政略結婚ですが何か？【完】

宣戦布告

翌朝エマニュエルはイザベラが宿泊している部屋へ朝一番で向かった。ノックの意味を持たないノックをし部屋に入ると出迎えたのはアレクセイであった。


『おや、いくらイザベラの妹君であっても夫婦の寝室にいきなり入って来るのはいかがかな？』


意味有りげに笑うアレクセイをスルーし奥のイザベラの元へ向う。


『お姉様！』


イザベラはエマニュエルを見ると寂しそうに目を逸らした。その逸した先にわざわざ入り込むとエマニュエルはイザベラを睨み


『お姉様、お姉様は昨夜私が毒入りケーキを食べる事をご存知でしたよね？』

驚き黙り込むと静かに首を横に降る。

‥いつからこんなか弱い女になったのかしら？



『お姉様！しっかりして下さい。貴女は仮にもアリア大王国の王太子妃ですよ？』


エマニュエルが叫ぶとエマニュエルの後ろから


『仮にもではない。イザベラは王太子妃だ。』


‥んな事どっちでもいいわよ。


『とにかく、お姉様。貴女はもうリントン王国王女ではなくアリア大王国の王太子妃。昨夜の横な態度では相手にすぐに手の内がバレてしまいますわよ。現に私はあのケーキが怪しい事に気づいて今ここに居るのですから！』


『妹君は妄想が独り歩きしておるな。』


‥うっさいわね。部外者は引っ込んどけよ。


『お姉様は先ずは何を置いてもアリア大王国の為に動かなければなりません。もちろん私はラダン大王国の為にそれだけの為に動きますわ。

例えそれがお姉様を追い込む事になっても。だからお姉様も例え私の命が掛かっていても昨日のような振る舞いはなりません。』



イザベラは体中に血が流れるのが分かった。最近のアレクセイとの幸せな時間で忘れかけていたあの感情。私は大陸に名を馳せる王太子妃。


『そのような事を貴方に言われなくてもわかっておりますわ。』

イザベラは真っ直ぐにエマニュエルを見据えた。エマニュエルは小さく微笑みイザベラに手を差し出した。


『お互いの使命の為に‥』

重なる２人の手が離れるとエマニュエルは出口に向う。



『‥お姉様、王太子妃としてではなくリントン王女としてお礼を言います。昨日はありがとうごさいました。』


別に助けて貰ったわけではない。しかし明らかに昨日のイザベラはおかしかった。例えエマニュエルの命が掛かっていようともイザベラなら凛と構えていれただろう。それを誰よりもよく知るエマニュエルはお礼を言わずには居られなかった。