、「老いは病気じゃありませんよ」とかカッコイイことを言っておばさんに席を譲っていたらしい。

カッコよすぎる。
先の小学生の隣にはおじいさんが座っている。これはその通りになるかもしれない。頑張れおじいさん。

そんな期待を他所におじいさんは口を開けてしっかり寝ている。


どうでもいいことを考えているうちに座っていた少女が電車をおりた。

振り向くことなく小走りで離れていく姿を目で追いながら、私は少しだけ安堵していた。

空いた席には先の女性が座った。

尚も、目の前にいる女性と談笑している。



私は後から乗ってきた。
よって見ていた時間が少ない。


私からしたらやはり女性は場所を選ぶべきだとと思う。相手が小学生。と言うことを考えなくても彼女の行動は周りの迷惑及びモラルを欠いた行動だったのではないか。自分が座りたかったのだろう。それ故に優先席付近にいれば譲ってもらえるだろうと。だから譲りもせず座っている若い者に苛立ちが生じたのではないか。この際女性の性格面は置いておこう。電車というものに幻想を抱いていたのかもしれない。優先席とは何なのか、電車におけるマナーとはどこにある?器が大きければ少しも怒りもしなかったかもしれない。こう考え始めたらきりがなくなりそうだ。

だが、こういった場合ならどうだろう。

もし、小学生が先に何かを女性にしていたら。失礼なことを言って怒らせた。周りに関心を向けず座れないことを泣き喚いた。子供のあどけなさ、かわいさを最大限利用して女性を懐柔した後に席を奪い、素に戻ることで何か彼女の尊厳を傷つけた。まぁこんな子がいるとは想像したくもないが。

物事は見え方で変わる。ここ最近そう思うことがよくある気がする。大学への進学、環境の変化の要因も大きいだろう。

こういう事に第三者が口を挟むべきでない事は分かっていた。

面倒なだけだろう。

女性側からしたら突然知らない人に説教を受ける事になる。迷惑な話である。

勿論、説教を垂れるつもりもないし、事をあらだてるつもりもない。そもそも子供の方はもういない。

自分が人のことを言える大層な人間じゃない事は分かっている、つもりだ。自分ならどうするか、もし、女性に嫌味を言われるような状況になったら。

感情に任せて怒るかもしれない。もしかしたら泣いてしまうかも。耐えられずに、その場から逃げ出すかも。

私が思い浮かべる大人ならどうするだろうか。

きっと、こうする。




静かに立ち上がりその場を離れる。





その場だけで考えるとカッコ悪くないかと思われるかもしれない。逃げ、と取られても仕方がない。だが、向けられた敵意、というか悪意に対して、凛としながら周りの人の感じる不快を最小限に留める事ができるのではないか。

自分が労力を払ってでも周りを考える。

これはとてもかっこいいと思う。





なんやかんや考えても、そういう状況になってからのことを考えても仕方がない。なりたくないしな。

普通に優先はゴタゴタに巻き込まれる前に察知していなくなるのが一番である。

座らなければ安全かもしれない。
面倒ごとになる確率が減る、と思いたい。

いや、立っていたらこんな問題もある。
男女構わず痴漢認定される事もあるようだから嫌な世の中だ。

逃げ場ないな。
いっそ電車を使わない?
それだと不便すぎる。


まだまだ若いか。

将来に投資すると思って車内では立って大人しくしていようと思った。


今日の出来事をしばらくは覚えておいて損はない。
しばらく経った時、友達との話の種にでもなるだろう。

大学で友達できるかな。
悩みのたねは思い出すと止まらない。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...