『婚約破棄から始まる物語』へ転生したってか?【完】

mako

文字の大きさ
21 / 72

公爵令息として

しおりを挟む
振り向いたヴィクトリアはレイモンドを見て驚きを見せるもハロルドは小さく息を吐き

「何?盗み聞きとは悪趣味だね。」


レイモンドは少しだけ口角を上げると


「とんでもない。私はただ殿下よりサンライズ王太子殿下を晩餐にご招待するよう申し受けましたのでたまたまこちらに参りましたまでの事。」


「たまたまね…」


「はい、たまたまでございます。」

にっこりと笑うレイモンドの笑顔にヴィクトリアは嫌な予感しかない。


「で?心配ないとは?君が助け舟になるとでも?」


ハロルドはソファの背もたれに身体を預けるようにもたれ掛かるとレイモンドを見た。

「助け舟になるもならないも、既にエドワードがこちらに戻る手筈は整えてございます。」


驚いたヴィクトリアは徐ろに振り返りレイモンドを見るもレイモンドはヴィクトリアに視線を流す事はせず尚も


「そもそも、彼が優秀なのは認めますが帝国からの誘いを受けたのはこの私。その補助として彼を指名したのもまたこの私ですからね。ですがたまたま運良く我が国の宝、ステファニー様とアレクセイ殿下の婚約をどっかの誰かが横取りし婚約破棄が私の知らない所で発せられ急ぎ戻された次第です。」


レイモンドはようやく恨めしそうにヴィクトリアに視線を投げた。


…何がたまたまよ。随分最初から聞いていたんじゃないの!

ヴィクトリアもまた眉間にシワを寄せレイモンドに視線を重ねた。その視線を跳ね返すようにレイモンドは


「しかしながら、今回の件は我が公爵家とて無関係ではありませんからね?あそこが整備され物流が活性化するのは大きな富を産むでしょう。妃殿下の未来図を拝見した殿下はすぐに動く様命じられました故。」


公爵令息として淡々と語るレイモンドをハロルドは上から下まで視線を這わせると笑顔を作りヴィクトリアに


「ヴィッキー良かったね。思いのほか早く進むんじゃない?」


ヴィクトリアは喜びながらもレイモンドをチラリと見るとそこにはいつもの眉間にシワを刻むレイモンドが立っていた。


…何で睨むのよ!


ヴィクトリアはレイモンドの視線を受けながらも笑顔を作ると

「ハロ、晩餐は大丈夫?」


ハロルドは少し考えチラリとレイモンドに視線を流しヴィクトリアに


「うん…有り難いんだけどね…」


歯切れの悪いハロルドにヴィクトリアは

「有り難いんだけど何?」

…。


「一応さ、僕は一国の王太子だろ?」


「そうね。」





「私が馬に飛び乗り城を出たならどうなると思う?」


…どうなるのかしら?

謎解きのような問にヴィクトリアは考え込むとその後ろのレイモンドはため息を大きくつくと


「護衛騎士らが後を追うでしょうね。」



…!そりゃそうか


ヴィクトリアは回答に納得すると嬉しそうにハロルドを見た。


「…うん、だよね?ということはそろそろここに着く頃だと思うんだよね?彼らを外でずっと待たせる訳にもいかないから…」


「ご心配には及びませんよ。かれらが休む部屋のご用意くらいお安い御用ですからね。」


レイモンドの言葉に何故が浮かない表情のハロルドは渋渋ながら


「そこまで言うならお世話になろうかな?」


ヴィクトリアは久々のハロルドとの晩餐に心が浮かれ嬉しそうに頷いた。



その後到着したサンライズ騎士団を見てハロルドが躊躇していた理由をレイモンドとヴィクトリアは嫌でも感じずにはいられなかった。


何故なら想像を遥かに超えた数の騎士団がメープル王宮を取り囲むように到着したからである。


…。こんなにも休める部屋があるのかしら?


ヴィクトリアは隣で絶句するレイモンドを面白そうに見上げるとレイモンドは無意識ながらヴィクトリアを睨みつけると急いで騎士団の元へ下りていった。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

ハーレム系ギャルゲの捨てられヒロインに転生しましたが、わたしだけを愛してくれる夫と共に元婚約者を見返してやります!

ゴルゴンゾーラ三国
恋愛
 ハーレム系ギャルゲー『シックス・パレット』の捨てられヒロインである侯爵令嬢、ベルメ・ルビロスに転生した主人公、ベルメ。転生したギャルゲーの主人公キャラである第一王子、アインアルドの第一夫人になるはずだったはずが、次々にヒロインが第一王子と結ばれて行き、夫人の順番がどんどん後ろになって、ついには婚約破棄されてしまう。  しかし、それは、一夫多妻制度が嫌なベルメによるための長期に渡る計画によるもの。  無事に望む通りに婚約破棄され、自由に生きようとした矢先、ベルメは元婚約者から、新たな婚約者候補をあてがわれてしまう。それは、社交も公務もしない、引きこもりの第八王子のオクトールだった。  『おさがり』と揶揄されるベルメと出自をアインアルドにけなされたオクトール、アインアルドに見下された二人は、アインアルドにやり返すことを決め、互いに手を取ることとなり――。 【この作品は、別名義で投稿していたものを改題・加筆修正したものになります。ご了承ください】 【この作品は『小説家になろう』『カクヨム』にも掲載しています】

悪役令嬢、記憶をなくして辺境でカフェを開きます〜お忍びで通ってくる元婚約者の王子様、私はあなたのことなど知りません〜

咲月ねむと
恋愛
王子の婚約者だった公爵令嬢セレスティーナは、断罪イベントの最中、興奮のあまり階段から転げ落ち、頭を打ってしまう。目覚めた彼女は、なんと「悪役令嬢として生きてきた数年間」の記憶をすっぽりと失い、動物を愛する心優しくおっとりした本来の性格に戻っていた。 もはや王宮に居場所はないと、自ら婚約破棄を申し出て辺境の領地へ。そこで動物たちに異常に好かれる体質を活かし、もふもふの聖獣たちが集まるカフェを開店し、穏やかな日々を送り始める。 一方、セレスティーナの豹変ぶりが気になって仕方ない元婚約者の王子・アルフレッドは、身分を隠してお忍びでカフェを訪れる。別人になったかのような彼女に戸惑いながらも、次第に本当の彼女に惹かれていくが、セレスティーナは彼のことを全く覚えておらず…? ※これはかなり人を選ぶ作品です。 感想欄にもある通り、私自身も再度読み返してみて、皆様のおっしゃる通りもう少しプロットをしっかりしてればと。 それでも大丈夫って方は、ぜひ。

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

「転生したら推しの悪役宰相と婚約してました!?」〜推しが今日も溺愛してきます〜 (旧題:転生したら報われない悪役夫を溺愛することになった件)

透子(とおるこ)
恋愛
読んでいた小説の中で一番好きだった“悪役宰相グラヴィス”。 有能で冷たく見えるけど、本当は一途で優しい――そんな彼が、報われずに処刑された。 「今度こそ、彼を幸せにしてあげたい」 そう願った瞬間、気づけば私は物語の姫ジェニエットに転生していて―― しかも、彼との“政略結婚”が目前!? 婚約から始まる、再構築系・年の差溺愛ラブ。 “報われない推し”が、今度こそ幸せになるお話。

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

処理中です...